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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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誓いの言葉

「あれ、もしかして今回もディレント公爵夫妻が見届け人なの?」

 祭壇に向き直ったロベリオとフェリシアの二人から少し離れた場所に、最前列に座っていたディレント公爵夫妻が立ち上がって進み出て来たのを見て、レイが小さな声でそう呟く。

 確かカウリの結婚式の時にも、こうしてディレント公爵夫妻が進み出て見届け人の役をするのだと教えてもらった覚えがある。

「そうだよ。ディレント公爵ご夫妻は、結婚の見届け人を頼まれる事が多いね」

 レイの呟きが聞こえたユージンが、小さな声でそう教えてくれる。

「へえ、そうなんですね」

 目を輝かせて揃ってロベリオとフェリシアを見つめているレイとティミーを見て、ユージンも笑顔になる。

「ああ、そろそろ始まるみたいだね」

 ユージンにそう言われて、慌てて背筋を伸ばして前を向く二人だった。



「精霊王の御前にて、新たなる道を進む者達に祝福を」

 祭壇前に立っていた銀糸に紫の豪華な肩掛けをまとった大僧正の声に、場内は水を打ったように静まり返る。

 ゆっくりと全体を見回して重々しく頷いた大僧正は、ゆっくりと手にしたミスリルの杖を打ち振る。

 それに合わせて、子供達が持っていた杖をゆっくりと振る。

 杖に取り付けられたごく小さなミスリルの鈴達が、軽やかな音を場内に響かせた。

 聖なる響きに惹かれて集まって来たのはシルフ達だけでない。大勢の光の精霊達までが呼びもしないのに勝手に集まって来て、微かな光を放っては点滅しながら参列者達の頭上を大はしゃぎで飛び回っていた。

 祭壇の両端に並べられた聖なる柊がその枝を広げている大きな植木鉢では、その根本の土の見える部分に姿を現したノーム達が大喜びで手を取りあって楽しそうに輪になって踊っていた。

 また火蜥蜴達は、祭壇やその左右に並べられた燭台に灯されている無数の蝋燭の炎の中に陣取り、これもご機嫌で口を開いてまるで歌うように体を左右に揺らしていた。

 蝋燭の炎は、その火蜥蜴達の動きにあわせるかのように一斉に右に左にゆっくりと揺めき、まるで炎が踊っているかのように見えてあちこちから密かな驚きの声が上がった。

 祭壇の精霊王の足元とマルコット様の前に置かれた大きな水盤の上では、これも勝手に集まってきたウィンディーネ達が大喜びではしゃぎ回り、両手で水を弾いて水飛沫を上げては水盤の上に小さな虹を描いて見せ、これにもあちこちから驚きの声が上がっていた。



「まあ、虹が出たわ」

 突然水盤の上に現れた虹に気付いたフェリシアが、小さな声で嬉しそうに呟く。

「ウィンディーネ達からの贈り物だよ。ミスリルの鈴の音を聞いて集まって来た精霊達が、あちこちで大騒ぎしているよ」

 これも小さな声でロベリオが言うと、聞こえたフェリシアは嬉しそうに頷き手にした大きな花束をそっと抱きしめた。

 実はその花束にも、何人ものウィンディーネが座っていてこっそり花を守ってくれているのだけれど、残念ながら精霊が見えない花嫁はそれに気付く事は無かった。



「精霊王に感謝と祝福を」

 大僧正の言葉に参列者達が揃って同じ言葉を唱和する。

 音楽隊の奏でる竪琴の音が場内に流れ、再び演奏が始まる。

 祭壇の左右に進み出て来ていた神官達がその音に合わせて、精霊王に捧げる歌を歌い始める。

 参列者達もそれに続いて歌い始めた。

 レイとティミーも、目を輝かせて一生懸命精霊王に捧げる歌を歌っていた。



 歌が終わり、再び場内が静まり返る。

 大僧正がゆっくりと口を開く。

「ロベリオ・マルセル。汝これから先の日々を、病める時も、健やかなる時も、お互いを敬い、喜びと悲しみを共にし、貧しき時には助け合い、いつの日にか輪廻の輪に戻るその時まで、その命かけて彼女を守り、愛することを誓いますか?」


「誓います」

 静かなロベリオの声が場内に響く。


「フェリシア・カーニャ。汝これから先の日々を、病める時も、健やかなる時も、互いを敬い、喜びと悲しみを共にし、貧しき時には助け合い、いつの日にか輪廻の輪に戻るその時まで、その命かけて彼を守り、愛することを誓いますか?」


「誓います」

 女性にしてはやや低めのフェリシアの声がはっきりと聞こえた。


「ここに、ロベリオ・マルセルと、フェリシア・カーニャ両名が、精霊王の御前にて、これからの人生を共に歩む事を約束致しました。これを見届けました事をご報告申し上げます。精霊王に栄えあれ」

 ディレント公爵のよく通る低い声が場内に響く。


「精霊王に感謝と祝福を」

 ロベリオとフェリシアの二人の声が重なる。

 参列者達から大きな拍手が起こり、シルフ達や光の精霊達も大喜びで手を叩き合ったりくるりくるりと踊ったりしていたのだった。



「すごいや。僕、こんなにたくさんの精霊達が集まっているのは初めて見ます」

 目を輝かせたティミーが、自分達の頭上にまでやって来て楽しそうに踊ったり手を振ったりしている精霊達を嬉しそうに見つめていた。

「確かに多いね。結婚式は精霊達も大好きだからよく集まって来るんだけど、今日は一段と多いね。まあ、さすがは竜の主ってところかな」

 肩を竦めて笑ったユージンの言葉に、ティミーとレイは満面の笑みで揃って大きく頷いていたのだった。

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