5:なんかすごい物拾ってきた
・クリスマスパーティー用のおつかいに行った娘が、なんかすごい物を持って帰ってきちゃう話
リクエストありがとうございました。
娘がクリスマスのおつかいから帰ってきた。
まだ小さな、八才になったばかりの娘だったから、クッキーをひとりで買い物にいけるかなってすごく心配していたのだけど。
その娘は、なんかすごい物を持って帰ってきた。
それを見たわたしは、唖然とした。
「ちょっと、あの、なっちゃん、なにそれ」
「拾ったのー」
なんかすごい物は全長七メートルはあるだろう。
なんだこれ、すごい、なんかすごい。
「え、ていうかそれ、なっちゃん、重くないの? よく持てるね?」
「すごく軽いのー」
「なにそれすごい」
ほんとだ、発泡スチロールのようにひょいひょいと抱えている。
うちのなっちゃんは別に大剛力というわけではない。
ただ普通の八才の女の子なのだ。なのだけど。
「ていうかなっちゃん、それどこで拾ったの」
「セブンイレブンー」
「コンビニにないよ!? 絶対にないよ!?」
しかも黒々として黒光りしているし……。
なんなのこれ、切れ目のようなものも入っているし。
「なっちゃん、それをどうするつもりなの」
「屋根の上につけるのー」
「煙突には見えないよ! まるで砲台だよ!」
先ほどからなっちゃんが抱えているなんかすごい物は、どっくんどっくんと脈動しているようにすら見える。
なんだこれどういうことなんだ。
ていうか生きているの……? なんかすごい……。
「なっちゃん、それ捨ててこようよ」
「やなのー、うちのなのー」
捨ててこようよ、と言った直後だ。
そのなんかすごい物の先端がぱかりと開き、三百本ぐらいの触手がうねうねと這い回り出す。
床が粘液まみれだ……。
「なっちゃん、とにかくそのなんかすごいの、おうちに入れちゃだめだよ」
「なんでー?」
「いやだって怖いよ触手とか……。なんかすごいし……。我が家の平和が脅かされるよ……」
「そんなことないのー」
いやだって、その触手があちこちから出現して、なんかもうイソギンチャクみたいになっているし……。
しかも触手の先端に爪のようなものとかあるし……。
ひとつの触手から噴き出しているレーザーが床を貫いているし……。
「どう考えても地球外生命体だよ、クリスマス関係ないよ、なっちゃんわたし今、ちょっと命の危機を感じているよ」
「平気なのー」
その触手の一本が我が娘の耳にうねうねと入り込んでいるし……。
なんなのこれ、どうすればいいの、警察呼べばいいの?
「な、なっちゃん、とにかくそれ、どこかに捨ててこようよ」
「だめなのー」
「だめじゃなくて」
「もうとっくに ておくれ なのー」
「なっちゃ――」
八才になるわたしの娘が、クリスマスになんかすごい物を拾ってきた。
そこから先、わたしたちの記憶は、ない――。