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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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お披露目会二日目の色々

「レイルズ様、間も無くガンディ様とガスパード様が到着なさるとの事でございます」

 ケレス学院長とセディナ教授との精霊魔法に関する話が一段落したところで、アルベルトが一礼してレイの耳元にガンディ達の到着を伝える。

「では出迎えに行って参ります。皆様はどうぞごゆっくりお寛ぎください」

 笑顔で一礼してアルベルトと一緒に部屋を出て玄関へ向かう。

「一生懸命ね。見ていると応援したくなるわ」

「ああ、まるで孫を見ているようだね」

 真っ白な髪を綺麗に結い上げた年配のシャーロット夫人の言葉に、夫である車椅子のウィスカーさんも笑顔で何度も頷いている。

「まだまだ未熟な面も見受けられますが、それも含めて今の彼の魅力になっているようですね。あと十年もすれば、誰もが憧れるほどの立派な竜騎士様になられるでしょうね。本当に将来が楽しみだ」

 ボレアス少佐の呟きに、教授陣も揃って笑顔で頷いているのだった。

「ですが、学ぶ事をやめて欲しくはありませんねえ。あれほどに熱心な生徒も珍しいですよ。この歳になってあれほどに育て甲斐のある生徒に出会えるとは、改めてこの仕事も良きものだと思えますね」

 天文学のアフマール教授のしみじみとした呟きに、教授陣だけでなく倶楽部の方々までが揃って同意するように揃って頷き合っていたのだった。




「大変お待たせいたしました!」

 ガンディとガスパード先生を屋敷の中を一通り案内してから談話室に戻り、皆に紹介してからお二人にも席についてもらい、それぞれにお茶とお菓子が用意される。

 ガンディは甘いものは食べないとあらかじめ聞いていたので、お茶請けとして岩塩をまぶしたクラッカーと薄く切って焼いたじゃがいもが別に用意されていた。

 ガンディが、個人的とは言えこうした社交の場に出て来る事は非常に珍しい。

 彼がレイルズを可愛がっている事は貴族達の間では有名で、表立っては話題になる事は無いが皆知っている。

 今も、気難しい事で有名なガンディが笑顔で楽しそうにレイと話をしているのを、特に倶楽部の人達は半ば驚きの目で見つめていたのだった。




「では、こちらへどうぞ」

 歓談の時間の後は、そのまま書斎へ移動して自慢の本を教授達に見てもらう。

「これは素晴らしい」

「しかも偏りがなく、ほぼ全ての項目が網羅されている」

「確かに新しい本が多いが、これなどは城の図書館でも非常に貴重な普段は書架には出さないような本だぞ」

「おお、インフィニタスの魔法論理に関する本が複数ある!」

「これは素晴らしい」

 教授達は、それぞれ自分の専門分野の前に行き、嬉々として本を選び始めた。

「どうやら贈り物は喜んでもらえたようだのう」

 いっそのんびりしたガンディの言葉にレイは目を輝かせて何度も頷いた。

「ガンディにも心からの感謝を。本当に素晴らしい贈り物をありがとうございます!」

 素直なそのお礼の言葉にガンディも笑顔で本棚を見上げた。

「これはそのまま其方の将来に渡る財産となる。これからは、其方自身の手で蔵書を増やしていくのだぞ」

「はい!」

 目を輝かせるレイの返事に、ガンディは本棚を見上げたまま大きく頷く。

「今日、実はもう少々本を持ってきておる。執事に預けておいた故、後ほど確認しておいてくれればいい」

 驚きに目を見開くレイに、ガンディは得意げに片目を閉じて見せる。

「今日のは、お披露目会の開催祝いじゃ。部屋に積み上がっている蔵書の中から適当に引っ張り出して来た。まあ大した本ではないので気にせず受け取ってくれれば良いさ」

「よ、よろしいのですか?」

「もちろん。其方になら譲っても良いと思ったから持って来たのだ。遠慮せずにもらっておけ」

 ガンディの言葉にブルーのシルフとニコスのシルフ達が揃って笑顔で頷くのを見て、レイはこれ以上ない笑顔になる。

「ありがとうございます。大切に読ませていただきます!」

「ふむ、質問はいつでも受け付ける故、遠慮せずにシルフを飛ばしなさい」

「はい、よろしくお願いします!」

 満面の笑みのレイの言葉に満足そうに頷いたガンディは、もう一度棚を見上げた。

「ふむ、これだけの本を前にして何もせんのもつまらぬなあ」

 腕を組んで少し考え、あちこちで本を漁っている教授達を見た。

「まあ良いか。なあレイルズ、本読みの会の際には是非儂にも声を掛けてくれ。張り切って参加する故な」

 最後の本読みの会の部分はごく小さな声で言ったので、他の人には聞こえていないだろう。

 笑って頷くレイを見てガンディももう一度満足気に頷くのだった。




「ところで、レイルズは竪琴の名手と聞いたが、一曲所望しても良いかのう?」

 しばらく書斎で過ごした後、ニンマリ笑ったガンディの言葉にレイは笑顔で顔を上げた。

「もちろん喜んで。ええとではそろそろ場所を変えましょうか」

 あちこちから笑い声とため息、それから本を置いて同意する声が聞こえて、一同はそのまま別の部屋へ向かった。

 そこはさまざまな楽器が用意された部屋で、昨日は竜騎士隊の皆が見事な演奏を披露してくれた部屋だ。

 ここではレイは、竪琴の会の人達と一緒に竪琴の演奏をして皆から大きな拍手をもらった。

 ケレス学院長は見事なヴィオラの演奏を披露してくれ、負けじと他の教授達も同じくヴィオラを手にする。

 レイは終始笑顔で過ごし、請われるままに竪琴を爪弾き、時にはヴィオラとの合奏も楽しんだ。

 そして最後はケレス学院長が、瑠璃の館にて、と題した即興曲をヴィオラで演奏を行ってくれたりもして、皆からこれも大きな拍手をもらっていた。



 レイは竪琴の演奏だけでなく、ゆっくりと他の方々の見事な演奏を楽しむ事も出来た。

『楽しんでいるようだな』

 笑ったブルーのシルフの言葉に、レイはもうこれ以上ないくらいの笑顔で何度も頷いていたのだった。

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