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26 解散後の所感

 雑草のようにたくましく。それは祖父、昭善の教えだった。

 「草の根活動」という言葉があるように、地道に根気よく続けることで成功を勝ち取るという考え方は、雑草に例えられることも珍しくない。どんなに刈られてもむしられても生えてくる雑草は、厄介者であると同時に生命のたくましさの象徴でもある。こうした考えが根付いているのは、勤勉で苦難を耐え忍ぶことを美徳とする日本人の感覚に合っていたからだろう。祖父も大事にしているその思想を否定されたので、悠星は腹が立ったのだ。

 ただ、悠星が普段からこうした考えを実践しているかと言われれば、決してそんなことはない。単にいつも昭善から言われているこの言葉があの話し合いの場で浮かんだというだけだ。あのとき悠星は話の主導権を握ることしか考えていなかった。なんとも都合のいい話である。

 そんな都合よく出された言葉で賛同を得られるはずもなく、結局何もまとまらないまま今日のところは解散となった。悠星は創紀と並んでとぼとぼ歩く。

「悠星はもうちょっと頭を柔軟にしたほうがいいと思うなぁ。頑ななところは悠斗に似てるよ」

 悠星の兄である悠斗と同年の創紀はそうこぼして苦笑する。意外なところで実の兄との共通点を指摘されて、悠星は気まずい思いをした。

「どうせおれはソウ兄ほど器用じゃないですよ」

 ちょっと拗ねて実兄よりよほど親しんでいる創紀に恨み言を言う。

「だからこそ協力し合うことに意味があるんだろ。悠星の頑固さだって時には必要なんだ。それがなければ、そもそも再開発の阻止なんて誰もしようとしなかっただろうし。要はタイミングの問題だ」

 悠星が拗ねたところで創紀は余裕の態度だ。そんなのはよくあることで、あしらいにも慣れている。ついでに言えば悠星がある程度ポーズでそうした態度をとっていることもお見通しなのだ。悠星にはなんとも敵わない相手だが、だからこそ悠斗を抜きにしてここまで仲良くなったのだ。

「とにかく喧嘩腰じゃまとまるものもまとまらない。悠星も少し自分を抑えて、話し合いを進めるようにしないとな。俺もフォローするから」

 こうした話し合いを続けることだけはなんとか取りつけた。そうしないと計画自体が進まない。悠星はまだどこか不服そうだ。

「正直、自信ない。なんかおれ、あの人たち苦手なんだもん。特にあのきつい方」

「相性の問題はあるだろうねぇ。でもそれはある程度仕方ないことだと思うよ。せっかく思いは同じなんだから、力を合わせた方が効率的だと思わないか」

「そりゃそうだけどさぁ」

「今はそこが一致してることが一番だ。まだこれからなんだから、何とでもなるさ」

 まだ少しいじけている悠星を見守る創紀の目は、悠星を本当の弟と思っているかのように優しい。夏の盛り、道端の雑草たちは今だとばかりに青々と繁っている。


      *      *      *


「ちょっとビックリしたな。再開発嫌だって思ってる子が他にもいて、こんな風に行動に移しちゃうなんて」

 カフェからの帰り道、めぐみはいつもと変わらない明るい調子で話す。一方の香織は不機嫌そうに眉間をしかめている。

「でもあの態度は問題なんじゃない?あの子って前に私たちのことこそこそ覗いてた子でしょ」

 そのことをいまだに正式に謝罪してこない悠星を香織は許していない。こういうことはきちんとけじめをつけたいタイプだ。結局またレモネードを味わいきれなかったことも不機嫌に拍車をかける要素だった。

 日本に引っ越してきて約一ヶ月。覚束なかった香織の日本語もだいぶ板についてきた。最近では「うーん」と考えて発言することも少なくなった。

 驚異的なスピードで日本語をマスターしつつあるのは、香織の負けず嫌いな性格も影響していた。しかしその負けず嫌いが災いするのか、悠星のようなタイプとはとことんそりが合わない。生意気な人間はその鼻っ柱をへし折ってやりたくなってしまう。

 そんな香織を笑いながらなだめるめぐみ。

「ふふっ。そんなところ香織ちゃんらしくて好きだなぁ。でも私はそんな香織ちゃんと別れるのは嫌だから、あの子に協力するのはアリだと思う」

「……そっか」

 香織もまた、めぐみには敵わないと思った。

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