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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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もてなしの意味とお手をどうぞ

「おはようございます」

「おはようございます」

「おはようガンディ」

「おう、おはよう。相変わらず元気じゃな。今朝は誰も鋼の頭突きを喰らわなかったのか、ヨシヨシ」

 先にレイ達三人が廊下に出てそれからガンディと合流して挨拶を交わし、笑ったガンディの言葉に三人が揃って吹き出す。

「おはようございます」

「おはようございます。何を楽しそうに話してるの?」

「おはようございます」

 そこへ二階から降りて来た少女達が合流して、また元気に挨拶を交わしてから執事の案内で一緒に庭へ出て行く。



 その庭には、昨日と同じ丸いテーブルが置かれていた。

 テーブルの左右に置かれた大きな花瓶に飾られた長い枝と小花のアーチはそのままだったが、テーブルの上に置かれた花は昨日とは色が変わっていた。

 昨日は黄色と白、それから薄紅色だったのが、今朝は濃淡のある青一色になっている。一緒に飾られている葉は真っ白だ。

 それを見たジャスミンが目を輝かせて手を打った。

「昨日の花は、黄色と白、それから薄紅色、そして飾りの葉は灰色がかった銀色に塗られていたわ。そして今朝の花は青一色に真っ白な葉。ねえ、これってもしかして……私達の竜の色なのね!」

 その言葉に、レイとニーカも目を見開く。

「そっか、今日の花は濃淡はあるけど青一色で飾りの葉っぱは真っ白。これって確かにブルーの色だね」

「昨日の花と飾りの薄紅色と灰色なら、確かにクロサイトの色だわ」

 両手を握りしめたニーカが嬉しそうにそう言って庭に座っているクロサイトを振り返る。

 首を伸ばした竜達は、嬉しそうにゆっくりとそれぞれに喉を鳴らした。

「そして、黄色と白はルチルの色だわ。本当は半透明の乳白色だけど、さすがにその色は無いものね」

 三人が大喜びしている後ろで、マーク達も感心したように花を見ていた。

「へえ、綺麗だなとは思っていたけど、そんな仕掛けがあったなんてな」

「すごいな、言われないと全然気づかなかったよ」

 苦笑いしている二人の背中をガンディが笑って叩く。

「分かったであろう? これがもてなしというものだ。相手に気づかれるかどうかはこの際問題では無い。受け入れる側の心意気さ」

 揃って頷きながら笑顔で拍手をするマークとキムだった。

 同じく笑顔で聞いていたレイが目を輝かせる。

「僕が竜騎士見習いとして正式に紹介された時にね、奥殿で両陛下から夕食をご招待頂いたんだ。その時にね、部屋に銀星草を枝ごと生けてくれてあったんだよ」

「銀星草って、あの?」

 裏庭を指差しながらマークとキムがそう言って首を傾げる。

「そうだよ。あの、銀星草! 初めて見たのがその時だったんだ。奥殿に沢山咲いているんだって仰ってたよ。僕が天文学を習っているのを陛下も王妃様もご存知だったから、わざわざ星の名前が付いた花を生けてくださったんだって。後でグラントリーにあれがもてなしなんだって教えてもらったよ」

「素敵だわ、さすがね」

 笑顔のジャスミンの言葉に、もう話についていけないクラウディアとニーカは声もなく驚いている。

「貴族ってすげえな。そんなところまで考えて部屋を飾ったりするんだ」

「花に意味を込めるのはよく使われる手だわ。花自体にも込められた言葉や意味があったりするから、迂闊に花を贈るのは危険な場合もあるのよ」

 嬉々として語り始めたその内容に、マークとキムはほぼ白目を向いている。

「ガサツな俺には絶対無理だな。まあ、お前はこれから頑張れよな」

 小さく笑ったキムに脇腹を突かれて、無言で悶絶するマークだった。



 結局、少女達は目配せしあってから小さく笑って頷き合い、ジャスミンをクラウディアとニーカが突っついてから押し出し、昨日と同じ配置で座って用意された豪華な朝食をいただいた。

