第一章 2話 『出発しよう』
青魔道士
中級職(魔道士系)
魔術師見習い→青魔術師→青魔道士
固有特殊能力『あおまほう5』『ラーニング』etc.
利点
・盾が装備できる
・位階5までの青魔法が覚えられる唯一の中級職(上級職は賢者等がある)
・魔力量が多い
・女性青魔道士の格好に定評がある
後書きに続きます
アオイさんが頬を膨らませて、解り易く拗ねていた。
「御免って。さっきは気が立ってて思っても無いようなことが咄嗟に口から出ちゃったんだよ、反省してるからさ、機嫌直してよ」
「そうですか、それは仕方ないですね。ところでアカリさん、失った信用というものは、全てを擲ってまで誠意を見せて貰わないと取り戻せない事はご存知?」
結構怒っていた。
文面もそうだが、地味にアカリ君がアカリさんになっているところが怖い。そんな何かを含んだ様な笑みで俺を見ないで。
「フフっ。冗談ですよ。アカリさんがあれを言われて癇癪を起こしてしまうのは、長い付き合いだから知ってますし」
いやいや。それならば呼び名を直してくださいよアオイさん。表情もギルドを出てから氷のように固まってるし。
「でも実際さ、女の子の身体的コンプレックスを悪口に使うなんて死んだ方が良いよ。最低」
レイラさんが追い討ちを掛けてきた。二対一というのは分が悪い。ここらで反省した素振りを見せて誤魔化すか。
「アカリさん。私は先程、信用を取り戻すには全てを擲ってまで誠意を見せてくれないと駄目と言ったのですよ?」
「奴隷か?もう奴隷になるしか残されてないのか?」
今の会話から、読心術関係の青魔法の存在が予想される。魔物が人の心を読むのもどうかと思うが。
「はあ、まあ詫びとして依頼が成功したら何でも一つ言うことを……」
「「ん?今何でもするって言ったよね?」」
とても食い気味に答えが帰って来た。あと、このフレーズがどっかで聞いたことがある気がする。
「まあ良いよそれで。俺に出来る範囲なら何でもするよ」
男に二言は無い。格好良く決めたつもりだった。
「じゃあ死んでください」
「お断りします」
前言撤回。アオイさんの闇は深い。
「じゃあ私は、今度二人で買い物に言って、その後ご飯とか奢って貰うことにするね!」
特に被害者でもないにも関わらず人の心の損害賠償に肖ろうとしている馬鹿がここに居た。
因みに言うと、パーティーメンバー唯一の戦闘職である彼女の食費は馬鹿にならず、一回の食事量はほか二人の食事を足して倍にしても全然足りないほどである。
例としては以前、食べ放題にチームで行ったとき余りのスピードと食事量に開始五分もしない内に店員がレイラを見て「すみません、もう勘弁してください、お金なら払いますから」と涙と共に懇願してくる程だった。此方としてもその時は金欠だったので無視して食べ続けたのだが、その結果出入り禁止になってしまったのは良い思い出だ。
そのときの彼女は、格好や背丈も相まってその食事風景はドワーフを連想させていた。
「食べ過ぎないことを約束してくれたら、遺憾ではあるが連れてってやるよ」
どうせここでゴネても弱味を捕まれている今、更に高い要求をされようものならたまったものでは無い。
「アオイも何かあるか?出来ることなら聞……く?」
なぜか知らないが、先程より膨れっ面に成ってしまった。
「……ひどいです。……そんな簡単にそう誘えるなんて、私にも勇気があれば……」
確かに酷いな、レイラの集り方は。あそこまで清々しく集れるなんて尊敬に値すると思う。
ただあれを見習うって言うのはなあ。折角の唯一の良心だった筈が……。流石に不味いから説得してみることにした。
「いや、俺は今のままのアオイが一番好き何だけどなあ」
するとアオイの顔色はみるみる耳まで真っ赤に変わり、俯いて黙ってしまった。苦し紛れの説得だったけど、成功だったのかな?
