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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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不安と安堵

「お待たせ! じゃあ行こうか」

 ラスティに手伝ってもらって久しぶりに竜騎士見習いの制服に着替えたレイが、剣帯を締めながら笑顔で振り返った。

「おお、いつものレイルズになったな」

「確かに、いつもの見慣れたレイルズになった」

 笑った二人の言葉に、レイも笑いながら上着の襟元を引っ張った。

「この制服着るの久し振り。ねえラスティ、この上着もやっぱりマイリーの上着を直したものなの?」

 今もレイは医療用の胸当てを身に付けたままだ。

 なので制服もいつもよりも少し大きいものを用意してくれている。

「そうですね。先日の第一級礼装と同じで、これもマイリー様が着ていた制服を少し直してもらいました」

 苦笑いして頷くラスティの言葉に不思議そうにしている二人を見て、レイはユージンの結婚式の時に着ていた第一級礼装が医療用の胸当てをしている為にいつもの服が着られなくて、急遽マイリーが以前着ていた服を直してもらって着ていたことを話した。

「へえ、確かに体格で言えばマイリー様が一番近いか」

「確かに、ヴィゴ様よりはまだマイリー様の方がレイルズの体格に近いな」

 感心する二人と一緒に入り口に外しておいてあった剣を装着する。

「これも久し振りだ」

 嬉しそうなレイの言葉に、二人も困ったように苦笑いしていた。



「ううん、本部に来るのも久し振り!」

 嬉しそうにそう言いながら歩くレイと並んでマークとキムも笑顔になる。

「ずっと部屋でお休みになっていたんですよね?」

 小さな声でキムが尋ねる。

「そうだよ。初めの頃は痛み止めをもらっていたし、ほとんど寝てばっかりだったね。だけどある程度回復して来ると、そんなにずっとは寝ていられないでしょう?」

「ああ確かにそうですね。特に回復して来ると、やっぱり動きたくなるし」

「そうだよ、絶対身体は硬くなっちゃってると思うからさ。今度朝練に行った時に大変だと思うなあ」

 情けなさそうなため息を吐きながらそう言って口を尖らせるレイを見て、マークとキムが慌てる。

「レイルズ様、恐らく他の方やハン先生から言われると思いますが、お怪我が回復しても、いきなり朝練に参加してはいけませんよ」

「ええ、どうして? 早く朝練に参加したくて大人しくしてるのに」

 またしても口を尖らせるレイの言葉に、キムが困ったように首を振る。

「今、レイルズ様がおっしゃった通りですよ。養生期間中に確実に身体は硬くなっているだろうし、勘も鈍っていると思います。まあ、レイルズ様ならすぐに戻せるでしょうが、ある程度はまずはゆっくりと体を解すところから始めていかないと、急に激しい運動をしたら確実にお怪我をなさいますよ。また養生生活に戻りたくなかったら、無理せずゆっくりと戻してください」

 隣でマークも何度も頷いているのを見て、ようやく納得したらしく小さく頷いた。

「分かった。じゃあ、ゆっくり訓練してから参加するね」

「ええ、そうなさってください。ですがどうぞご無理なさいませんように」

「うう、やっぱり嫌だよ。その話し方」

「駄目です。聞き分けてください」

 口を尖らせるレイの言葉にマークとキムが同時に小さな声でそう言い、更に眉を寄せるレイだった。




「まだ来ないねえ」

「そうね、きっとお怪我をなさってるから着替えるのも大変なのよ。ああ、やっぱりご無理させた気がする。具合が悪くなられたりしたらどうしよう」

「大丈夫だって言ってたでしょう? そもそもそんなにお加減が悪かったら、ラスティ様が絶対に止めてるわよ」

「それはそうだけど……」

 並んでソファーに座ってクッションを抱えたクラウディアとニーカは、先ほどから延々と同じ話を繰り返していた。

 執事達も控えの部屋まで下がってしまっているので、レイの様子を聞く事も出来ない。

 揃って大きなため息を吐いた二人は、それぞれ抱えていたクッションに顔を埋めるのだった。

『心配しなくても大丈夫だよ』

『確かにお怪我をされた直後はかなり大変そうだったけどさ』

『最近はもうあまり痛みも無いみたいだし』

『退屈で寝てるのが嫌だって愚痴を言ってたくらいだよ』

 笑ったスマイリーの言葉に、ニーカが笑顔になる。

「ほら、今のスマイリーの言葉が聞こえたでしょう?」

 振り返ったニーカを見て、クラウディアはまたため息を吐いた。

「それって、かなりお加減が悪かったって事じゃない。ああ、やっぱり帰れば良かった」

「あのねえ……」

 呆れたニーカが文句を言おうとした時、ノックの音が聞こえて二人は飛び上がった。

「は、はい!」

 慌ててソファーから立ち上がり、ややうわずった声の返事が揃う。



「お待たせ!」

 扉を開いて部屋に入ってきたのは、いつもの笑顔のレイと、マークとキムの三人だった。

「レ、レイ……」

 早足で自分に向かって駆け寄ってくるレイの笑顔はいつもと同じで、少なくとも見る限り痩せたりやつれたりしている様子はない。

 それを確認しただけで、クラウディアはその場に座り込みそうなくらいに安堵していた。

「よかった。元気そうで……」

 なんとか笑ってそう言おうとしたが果たせず、クラウディアは目の前に来てくれたレイに縋り付くみたいにして抱き着き、安堵のあまり泣き出したのだった。

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