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サウンドオブミュージカル・6《終》

 ローナとアニーが愛をはぐくみ合っていたその頃、レオンシオとアンナ達は、共に決闘の舞台である『レオーネ広場』へ向かっていた。

 レオーネ広場は、宮殿と街の大聖堂を繋ぐ道の中間にある広場。

 

 宮殿を背にやってくるのはレオンシオ一行だ。

 まずはミュージカル要因である金魚のフン六名。

 それから雇い入れた劇団員に七名一般公募の十六名。

 盛り上げ要因の黄の精霊師六名。


 音楽団は十名しかいないが、圧巻なのはロラーンド引き入る作家軍団だ。

 七名という数はもちろんだが。それらはいずれも、アルクオーレにいる人々ならば誰もが一度は名を聞いたことがある人々ばかり。

 相手への素早いカウンターやその場に合わせた即興に関しては万全であった。


 そしてそれらを先頭で率いるのは、レオンシオであった。

 彼の気持は高ぶり、口は自然と動き出す。


◇「ああいくら心望んでいーたか♪

  この日が訪れるとーきを♪」


――


 大聖堂側からやってくるのは、アンナだ。

 ミュージカル要因である腰巾着七人。

 雇い入れの劇団傭兵十人に一般公募八名。

 そして盛り上げ役の赤の精霊師五名。


 こちらは作家集団は四人であったが、彼らが持つは偉大なる音楽団だ。

 現役のランフォーリャ楽器隊以外にも、その創立に関わったOB八名。

 その内には大陸全土に名を知らしめる偉大なる名作曲も名を連ねている。

 こと音楽による空気制圧能力は、爆発的。


 彼女らを先頭で率いるのは、まさしくアンナその人だ。

 レオンシオ同様、感情が高ぶりだす。


●「全てを終わらせる瞬間がいまぁー♪

  やってーきたー♪」


 アンナの声に合わせ、ランフォーリャ楽器隊が重々しい演奏を始める。

 国中にでも鳴り響く音。それはレオンシオの元にも届いた。

 

 合図をした訳ではない。

 ただ、自然とレオンシオの音楽隊も対抗するように音を重ねた。


 音楽に合わせ、盛り上げるように赤の精霊が火を噴き、黄の精霊の雷が唸った。



◇「もはやもうぅ♪

  とめらーれない♪♪」



●「この激しいかんーっじょう♪

  をーー♪♪」



 そしてその音は、広場に向かい止めようとするアニーとローナ達にも届いた。

 彼らは顔を合わせる。


「大変、もう始まってしまう」

「ああ、急ごう!」


 そして、手をつなぎ走り出す、アニーとローナ。



*「「彼らを止めなけれーばー♪」」


●「止まりはしない何がーあぁーってもー♪」


◇「例え神であぁーっても♪」


*「「僕らなら止められる~♪♪」」


◇「この内にある強いに憎しみ~は~♪♪」

*「愛さえあれぇ~ば~♪♪♪」  


●「怒りの渦が~♪♪♪」



●◇*「「「「全てを包み~~~こ~~む~~♪♪♪♪」」」」

           


                    ◇「決着の時だ♪」

   

          ●「決着の時だ♪」


*「「決着の時だ♪」」


     

 それは、同時であった。


 正面に現れたアンナ軍団とレオンシオ軍団。

 見つめ合うは、強い憎しみの瞳。

 もはや格式ばった言葉はいらない。


 ただ、ぶつかり合うのみ。         



●◇「「「「全てを~~~♪♪♪」」」」


◇「おわ~~♪♪♪」


●「ら~~せっ♪♪♪」


●◇「「「「っる~~~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」」」」 


 そうして、一歩を踏み出そうとした時。


「「待てー!!」」


 叫びながら間に滑り込んできたのは、アニーとローナであった。

 ところですっかり忘れられているかもしれないが、未だこのランフォーリャには雨が降り続けていた。

 そして雨に濡れた石畳というのは、滑りやすいものだ。


 そんな滑りやすい所をダッシュでやってきた二人。

 中々にブレーキがかかる事は出来ず。

 それでもアニーはいい感じにストップする事は出来たのだが、

 無理に踏ん張ろうとしたローナ。


 クイッと足がもつれ、ツルっと滑り体が石畳に投げ出された。

 そしてそのまま、頭から突っ込んだのは、道脇の水たまりだった。


「ローナ!? ローナァ!」


 顔を真っ青にしたアニーが彼女の体を抱き起こす。

 ドブ水に汚れた彼女の顔は真っ黒で会った。


「だ、大丈夫かい!? 頭をぶつけたりはしてないか?!」

「それは……平気……ただ、膝が何だか痛いわ」

「ああ、擦りむいてしまったんだね!」 

「それに、なんだか目が開けづらいわ」

「ドブに突っ込んだからね。まって、今顔を拭いてあげる!」

「それはいいの……ただ、なんだか体が疲れて……」

「走って来たからね!」

「それに、ひどく臭いわ……」

「ドブの中に馬糞があるよ!」

「ああアニー、私は汚れてしまったわ……」

「御風呂に入れば問題ないよ!!」

「お願い、アニー。アンナやレオンシオを恨まないで……



 私が汚れてしまったのはぁ~♪

         彼らのせいじゃないの~♪

 ただ~憎しみ~怒りぃ~がぁ~♪」


「ああローナ。それ以上しゃべっちゃダメだ……」


        「彼らの~身を~包み~込んだぁ~のぉ~♪



 ああ、段々眠くなってきたわ……」

「ローナ……ローナ」



「でも~怖くはない~♪

  深い眠りについて~も~♪

   貴方との~愛があれ~ば~♪

    全てを乗り越えられ~る~から~♪


 そうでしょ?」

「勿論さ


         愛さえ~~あれぁ~ば~♪

     全てを乗り越えられ~る~♪」




「ああアニ~♪♪♪

    アニ~♪♪

      アニ~♪」

「ああロ~ナ♪♪♪

    ロ~ナ♪♪

      ロ~ナ♪」



「「この気持ちさえあれば……♪

       どんなことでも……♪

                    耐え……♪」」


 やがて、ローナの体から力が抜けおちる。

 アニーは目に涙をため、叫んだ。


「おお……ローナ……



 ロォ~~~ナァ~~~~~ッッッ!!!!!!!!」




 そうしてアニーは抱きかかえた。

 いびきを掻いているローナを、強く。


 悲痛のこもった叫び声。

 レオンシオやアンナ。そして周りにいた者の全員が、打ちつけられる雨の中、二人を悲しい面持ちで見つめていた。



 身守る群衆の中、麗しい銀の髪の少女が、呟いたのだった。


「アホか、あやつらは?」



 その言葉が関係しているか不明だが、ミュージカルブームは急速に衰退をしていった。





 流行りとは、そういうものである。





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