 少女達は終始ご機嫌でコロコロと笑い、目を見交わしては手にしたジュースの入ったグラスでこっそりと乾杯した。




「今日はどうするの? もうお食事をいただいたら戻るのかしら?」

 食後のカナエ草のお茶を飲みながら、ニーカがレイを見てから、少し離れたテーブルに座るガンディを見た。

「えっと、戻るのは夕方で良いんだって。少し早めの夕食を頂いてから戻る予定だよ。帰る時も馬車で送るからね、ガンディはどうするのかな?」

 今朝、ラスティとグラントリーから今日の予定を聞いていたので、レイが笑って教える。

「そうなのね。じゃあもう少し書斎で本が読めるわね」

 嬉しそうなクラウディアの笑顔にレイは密かに見惚れていて、我に返って慌ててカナエ草のお茶を飲んで誤魔化した。

「じゃあ、今日は書斎で本読みかな」

「そうだね。ジャスミンの光の精霊魔法も、それから合成魔法も上手くいった事だしな」

 少し赤くなったレイを横目で見て、マークとキムが笑っている。

「儂は昼食を頂いたら先に戻らせてもらう事にするからな。まあ、ゆっくりしていきなさい」

「あ、それならガンディ様にもう少し相談したい事があります」

 急に真顔になったマークとキムを見て、ガンディはお茶を飲み干した。

「そうか。では、続きは書斎で話すとしようか。儂も其方達の研究の進捗具合と、講義の内容を聞きたいからな」

 そう言って立ち上がったガンディの言葉に頷き、それぞれ席を立ってガンディの後に続いた。



 なんとなくレイがクラウディアの隣に並び、マークがジャスミンの隣に並ぶ。そして少し離れたところをニーカとキムが並んで歩いていた。

 しかし、離宮の庭に開かれた扉を潜る前に、満面の笑みのガンディが振り返った。

「これも訓練じゃな。女性をしっかりとエスコートしなさい」

 そう言って、隣に並んでいたターシャ夫人にガンディは右の腕を差し出す。

 笑顔で一礼したターシャ夫人がガンディの腕に自分に左腕を軽く絡める。

 そのまま先導するようにして歩いてく様を見て、レイは笑顔でクラウディアの腕を自分の右腕に縋らせた。

「ついて来てね」

 小さな声でそう言うと、ガンディの後を少し離れてゆっくりと歩き、扉を潜る際にはさり気なく彼女の足元を見ながら部屋に入って行った。

 それを見て空を仰いだマークは、隣に立つジャスミンに向かって同じように右の腕を差し出した。

「あの、どうぞ……あんなに優雅には出来ないと思うけど、そこはどうかご容赦を」

 最後は(おど)けてそう言ったので、ジャスミンは頷きつつ笑っている。

「それはこれからに期待するわ。頑張ってね」

「うう、気長にお待ちください」

 そのあまりにも情けなさそうな言葉に、堪えきれずに小さく吹き出すジャスミンだった。



「あらあら、皆、仲が良くて結構ね」

 呆れたようなニーカの言葉に、同じく苦笑いしたキムが優雅に一礼して右腕を差し出す。

「では、残り物の無骨者で申し訳ございませんが、よろしければお相手願えますでしょうか?」

 先日読んだ、恋愛物語の中に出て来た伊達男の台詞そのままだ。

 だが、それを聞いたニーカは、ぱあっと輝かんばかりの笑顔になった。

「こちらこそ、残り物でごめんね。でもキムはとっても素敵よ」

 嬉しそうにそう言うと、嬉々として彼の右腕にすがる。しかし、残念ながらニーカはかなり背が低かったために他の二組のようにはならず、キムの腕に文字通りぶら下がるみたいになってしまい、顔を見合わせて同時に吹き出した。

「ううん、この身長差だとこれは無理か。それじゃあ、こうしよう。お手をどうぞ」

 改めて一礼すると、キムはニーカの右手を取り、ゆっくりと手を引いて部屋に入って行った。当然、段差の部分は特に注意して誘導する。

 慎重に彼についていくニーカは、しかしこれ以上無いくらいの素敵な笑顔になっていたのだった。

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