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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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報告

「はあ、気にせず休んでろって言われても、やっぱり色々考えちゃうよ」

 ベッドに横になり天井を見上げたレイは、小さくそう呟いて大きなため息を吐いた。

 結局痛みと腫れがなかなか引かず、翌日にはハン先生だけでなくガンディまでが診察にきてくれて相談の結果、ユージンの結婚式までずっと兵舎で養生している事になってしまった。

 ガンディには、なんなら白の塔に入院するかと言われてしまい、必死になって断ったレイだった。

 ヒビとはいえ初めての骨折である事、怪我の場所が右脇腹な為に右腕をあまり自由に動かせないので、無理に事務仕事をさせても効率が悪いと判断されての診断結果だった。



「うう、最初の頃に比べたらかなりマシにはなってきたけど、やっぱり大きく息を吸うと痛いよお……」

 胸を押さえて情けなさそうにそう呟くと、今度は小さなため息を吐いてから目を閉じてゆっくりと呼吸を繰り返した。やがて静かになり、すぐに静かな寝息が聞こえてきたのだった。

 カーテンが引かれて薄暗い部屋の中では、ブルーのシルフが現れて定期的に怪我に癒しの術を施し、レイが眠ると部屋に結界を張って癒しの歌を歌っていたのだった。

 ラスティは、すぐに我慢しようとするレイの様子を細かに見て、少しでも様子がおかしかったらすぐに対応してくれた。

 おかげで、無理なことはせずに大人しく養生する事に専念出来て、ここへ来てから初めて、朝から晩まで何もせずにひたすら寝ているというレイにとってはなんとも贅沢な時間を過ごす事になったのだった。



「やっぱりタキス達に知らせたほうがいいかな」

 骨折から四日目で、ようやく少し元気が出てきたレイは、蒼の森の皆に怪我の報告をしていないのにようやく気が付いた。

 ちょうど夜に目が覚めたので、手をついてゆっくり寝てたベッドから起き上がる。

「ねえブルー今何時かな? 蒼の森のタキス達はまだ起きてるかな?」

 少し小さめの声で空中に向かって話しかける。

『先程十一点鐘の鐘が鳴っていたよ。蒼の森の彼らなら、ちょうど居間で飲んでいるぞ。呼んでやろうか?』

「うん、お願い」

 いつもよりも多く置いてくれてある枕を背中側に当ててもたれかかる。



『レイ元気でやっていますか?』

 いつものタキスの声に、別の枕を抱えたレイが嬉しそうな笑顔になる。

「久し振り、元気だよって言いたいところなんだけどさ。実は怪我しちゃって養生中なの」

『ええ一体どうしたんですか!』

『おい、何があった!』

 挨拶どころではない。アンフィーの声までがタキスとニコスとギードの声に重なって、レイは申し訳なさそうに眉を寄せた。

「えっとね、その前にひとつ嬉しい報告! 僕、ルークと組んで二対一だったんだけど、ヴィゴに一撃入れたんだよ!」

 もう一度揃って驚きの声が上がる。

『ほう、あのお方に一撃入れるとは素晴らしい。一体どうやって?』

 身を乗り出すシルフがギードの声でそう尋ねる。そこでレイは嬉々としてその前にキルートとの手合わせで見せてもらった素早い身のこなしの説明をして、それを真似たのだと言って笑った。

『いや見たからと言うて早々出来るものではないぞ』

『いやあこれは素晴らしい』

『では怪我はその時か?』

 ギードの声に、レイは笑ってゆっくり首を振った。

「えっとね、次の日の朝練でマイリーが今度は一対一で相手をしてくれたの。皆が頑張れって言ってくれたし、続けて本気で勝ちを取りに行くつもりで突っ込んだんだけどね」

『それでどうなったのだ?』

「ほら、マイリーって補助具を左足につけているでしょう、だけどすごく上手に腰から捻って勢いをつけて左足で蹴りを放てるんだ。以前にも一度やられたことがあってさ。その時は打ち身だけで済んだんだけど、今回はまともに食らっちゃってね。それで結果肋に二本、ヒビが入りました!」

 開き直って報告するその言葉に、また全員揃って今度は呻くような声が聞こえる。

『成る程それで養生中なのですね』

 タキスは聞いただけで、今のレイの状態をほぼ正確に予想する事が出来た。なので丁寧にレイから今の様子を聞いた後は、普段の生活に戻った後もしばらく気をつけたほうがいい事や、休む際の寝方など、詳しく色々と教えてくれたのだった。

 ニコスのシルフ達も現れて、タキスの話を一緒に真剣に聞いていたのだった。

『じゃあもう休みなさい』

『そうだぞ寝るのが一番だからな』

 タキスの横で、ニコスも真剣な声でそう言ってくれた。

「うん、じゃあもう休むね、ちゃんと養生するから心配しないでね。それじゃあおやすみなさい」

 それぞれ挨拶してくれるシルフに笑って手を振り、全員消えるのを見送ってから、レイも改めて休んだのだった。

 レイが眠ったのを確認したシルフ達が部屋に結界を張り、すっかり覚えた癒しの歌を歌い始める。ブルーのシルフも一緒に歌を歌いながら、せっせと癒しの術を怪我の部分に繰り返し届けていたのだった。



 その後も言われた通りにずっとひたすらおとなしくしていたおかげで、何とか全快とまではいかないがかなり元気になり、ユージンの結婚式には参加しても良いとハン先生から診断をもらって密かに安堵するレイだった。

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