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東京炎上  作者: 浅倉光
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総理官邸

核兵器とミサイルの開発を止めない北朝鮮、世界の覇権維持を図る米国、経済成長にあわせて中華思想の実現を目指す中国、南下政策を悲願とする孤高のロシア、大国に翻弄され妄想を支えにする韓国、そして極東の不思議な国日本の思惑が交錯する、現代~近未来の東アジア情勢の物語。

2017年10月1日午後7時50分。安倍総理は総理官邸の個室で電話が鳴るのを待った。10分後にはワシントンDCで午前7時、北京は午後7時になる。各国首脳が対外的に違和感なく秘密の国際三者電話ができる数少ないタイミングだった。


両手の指を組み胸に当てながら安倍はじっと天井を睨んだ。


……遂にその日は来た。


本来であれば10月の中国の全人大会が終わり、習近平が安泰となった直後に衆議院を解散、総選挙の候補者選びのタイミングで北緯38度線を挟んで韓国軍と北朝鮮軍に小さな諍いが発生する予定だった。


中国人民解放軍は既に北朝鮮との国境沿いへの布陣を完了している。有事に北朝鮮からの難民流入を防ぐのが目的だが、その方法についての議論はなかった。


韓国との諍いが発端となって戦争に発展した場合は米軍の攻撃に大義名分がつく。そして北朝鮮からの報復の多くは韓国に向けられるだろう。そうなれば東京への飽和攻撃の可能性は減り、ミサイル迎撃の成功率も上がる。数発の着弾はやむを得ないが日本人の犠牲を最小限に納める為にはこれが最善であった。


また、ミサイル数発の日本国土着弾は自衛隊の出動を可能にし、その後も自衛隊を国軍化する憲法改正ができる。


南北朝鮮両軍の争いが2~3日続けば、その間に在韓の邦人とアメリカ人のほとんどを国外もしくは南部の釜山に移動出来る準備も密かに進めてあった。


南北朝鮮両軍の争い勃発の72時間後に米軍は総攻撃を開始。同時に中国人民解放軍は南下を始める。これに先立って中露不可侵条約が結ばれていた。


暴走を始めた北朝鮮に中国は手を焼き、北朝鮮にすり寄る韓国を米国は信用出来なかった。反日教育が進んだ朝鮮半島は日本にとって戦後処理の禍根であった。


『北朝鮮は排除するが、北緯38度線を遵守する』


それが日米中の合意であった。焼け野原と化したソウルの復興支援を日本が行うことで、日本の経済は復興需要に潤うことだろう。その中で韓国での親日教育も施す予定だ。北朝鮮無き後は韓国からTHAAD迎撃システムを撤去する秘密協定も既に交わされた。


ことの番狂わせに関する情報が舞い込んだのは9月の中旬だった。在北京日本大使館から極秘メッセージが届いた。


「習近平汚職の証拠現る」


これまで汚職たたきを大義名分にして次々と政敵を倒して来た習近平だが、その本人の汚職に関する動かぬ証拠が出てきたのだという。この証拠が政敵に渡らぬように大がかりな粛正人事を急遽始めたが、既に政敵の知るところとなった可能性があるという。


もしそれが事実ならば習近平の定年延長はおろか、全人大会での失脚も現実味を帯びる。これを何とかするために全人大会前に南北朝鮮の戦争を始めたいという習近平の意向だった。


これを受け、日本でも衆議院の解散を繰り上げた。朝鮮戦争が始まった後では解散が出来ない。解散直後に戦争突入しなければ、憲法改正の気運もどう変わるか判らない。幸い野党不在のタイミングであり、衆院解散を幾分繰り上げても問題はないと安倍は判断した。


選挙を待たずして民進党は瓦解したが、小池東京都知事が「希望の党」なる受け皿を作ったため、いきなり政局は流動的となった。沈みゆく民進党から移籍する者だけでなく、自民党内の左派から乗り換えるものまで出てきた。


しかしひとたびミサイルが日本に着弾すれば世論は大きく改憲に傾くだろう。それこそ日本が真に独立を得る分水嶺なのだ。


「何が災いし、何が幸いするのか、判らないものだな」


天井を見つめたまま安倍はひとりごちた。

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