何故かそのまま、背中をポカポカ叩かれた。女心は難しい。
あと、レイラが少し不機嫌になっていた。何が不満だったと言うのだ。
兎に角、情緒不安定な二人を連れ、サリナの街を囲む森の中へと入っていくことになった。
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本日の依頼は、ここのサリナの街周辺の森に生息する、グリーンワイバーン5匹の討伐だ。
グリーンワイバーンはその名の通り緑色の鱗を全身に生やした翼竜である。
更に彼らは体内の魔力を使い簡単な魔法ならば使用する事が出来、それを利用して空を飛んだり火を吹いたりしている。
竜種は普段はプライドが高く下等生物に手を出さない温厚な性格の筈なのだが、ここ最近になってから人間を見ると暴れ始めるようになったのだとか。
その為、採集等の下級クエストを受ける初心者の冒険者はグリーンワイバーン怖さに受けなくなってしまい、この依頼は緊急ということで報酬五割増しとなっていたところを『紅の翼』がめざとく見つけ、今に至るというわけである。
「じゃあアカリ、いつものあれ宜しく!」
森に入る手前で、レイラが声を掛けてきた。いつもやっていることなので大体察しは付いていた。
「【アボイディング】」
レイラの回りを薄く黄緑色の粒子が取り囲んだが、見た目や能力値は特に変わっていない。だが、レイラは礼を言って早速森の中へと駆けていった。
「あの、アカリ君、私もお願いできますか?」
「【アボイディング】」
又もや、黄緑色の粒子がアオイの回りを包んだ。やはり能力は変わらない。
さあ、この魔法について解説しよう。
【アボイディング】は位階2の単体を対象にした補助系の黒魔法だ。
効果は一般的には人避けと考えられていた。どうやら、顔も知らない他人がアボイディングが掛かっている人物を認識出来なくなる、居ても居ないように感じてしまうようだ。
人間の表面意識に掛かるような魔法なので、明らかに敵意を持っている相手、魔物やその人を知っている人には効果がなかったり、薄かったりする。
ここまで聞いていると一般人に顔を知られないようにしなければならない『暗殺者』や『忍者』等しか使い道がないように覚えるが、そうではない事を発見した。
この魔法実は、人以外にも効果は有るのだ。ただ魔物には効かないが。
だから何だという話なのだが、この場でこの魔法を使う意味を考えて欲しい。
これからサリナの森に入るに当たってなぜこの魔法を彼女らが求めたのかを。
と言っても、答えは只の虫除けである。
冒険者、特にうちのレイラは動物系の素材を使った防具を着けていることが多く、今回は違うが長期的な依頼は食糧を持っていかなければならないので、魔法収納等がないと虫が付くと大変である。
他にも、白魔法で大体治すことは出来るのだが蚊などが媒体の血液感染する病気も恐ろしい。
虫自体にも、どんな毒を持っているのかがわからないものが多い。
そんなわけで、この魔法、意外と有能なのだ。そしてこれを発見した俺はもっと誉められて良いはずなのだが。
小さな問題でも工夫して解決するのが、理想の冒険者像だと俺は思っている。
実際、これを世間に発表すれば人々のストレスが解消され俺は信仰の対象に……
「そんなところ突っ立って愉悦に浸ってないで早く来い!」
余りにも待たされて怒ったレイラにドロップキックをかまされた。
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空気中の魔力瘴気が強くなってきた。先程も説明したように、グリーンワイバーンは簡単な魔法が使えるのだが、それに対して保有する魔力はとても多い。
「うぷっ、アカリ君、やっぱりこの依頼止めたくなってきたんですけれど」
このように、空気中に溢れた魔力だけでもアオイでも余りの魔力量に魔力酔いするほどには。
その量、グリーンワイバーン一体につき熟練の黒魔道士三人分の魔力量に相当するほどだ。
「我慢しろよ、この後の事を考えてもこれ程美味しいものはないよなかなか」
「この後、!!そうですね、早く終わらせましょう」
さっきの事でも思い出したのか、かなり現金な奴だと思う。
心なしか、この後の出費を考えると俺の胃が痛くなった気がする。
あれ?ストレス発散のつもりだったのにどんどんストレスが増えてないだろうか。
「アカリ!グリーンワイバーンの巣が見えてきた!」
「早く補助お願いします、一刻も早く終わらせましょう!」
まあ二人が楽しそうなのであれば、こんな出費何てかすり傷でもないか。
短所
・体力や力が低いため、ラーニングに工夫が必要
・絶対数が少ない
・青魔法に癖が強い
・その外見から、性癖がsと思われがち