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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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出迎えと千年樹の飾り台

「レイルズ様!」

 目を輝かせたライナーとハーネインがそう叫んで、乗っているラプトルを一気に屋敷の前まで走らせて来る。

「ようこそ! 待ってたよ」

 ラプトルを止めて即座に飛び降りた二人と手を叩き合い、急に走りだした二人のすぐ後ろから慌てたように追いかけて来た護衛の者達を見上げた。

「あはは、驚かせてしまって申し訳ないです」

 苦笑いして、すぐに止まって少し離れたところに待機する彼らに軽く一礼してから、ゆっくりと近づいてくる二台の馬車を待った。

「二台で来られてるって事は、後はイデア夫人とクローディアとアミディアかな?」

「はい、そうです。ちょっと前の円形交差点で一緒になったんです!」

 笑顔のライナーの言葉に、レイも笑顔で頷いた。




 目の前に二台の馬車がゆっくりと進んで来て止まる。

 剥き出しになった後部座席から執事が降りてくるのをレイはライナーとハーネインと一緒に目を輝かせて見つめていた。

 手袋をした執事が一声かけてからゆっくりと扉を開く。

 真っ先に、転がるみたいにして馬車から降りて来たのは予想通りにマシューとフィリスの二人だ。

「ようこそ! 待っていたよ」

「レイルズ様!」

「今日はよろしくお願いします!」

 両手を広げるレイに二人が同時に飛びつく。

 小揺るぎもせずに二人をしっかりと受け止めたレイは、それぞれの背中を叩いて笑っているライナーとハーネインの前に二人を下ろした。

「全くもう、ちょっとは落ち着きなさいって言ってるのに!」

「本当よね。恥ずかしいわ」

 大人びた様子で口を尖らせてそう言いながら続いて降りて来たのは、ソフィーとリーンの二人の少女達だ。

「ようこそ瑠璃の館へ」

 笑顔でそれぞれの手を取りそっと顔を寄せる。

「お、お世話になります」

「お世話になります!」

 ソフィーはやや顔を赤くしながらも、何とかそう言って平静を装う。リーンはそんなソフィーを横目に見て、小さく笑ってお澄まし顔でレイの挨拶を受けた。

「全く、其方達は相変わらずだなあ」

 最後に、パスカルの手を引いたアルジェント卿が馬車から降りてくる。

「お待ちしておりました」

 慌てて駆け寄り、アルジェント卿に手を貸すレイだった。



「まあまあ、賑やかだ事。レイルズ様。厚かましく二度も押しかけさせていただきました。本日はどうぞよろしくお願いいたしますわ」

 イデア夫人がそう言いながら笑顔で、目を輝かせるクローディアとアミディアの後から執事の手を借りて馬車から降りてくる。

「とんでもありません。ようこそお越しくださいました。初日とは顔ぶれが違いますので、確かに今日はもっと賑やかになるでしょうね」

 少女達に挨拶をして笑いながら答えるレイに、イデア夫人は笑いながらも何度も頷いていたのだった。




「うわあ、凄い! お爺様見てください! これってミスリル鉱石ですよね!」

「うわあ、レイルズ様! あの上に掛かっているのって何ですか! すっごく綺麗!」

「廊下広い! ああ、幻獣の版画が並んでる。ほら、ケットシーがあるよ!」

「凄い凄い! 瑠璃の館の中って、こんな風になっていたんですね!」

 玄関に入るなり、少年達はもうそろって大はしゃぎであちこちを見ては、歓声を上げてレイの腕を引っ張って行こうとしていた。

「こらこら、其方達。ちょっとは落ち着けと言うたであろうに」

 呆れたようなアルジェント卿の言葉に、隣でイデア夫人も笑いを堪えている。

 大はしゃぎする少年達と違って、少女達は好奇心に目を輝かせつつもツンと澄ましてミスリル鉱石を覗き込んでいたのだった。



「ほう、これは見事だ」

 アルジェント卿も、飾り台に置かれたミスリル鉱石を見ていたのだが、不意に真顔になる。

「レイルズ。ちょっと尋ねるが……これはもしや……」

 アルジェント卿の視線は、ミスリル鉱石ではなくその下に置かれた千年樹の飾り台に注がれている。

「はい、それは千年樹の飾り台です。ここへ来て初めての年の降誕祭の贈り物としていただいたものなんです」

 あえて誰かから頂いたのかを言わずにいたが、アルジェント卿はどうやら分かったらしく大きく頷いた。

「なるほど、ならばこれは陛下からか」

「はい、そうです。さすがですね」

「これほどの千年樹の飾り台は、私も初めて見る。ふむ、これは素晴らしい、しかもこのミスリル鉱石に誂えたようにぴったりだな」

「ありがとうございます、僕も気に入っているので嬉しいです」

 和やかに話をする二人の周りでは、慌てて集まって来た少年少女達が、揃って目を輝かせて千年樹の飾り台を言葉も無く見つめていたのだった。

 単に、珍しい飾り台を頂いたのだと思っているレイと違い、子供達は千年樹の真の価値を理解していた。

 陛下から直々に贈られたそれは、一生に一度見る事が出来ただけでも幸運だと言われ、それを持っているだけで、その人物の価値が上がるとまで言われる程の稀有な逸品なのだ。



「なるほどなあ。これは陛下のお心遣いという訳か」

 小さく笑って頷いたアルジェント卿は、当然全てを理解しているイデア夫人と笑顔で頷き合い、大興奮してレイに千年樹の飾り台がいかに貴重かを必死になって説明してるマシュー達をのんびりと眺めていたのだった。

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