喫茶店のマスターは見ている。
過剰な期待をせずに(笑)お読みください。
カランコロン・・・。
ベルの様なチャイムの様な音が鳴り響く・・・。
ドアを開けるとそこは、いつも誰かが会話をする
何気ない空間・・・。つまりは、「喫茶店」だった。
喫茶店のマスターは何時もの様にグラスを磨き、
ミキサーをかけてジュースを作る。
「いらっしゃいませ~・・・。」
ケース1.
仲の良い様に見える友人2人が向かい合わせに座りながら
何気ない会話をする。
「いつも、悪い人に惹かれるよね?」
「・・・そうかな・・・?そうなのかもな・・・。」
アイスココアのグラスに刺さったストローをぐるぐると回しながら
ついっと飲み干していく1人の女子大生。
もう1人の少し年上に見える女性が続けて彼女と会話を続ける。
「それでいて・・・ロマンチストだったりするから、だったりして?」
「ぶっ・・・!!ケホケホッ!!なぁに~・・・?もう?それ?」
「当たりでしょ?・・・」
「・・・・・・・・・・・・。」
口の周りをごしごしとハンカチで擦る様に拭き取る彼女は押し黙る。
「ま。女なんて大抵みんなそんなもんだよ?別に。」
「で・・・でもほら!頭が良くて真面目で誠実なタイプも素敵じゃない?
やっぱり、・・・良い人じゃなきゃ・・・ね・・・?」
「気が多いタイプだよね~?」
「いや!どんな人であれ、魅力のある人には惹かれるものじゃない?
多分、男でも女でもさ・・・。」
「まあ、あたしは女だけど男もそうかもしれないって思う時もある。
ままある。そこは確かに同感だな・・・。」
「ある・・・よね?なんとなく理解した様なキモチになるのって・・・。
・・・これも・・・変なのかな・・・?」
「別に・・・。フツーでしょ?おかしくはないと思うよ。
その感覚って・・・。」
年上に見えるサバサバしてそうな女性はそう言いながらそれきり
黙り込みながら、喫茶店の窓の外の景色を眺めていた・・・。
マスターは見ていないふりをしながらも、話を聞いていた。
(この頃の若い女の子でも色々考えて・・・というか・・・。
悩みなりを抱えているのかね?・・・まあ、内容は色恋ばかりで
多少アレだが・・・。まあ・・・若いんだな・・・。色々と・・・。)
そんな事を考えつつも顔には表わさずに黙々とグラスを拭く。
ケース2.
20代半ばぐらいの若い男女が来店した。
「あ、私はアイスティー。」
「俺、別に何も飲みたくないからこの水だけでいいです。」
一瞬困惑する店員の女性・・・。
「ばっ!!何考えてんの?!!いい年してっ!!バカ!
何か注文しなさいよっ!!」
「だって水があるんだからわざわざ注文しなくてもいいだろ?」
「・・・・・。すいません、お姉さん。このバカにはミックスジュースで。」
「かしこまりました・・・。」
店員が去った後に不貞腐れて文句を言い出す男。
「お前、そこまで気を遣わんでも・・・。ミックスジュースとか
高いのに。水があればそれでいいじゃねえか・・・。」
「このドケチが!!!常識で考えなさいよ?!あんたもう
今年で26でしょ?!失礼じゃないの!!」
「年齢なんか関係あるのか~・・・?」
「大ありよ!!そんなだから離婚になってその年で
相手の女の子に子供押し付けて養育費も自分で払うのも
ままならないってんだから!!大問題でしょう?!!」
(おやおや・・・。これはまた・・・。ややこしい客だな・・・。)
マスターは何も聞いてない素振りでカウンターの掃除をする。
「こんなのがイトコだなんてもう・・・呆れて嫌になる。」
「嫌なら断ればいいだろ?!」
「話があるから付き合ってるだけよ!!」
「話って?やっと俺との結婚考えてくれたの?」
「馬鹿じゃない?!離婚したばかりでもう再婚の話?!
しかも相手が何で私なの?!!相手の奥さんや子供が可哀想って
思わないの?!!まだ1歳にもなってないのに・・・!!」
「別に・・・父親なんかいなくても母親が育てればすむ話だろ。」
「・・・・・あんたんとこは離婚してないからそんなことが言えるの!
子供の気持ちを考えてよちゃんと!!私は・・・父親無しで育ったんだよ?
その気持ち・・・あんた、わかんないよね・・・?!」
「・・・・・・・。やっぱり、父親いないと駄目なもん?」
「・・・。いてもいなくても同じだと思ってたけど・・・。
やっぱり、嫌なもんだよ・・・?理解できないかもだけど・・・。」
「そうか・・・・・・・。」
「だから、私の事は・・・諦めて・・・。価値観が違うのよ・・・。」
「・・・・・・そうか・・・・・・・。」
男の方が黙って席を立つ。
「ミックスジュース代。ここは俺がちゃんと払うから。もう出るわ。」
「・・・・・帰るの・・・?もう・・・?」
「もう・・・会わないでおこう・・・。じゃ・・・。」
(うわあ・・・。なんかえらい会話になってたな・・・。
これも修羅場なのかな・・・?まあ、丸く収まった方か・・・。)
マスターは女子店員と目を合わせながらも黙っていた・・・。
日曜の昼間・・・。
その時間に珍しく客がおらず、暇だったマスターはテレビをつけた。
「・・・マスター・・・。お客さんいないからって何も・・・。
競馬なんか見ないでくださいよ・・・・・・。」
女子店員は呆れながら苦笑する・・・。
「マスターだって息抜きしたいさー・・・。」
マスターは立ったまま両手を腰に当てた間の抜けたポーズで
延々と暫く競馬中継を見ていた・・・。
「ぷっ!またあの変なポーズやってるよ・・・。マスター・・・。」
聞こえないぐらいの小声で吹き出す女子店員・・・。
そんな・・・何気ない日常の、「喫茶店」。
フィクションの中に、ノンフィクションも少しずつ織り交ぜて
創りました。マスターのモデルは実在しますがこんなに人当たりの良い
タイプのおじ様ではありません。(笑)
競馬を見る時のポーズはそのままですがwww