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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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朝食と精霊魔法訓練所へ

「これくらいなら食べられると思います」

 相変わらずレイの取った料理の半分も取っていないティミーだが、彼にしてはかなり頑張った方だろう。

 料理が綺麗に並んだ皿を見たロベリオ達も笑顔で拍手してくれた。



「精霊魔法訓練所の食事も美味しいよ。だけど、ティミーは今日はまだ食堂では食べないかな」

「どうでしょうね。でも楽しみです」

 小さく切った燻製肉を飲み込んだティミーは、そう言ってレイと顔を見合わせて揃って笑顔になる。

 それから、ロベリオに言われて取ったレバーフライを見て小さくため息を吐く。

 実はレバーはあまり好きでは無い、いや、正直にいうとかなり苦手だ。

 しかし、全員のお皿にレバーフライとレバーペーストがあるのを見て、さらにはロベリオから食べるように言われてそれぞれ一つずつ取ってきたのだ。

「貧血には気をつけてね。このレバーフライは美味しいからこうやって食べると良いよ」

 レイは笑顔でそう言って、柔らかな丸パンを半分に切って断面にレバーペーストをたっぷりと塗りつける。

 このレバーペーストもニコスの配合してくれたスパイスのお陰でかなり食べやすくなっている。なので、レバーペーストが苦手だったレイでもかなりの量を食べられるようになった。

 しかもこのレバーフライを挟む時にこれを塗ると味の濃厚さが増すことがわかり、最近の食堂では皆がこうやって食べているほどだ。

「ニコスに感謝だね。お陰で最近は貧血もほとんど無いもん」

 あっという間に一つ目のパンを平げ二個目を作り始めたレイを見て、ティミーは密かにため息を吐いた。

 それから自分の皿に取ったレバーフライを嫌そうに見るティミーを、ロベリオとユージンは心配そうに見ている。

「これを塗ってパンに挟むといいんですね」

 小さな声でそう言い、レイがしていたようにレバーペーストを塗ってから小さめの丸パンにレバーフライを挟む。

 手にしたそれをしばらくじっと見つめた後、意を決したように目を閉じて大きな口を開けてかぶりついた。

 そのまま黙ってもぐもぐと咀嚼している様子を、レイも含めて全員が心配そうに見ている。



「あれ、臭くない……」

 口の中を全部飲み込んでから、不思議そうにそう呟く。

 ティミーは特にレバー特有の臭みが嫌いだったのだが、このレバーフライもペーストもほとんどあの嫌な臭みがしないのだ。

 もう一口、今度はやや小さく齧ってみる。何度か咀嚼してしっかりと飲み込んでから目を見開く。

「へえ、スパイスが効いてて美味しいですね」

 ティミーの素直な感想に、全員揃って安堵のため息を吐いたのだった。

「良かった。食べられるのなら、できるだけこれは食べるようにな。竜騎士は貧血対策は必須なんだよ。レバーは少量で効果が高いからね」

「わかりました。食べるようにします」

 真剣に頷いて続きを食べ始めるのを見て、ロベリオ達も笑顔で頷き合って食事を再開した。



 食事が終われば、少し休憩してからレイとカウリもティミーとロベリオ、それからユージンと一緒にそれぞれラプトルに乗って精霊魔法訓練所へ向かった。

 ティミーはプレゼントで貰った鞄を早速使っている。

「今日は、まずはケレス学院長を紹介するからね。そのあとは改めて適性検査を受けてもらうよ。それが終われば講義の組み方の相談や教科書の説明かな」

「ティミーは俺と違って全く精霊魔法に触れずにきたからなあ。まあ、時間はまだまだあるんだから、体づくりと同様に急がず一番の基礎からじっくりやれば良いさ」

 カウリの言葉に、ティミーも真剣な顔で頷く。

 少しくらいなら、シルフ達の声がようやく聴こえるようにはなったが、まだ他の皆がやっているように滑らかな会話は出来ない。

 今も、自分の周りを飛び回っているシルフ達を見上げて笑顔で手を振っているが、彼女達の声は聞こえない。



「僕、本当に大丈夫かなあ」

『心配はいらぬよ』

『其方には我がついているから安心しなさい』

 耳元で聞こえたターコイズの使いのシルフの声に、ティミーは笑顔で顔を上げた。

「うん、もちろん分かってるよ。いつもありがとうね。今から精霊魔法訓練所へ行くんだって。双子の塔って外からしか見た事が無いから中に入るのって初めてだよ。どんな所なんだろうね」

 ターコイズの使いのシルフにそっとキスを贈り、ティミーは嬉しそうに遠くに見える双子の塔を見た。

「建物の中は大学なんかとそれほど変わりゃしないって。だけど城の図書館程じゃあないけど、精霊魔法に関する訓練所の図書館の蔵書の質と量は相当なものだよ。あれを読むだけでも訓練所へ行く価値があると思うぞ」

 笑ったカウリの言葉にレイも何度も頷く。

「僕達は、いつも午前中は図書館にある自習室を借りて勉強してるんだ。午後からがそれぞれの個別授業になるからね。ティミーはどうなるの? カウリみたいに一日中個別授業?」

「その辺りもケレス学院長と要相談だよな。ティミーの場合は一気に詰めて勉強させる方がいいのか、レイルズみたいにある程度自由にやらせた方が良いのか。まあしばらくは様子見かな?」

「自習室で一緒に勉強出来るのなら、僕やマーク達もティミーに基礎程度なら教えてあげられると思うけどね」

 目を輝かせるレイの言葉に、ロベリオとユージンが顔を見合わせる。

「確かにレイルズと一緒って事はマーク軍曹とキム軍曹も当然一緒なんだから、確かに全員先生役が出来るよな」

「巫女様達やジャスミンも一緒だもんな」

 揃ってにんまりと笑って頷き合った二人は、それっきり知らん顔で平然とラプトルを歩ませていたのだった。

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