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4:さぬきオンライン


 ――さぬきオンライン。


 ほぼ既存のオンラインゲームと変わらないシステム、

 変わらない要素、変わらないストーリーを持っていたVRMMOゲームなのだが。


 ただひとつ、たったひとつだけ、強烈な個性を持ったものがあった。

 さぬきオンライン。

 それはゲーム中の様々な場所に、『うどん』が絡むのであった。


 まず最初のチュートリアルがある。

 そこでプレイヤーは『うどんを持ってきてくれ』と街の衛兵に頼まれる。

 まあ腹が減ったのだろう。わかる。

 ありがちなクエストだ。なぜうどんなのかは疑問だが。


「ありがとう! うどんを食べたかったんだ!」とにこやかに頭を下げられる。

 まあ人助けしたならいいか……だ。


 そして次に街の問題を解決するところがある。

 そこでは、『うどん党』と『そば党』が争い合っていると言う。

 この辺りでプレイヤーは「……うん?」と首をひねり出す。

 あれ、このゲームなんか、おかしくね? と。


 次のイベントだ。

 そこでは必須イベントとして『うどんスキル』の習得が導入されている。

 うどんを食べることによって、キャラクターのパラメータが一時的にあがるのだ。

『食事』という、よくあるシステムだ。

 徐々にプレイヤーは調教されてゆく。


 うどんの種類は多岐に渡る。

 実に様々なうどんが、実装されているのだ。

 そしてそのうどんは、各クエストで密接に関わる。

『やくそう』とか『ポーション』とか『クリスタル』とかそんな感じで、本当に多く『うどん』が登場する。

 この辺りだとプレイヤーの脳内にはもう、疑問はなくなってくる。


 初心者が上級者に質問すると、こうだ。


「今、攻撃魔術師を目指しているんですけど、どういうおうどんを食べたほうがいいですか?」

「そうだな、魔術師か。だったらまずは釜玉うどんがいいだろうな。トッピングは明太子をメインにするといい。戦闘前に釜玉うどんを食べて、MATが50を越えたらきつねうどんにチェンジしろ。肉カレーもいいが、あれは多少値段が張るからな。コシは『硬め』だ。汁まで飲むといいぞ」

「なるほど、わかりました!」


 こんな会話が当たり前に行なわれている。

 VRMMO内で、だ。


 これこそがさぬきオンラインである。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 ゲーム中のイベントとして、うどん大会というものがある。

 これは週一で開催され、おうどんスキルが高いもの同士が、競うのだ。

 様々なレシピにオリジナルレシピが開催され、さぬきオンラインのうどん研究はとどまることを知らない。

 本物のうどん職人が、本職のためにゲームをプレイするというレベルだ。


 そんな中、ひとりの男がいた。

 彼はこの『さぬきオンライン』において、あえて『そうめん』でうどん大会に出場をしようと決めた強者だった。

 さぬきオンラインにおいてそうめんとは、不遇職ならぬ不遇食である。


 仮に街の衛兵にうどんの代わりに『そうめん』を差し入れたとする。

 すると、こういうリアクションを取られる。


「そうめええええええん!? はああああああああああ!?」


 えっ、である。

 びっくりである。


「おまえ、この、白くて細いのを食えっつーのおおおお!? なめてんのおおおおおおお!?」である。


 この男、心からそうめんを愛していた。

 だからこそ、衛兵のこのリアクションには涙した。

 なぜそんなにそうめんをバカにするのだ。

 開発者め、みていろよ。

 もうやるしかねえ。


 こうして男は決意した。

 このうどん隆盛のさぬきオンラインにおいて、そうめんで無双してやるのだ、と。



 これがさぬきオンラインにおいて、

 開発者のバランス調整にもめげず、

 後に『そうめん一強時代』を築く男の物語である――。

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