出会い
大人の汚い感情を私は知って居る。
後悔より苦痛だった。
でも、お母さんだけは違う。
朝から晩まで隣町で働いて私を育ててくれているから。
「この村で働けばいいのに」とお母さん言ったら悲しい顔で「この村に住めてる事だけでありがたいと思いなさい。」と毎回返して来る。
あの悲劇が起こるまでは、意味が分からなかった。
ある晩の事だった。
お母さんの泣き声が聞こえて玄関のドアを少し開けた。
すると、知ら無い男性とお母さんが喋っていた。
でも泣いている。
「お願いします…どうか私を殺さないで下さい…!」
『うるせぇ、泣くんじゃねぇよ。』
(お母さん…が殺される…。)
『罪人の妻だろうが!お前はこの村の掟に反した男の妻だ。だから殺す。この村で生活出来たんだからいいだろ!』
(ゴツン)
鈍い音が聞こえる。
すると、お母さんは口から血を吐いて倒れた。
「…止めて…私には子供が…いるの…お腹の中にも…」
『此奴、身籠ってやがるな。罪人の妻は一人しか育ててはならんのにな。』
知ら無い男性はお母さんの首を絞めあげた。
(止めて!でも、足が…)
「うっぐっ…あぁ…」
お母さんの体が宙に浮く。
『お前は死ぬべき人間だ。』
「ゴボォ…アグッ…ギィィ……………」
(ドサッ)
お母さんが地面に倒れた。
死んじゃったの?一人にしないで!
『死んだか。』
「お母さんを殺してなによ!悪い事をしたの?ねぇ!」
足が勝手に動いて知ら無い男性の前に立っていた。
『なんだよ。この女の子供かよ…チッ。』
(ゴツッ)
「っ…私…ま…で…」
足で頭を蹴られて意識が消えた。
暗い…ここは何処…
嫌。私を置いていかないでよ。
お母さん…。
怖いよ…。