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サウンドオブミュージカル・4

 さて、頼りにしていたアニーがどうも役にたたず、結局レオンシオは自分達で解決策を見つけなければならなかった。

 日夜バーに集まり、いかにアンナWITHランフォーリャ楽器隊に立ち向かうかを会議していた。

 その中で、導き出された答えはこれだ。


「つまり、あいつらが楽器隊を使えない所でミュージカればいいんじゃないか?」


 そうと決まれば話は早い。さっそく、レオンシオ達は準備に取り掛かった。



 そして翌日。

 アンナ達は今日もサロンで一発ミュージカってから、意気揚々と取り巻きをつれて近くの公園へ散歩に出かけた。

 今日も悪くない出来であった。残念ながらレオンシオ達がいなかったが、他の仲間達に完全なる格の違いを見せつけるには充分であった。

 満足感たっぷりに、日傘を手にしながら談笑して歩いていたが。


 そこに、何処からともなく指を鳴らす音が聞こえてくる。

 一つではない。同時に重なっているのだ。

 音の元を探し周囲を見渡し、アンナに緊張が走る。

 レオンシオだ。


 アンナと目のあったレオンシオ達は不敵な笑みを浮かべ、指を鳴らしながらゆっくりと歩いてくる。

 これは危険だ。アンナは本能でそう察知した。

 彼らから目を離すと、何もなかったかのように去ろうとする。


 だが、レオンシオ達はクルクルとスピンしながら左右からアンナ達の前に現れ、道をふさぐ。

 先頭に立っていたレオンシオは、からかうような態度で首をクイッと捻った。

 アンナの内心に、危険を知らせるのろしが次々と上がる。

 彼らを避ける様にアンナは進むが。それも再び妨害。

 レオンシオ。


「ここで何をしてるんだい?」 

「……ジェメッリ公園まで散歩ですわ、見て分かりませんか」

「公園まで散歩! ハハッ!」

「「「ハハッ!」」」

「可笑しいことがあって?」

「散歩もいいさ。でもよ」


 先頭にいたレオンシオは大きく指を鳴らした。

 それから、大きく手を広げると、左右に揺れ出す。


「我らが愛しのジェメッリ公園ランフォーリャ一の素敵な公園♪」



 仕掛けてきた……!

 大胆不敵。なんと彼ら屋外で、公衆の面前でミュージカルをしかけてきたのだ。

 成程確かに。サロンと違いここにはバンドメンもいない。こちらの強力な技を封じるための見事な一打。

 高らかな声をレオンシオは続ける。


「通りの並木の美しさ古代の遺跡の柱の数々♪

 なるほッど確かにすばらッしき公園♪

 誰もッが笑顔になッるこのメリック公園♪」


 レオンシオはその場でスキップをするような動作をする。


「確かに散歩も素晴らしい♪

 ッでもただ歩くだけじゃもったいない!♪」


 レオンシオの背後にいた、金魚のフン達が順十に一歩前に出る。


「天気のいい日にゃ広場で玉蹴り♪」

「池に飛び込んで水遊び♪」

「腹が減ったら出店で買い食い♪」

「「「「貴族の女じゃ出来やしない♪」」」」


 それから、からかう様にアンナ達の周りをグルグルと回り始める。


「我らが愛しの♪」

「「「「ジェメッリ公園♪」」」」

「ランフォーリャ一の♪」

「「「「素敵な公園♪」」」」

「散歩もいいけど♪」

「他にもたくさん♪」

「楽しみいっぱい♪」

「「「「でも!♪」」」」


 ピッタリと立ち止まったレオンシオ達は、軽快なステップを刻んでから。



「「「「貴族の女じゃ出来やしない♪」」」」



 空に顔を向け高々と吠えたのだった。

 それから周囲で硬直していた通行人達に、うやうやしく頭を下げていた。

 まばらな拍手が飛んでくるなか、アンナは冷や汗を滲ませていた。



 公衆の面前であそこまで見事にやり遂げるとは。


 実のところ、アンナも外でやろうか考えた事はあった。だが、安っぽい羞恥心がその考えを撤廃させていたのだ。

 だが、レオンシオは見事にやり抜いた。

 怖気づいては、負けだ。

 確かに今はバンドメンはいない。しかし、アンナ達もミュージカルの腕は実戦の中で確実に磨いてきたのだ。

 アンナは腰巾着共に目くばせする。彼女たちも覚悟を決めていた。



 こうなれば、アドリブ。



「あぁら」


 と、声だかに言ったアンナはズイっとレオンシオに近づく。


 彼は、僅かだが身を引いた。


 そのちょっとした動作。

 それはアンナ達の行動を予想していなかったのを知らしめるようなもの。

 自らのミスに気がついたレオンシオだが、もう遅い。


 次は、アンナ達の番である。


「貴族の女じゃ楽しめないというのは、どういうことかしら?」


 僅かな動揺を現しながら、金魚のフンは動く。


「そりゃあ。見れば分かるだろ」

「手に持った日傘」

「長いスカート」              

「脇に抱えたバック」

「ふふん、それだけ?」

「ど、どういう意味さ」


 アンナは、腰巾着に再び目くばせ。

 小さく頷いてから、しなやかに歩きはじめる。


「私達は~麗しき貴族~♪

 その名に恥じぬ美しき清楚な女~~♪」


 優雅に歌い上げながら、周囲で硬直したままの通行人達にお辞儀をしたり手を振ったりする。

 ピタリと、レオンシオ達に背を向けて立ち止まる。


「だけど!♪」


 と力強く言ってから、振り返る。同時、手に持っていた傘を放り投げてしまった。

 宙を舞う傘のした、アンナは力強く歌い上げる。


「私たっちは貴族の前にこのまッちの人間♪

 麗しき貴族の前に誇りたっかっきランフォーリャの女!♪」


 手拍子二回。


「緑の大地に足踏みしめ立つ力強いランフォーリャの女!♪」


 今度は腰巾着達もも一斉に傘や脇に抱えたバックを放りなげ、軽快に靴音を鳴らしながらアンナと並び立つ。

 同時にスカートを手に持ち、軽快に靡かせながらステップを踏む。


「この街の女なら遊びまわることだってあるさ♪

 この公園は私たちのもの♪」


 揃いの手拍子二回。


「水に飛び込んで♪

 買い食いたくさん♪

 玉蹴りだって余裕で出来ちゃう♪

 なぜなら♪」



「「「私達は貴族の前に♪

   私達は誇りたっかっきランフォーリャの女♪!」」」



 同時、足を鳴らしポーズ。

 静寂の後の拍手は、先ほどよりも数が増えていた。

 それに頭を下げながら、アンナはレオンシオを見る。

 悔しそうな彼の顔を見て、アンナ微笑んだ。


「では、私達は散歩の続きがありますので。皆さまもごゆっくり」





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