お疲れ様と午後からの予定
「いやあ、とても楽しかったよ。ぜひまた呼んでおくれ」
「本当に楽しかったよ。いい土産が出来たしな」
リンザスが笑って自分の額に当ててある湿布を指差し、ヘルツァーも自分の額に当てたままになっている湿布を触って苦笑いをしていた。
「確かに、話のネタとしては最高だったなあ」
クッキーも自分の額に当てたままになっている湿布を押さえて笑いを堪えている。
「鋼の頭突き。レイルズは鋼鉄どころかミスリル並みの強度の頭蓋骨の持ち主なんだぞっと。うん、身に沁みて理解したよな。今後は気をつけよう。あれを二度食らうのは、出来ればごめん被りたい」
リンザスの言葉に、彼らが揃ってうんうんと頷き合っているのを、今回は無事だったマークとキムは、もう先ほどから遠慮なく大笑いしながらこちらも揃って何度も頷きつつ見ていたのだった。
「それじゃあまた!」
「次は訓練所かな?」
「楽しかったよ! レイルズも頑張ってな!」
それぞれの護衛の者達に付き添われて帰って行く友人達を見送り、レイは小さなため息を吐いた。
「お疲れさん。それじゃあ俺達も戻るよ」
「今日で終わりなんだろう? ゆっくり休んでくれよな」
今日でお披露目会は終わりだと聞いているので、マークとキムは自分達が最後だと思い込んでいる。
「うん、僕もすっごく楽しかった。じゃあ近いうちにまた皆と一緒に勉強会をやる予定を立てるから、その時はここじゃなくて離宮だね。大人数で合成魔法の練習をするなら、離宮でする方が安全だもんね」
「確かにそうだな。じゃあ段取りは任せるよ。日程が決まったらシルフを飛ばしてくれよな」
「分かった。それじゃあね!」
彼らがラプトルに飛び乗ったのを見てレイが笑顔で下がる。
手を振って本部へ帰って行く二人を見送り、もう一度小さなため息を吐いたレイは笑顔で振り返った。
「アルベルト、急に無理を言って本当にごめんね。屋敷の人達にも、それからたくさんの美味しいお料理を作ってくれた厨房の人達にもお礼を伝えてください。あとちょっと、お披露目会が終わるまで頑張ってくださいって!」
目を輝かせるレイの言葉に、アルベルトは驚いてこちらも目を見開く。それから笑顔で深々と一礼した。
「過分なお言葉、心より感謝致します。かしこまりました。屋敷の者達にも、レイルズ様がお喜びだったと伝えておきます」
アルベルトの言葉に笑顔で頷いたレイは、そのまま一緒に屋敷の中へ戻った。
「お疲れ様でした。今日の予定ですが、午後の二点鐘にアルジェント卿とお孫様が到着予定です。それから、皆様がティミー様にもお会いしたいとの事で、確認を取りましたところ、ティミー様にももう一度お越し頂けることになりました」
ラスティの説明にレイは嬉しそうに目を輝かせる。
初日に竜騎士隊の人達と一緒にティミーを招待して、お母上にも会ってもらえたのでそれは良かったと思うが、仲良しのマシューやフィリス達とはしばらく会っていないらしいので、出来たら会わせてあげられないか考えていたのだ。
「ゲルハルト公爵閣下の御子息のライナー様とハーネイン様。それからイデア夫人とお嬢様方も、もう一度お越しくださるとの事ですので、今日も賑やかになるでしょうね」
「そうなんですね。良かった」
嬉しそうに説明を聞き、昼食はゆっくり食べていいのだと聞いて苦笑いするレイだった。
昼食までまだ少し時間があったので午前中いっぱい書斎で本を読んで過ごし、用意された昼食を一人で大人しくいただいた後は、時間まで陣取り盤を前に攻略本を見ながら過ごした。
なぜ書斎に行かないかというと、絶対に読書に夢中になって出迎えに行けなくなる気がしたからだ。
「でも、これも結構夢中になるよね。そう言えばアルジェント卿とは手合わせした事ないけど、どうなんだろう。きっとお強いんだろうね」
歩兵の位置を攻略本を片手に確認しながら動かしていたレイの呟きに、ブルーのシルフが現れて駒の横に立つ。
「ああ、ブルー。来ていたんだね。そこは動かすからこっちに来てください」
笑ってブルーのシルフの前に手を差し出し、自分の手の上に乗ってくれたのを見てから嬉しそうにそっとキスを贈り自分の右肩に座らせてやる。
『カーマインの主もそれはかなり強いぞ。彼も、あのアメジストの主が入っている陣取り盤の研究会の倶楽部の会員だぞ』
ブルーのシルフの言葉に、思わず手を止めたレイが肩に座ったブルーを振り返る。
「ええ、そうなの? あのマイリーが言ってた、最強と名高い倶楽部の、陣取り盤の戦略室の会にアルジェント卿も入っておられるの?」
笑って頷くブルーのシルフを見て、レイは大きなため息を吐いて攻略本を抱きしめた。
「えへへ、じゃあ今日は無理かもしれないけど、一度お願いして手合わせして頂こうっと」
『ターコイズの主も来るのだろう? それなら今日はあの二人に手合わせしてもらって、其方や子供達は横で見学させてもらうと良い。あの子達位の歳になれば、最低限の打ち方程度は知っているだろうから、子供達にとってもあの二人の手合わせを見学するのは勉強する良い機会になるだろうさ』
ブルーのシルフの提案に嬉しそうに何度も頷いたレイは、陣取り盤の攻略本を時間一杯までそれはそれは真剣に目を通しては、駒をせっせと動かして確認していたのだった。
ニコスのシルフ達は、その後はいつものように陣取り盤の上に出て来てくれ、時折、差し方を実際の場所を示しながらレイに詳しく教えてくれたりもした。
ブルーのシルフはレイの右肩に座ったまま、彼がうっかり妙な手を打ちそうになると横から頬を叩いて、これも詳しく教えたりして一緒に楽しく過ごしていたのだった。




