マークとキムと第四部隊の仲間達
「さて、それじゃあ行くとするか」
第一級礼装に身を包んだマークの声に、同じく第一級礼装に身を包んだキムも大きな深呼吸を一つしてから頷いた。
「俺達まで結婚式に招待してくださるなんてな」
「オルダムの大貴族である伯爵家同士の結婚式だろう。嫡男じゃないとはいえ、ロベリオ様は国を守る竜の主だし、奥方は、女性の身でありながらオルベラートまで留学するほどの才女だものなあ」
「そりゃあオルダム中の貴族達が参列してるんじゃないか?」
「まあ、全部って事は無いだろうけど、間違いなく参列者の方々は錚々たる顔ぶれの式になるだろうなあ」
「だろうなあ。しかも会場は、結婚式専用の祭壇のある部屋じゃ無くて、普段の参拝に使われている第一礼拝堂だって言うんだからなあ」
「それを聞いただけでも、参列者の数が相当に多いんだって事が分かるよな」
顔を見合わせて苦笑いした二人は、同時にため息を吐いた。
「まあ、失敗しないようにお互い頑張ろうぜ」
「だよな。これは俺達だけじゃなくて第四部隊の名誉がかかってるんだからな」
「おう、その通りだよな」
互いの拳をぶつけ合った二人は、苦笑いしつつそう言って扉を振り返った。
「それじゃあ行くとするか」
置いてあった剣をそれぞれ剣帯に装着し、お互いの背中側を確認しあってから、二人は揃って部屋を出て行った。
神殿に到着した二人は、受付役の執事に招待状を見せて、ひとまず精霊王の祭壇に正式なご挨拶をしてから、席順で言えば一番末席に近い後ろの方の席へ執事に案内された。
「こちらの席にお座りください」
一礼して下がる執事にお礼を言って、言われた席に大人しく座る。
ここなら、それほど緊張せずに式を見る事が出来そうだ。
しかし、寛ぐ間も無く第四部隊の兵士から連絡があって、二人は先程の執事に断ってから一旦外へ出た。
そこには第四部隊の実働兵達の中でも、精霊魔法が得意な者達が集まって二人を待っていた。
彼らは全員が、マークとキムの行っている精霊魔法の合成と発動に関する講義を受けている、いわば部隊内でも優秀な者達だけを集めた選抜組なのだ。
実は、少し前に行った講義の後の実践の際、一人の兵士が全く新しい合成魔法を発見したのだ。
それは、水と風の同時発動によって現れる細かな水飛沫を利用した技で、手のひらから虹を出す事が出来る技だ。
しかしこれは、はっきり言って攻撃魔法には全くならない見かけだけのものだったが、しかし皆大喜びでそれを教わり練習した。
もちろんマークとキムも大喜びでその兵士からやり方を教わり、皆と一緒になって一生懸命練習をした。
それは、マークやキムがやっていた火を投げ合ったり光の球を投げ合ったりするのと同じで、それ自体は戦いの際に役に立つような技ではないが、合成魔法を安定して発動出来る様にするための訓練としてはかなり優秀な練習でもあった。
そしてかなりの人数がその技を安定して発動出来る様になった時、誰かが呟いた。
「なあ、これってお祝いの席でやるには最高の技なんじゃないか? 安全だし見かけも華やかだしさ」
周りからは口々に同意する声が上がる。
その兵士は、閲兵式の際の実演や花祭りの際など、華やかな場での実演に良いのではないかと思っての発言だったが、いきなりキムが目を輝かせてこう言ったのだ。
「これって、結婚式のお祝いに最高じゃあないか?」
その瞬間、ほぼ全員が同意するように声を上げて拍手をした。
「じゃあ、ロベリオ様の結婚式の後、庭に出てこられたところでやってみないか!」
「ああ、それは良いよな。全員整列して一斉に発動させれば……」
またあちこちから拍手が上がり、皆で嬉々としてどうやれば良いかを相談しあったのだった。
「どうした?」
呼び出されて式場から出てきた二人を見て、何人かが慌てたように振り返る。
「隊長に報告して、俺達が最前列に並ぶ事は了解していただけたんだけどさ。こっち側は巫女様方が並ぶから使えないらしいんだ」
「あれ、そうなんだ。じゃあちょっと列の配置を考えないとなあ」
第四部隊が並べる場所は決まっている。なので何かしようと思ったら、その範囲内でやらなければいけない。
どうやら予想していたよりも整列出来る幅が小さかったらしく、全員が最前列に並べない事が判明したらしい。
「ううん。どうするかなあ」
困って腕を組むマークとキムを見て、他の兵士達も困ったように顔を見合わせる。
「せっかくだから、使える奴全員でお祝いしたいよなあ」
その場にいた兵士達全員がそれぞれ考え込む。
「ああそっか、こうやって並べば良いんじゃないか?」
顔を上げたマークが笑顔でそう言い、並ぶ予定の場所を見る。
「ここからここまでだっけ?」
地面に小さな白いマーカーが置かれた箇所を見て、1番端の位置に立つ。
「キム、ここに立ってみてくれるか。それで体を横にして出来るだけ俺にくっついてから右手を上げるんだ」
自分のすぐ横に体を完全に横向きにした状態で右手を上げながらそう言う。
「ああそうか。こうやって横向きにすれば一人の場所に二人は並べるな」
そう言ってすぐ隣に同じように体を横向きにして並ぶ。
「それなら出来そうだな。しかもこの並び方のほうが虹に隙間が出来ないから、完全に虹のアーチのトンネルになるよな!」
それを見た他の兵士たちも嬉々として並ぶ。
「よし、これなら大丈夫だな!」
全員並べる事を確認してから一旦列を解散して、皆で笑顔で手を叩き合った。
そしてロベリオとフェリシアの結婚式が始まった。
笑顔の絶えなかった式が終わり、二人が参列出来なかった人々にもお披露目の意味を込めて外に出てくる。
その際、第四部隊の兵士達が行った虹のアーチは、その場にいたほぼ全員から大絶賛を受け、その後もあちこちで話題になるほどの評判となった。
その結果、あちこちから祝い事の際にやって欲しいと第四部隊に問い合わせが相次ぐ事になるのだった。




