11:【次はいつ帰って来るの?】
ヒナさん「がんばれ♡ がんばれ♡」
シュルツ「どうしたの急に」
ヒナさん「わたし、藤井ヒナは、世界中の皆さまにエールを送っています♡」
シュルツ「どうしたの急に。清き一票がほしいの?」
ヒナさん「違いますよお、サンタさんですよお。今のは激励をプレゼントしていたんですー」
シュルツ「ボクそんなふしだらな格好をしたミニスカサンタさんを、サンタさんとは認めないよ」
ヒナさん「そんなことより、わたしの過去が皆さまに見られちゃいましたね」
シュルツ「聞いてもいないのに、よく自分から語っているけどね、キミ」
ヒナさん「わたし、中学生時代に一度だけ恋をしてしまったんです」
シュルツ「ほら来た。ほら来た」
ヒナさん「相手はとっても可愛らしい女の子でした」
シュルツ「相手が女子だからって、もうボクは微塵も驚いたりしないけどね」
ヒナさん「でもそれだけじゃありません。彼女はなにかにとても傷ついていたんです。だからわたしは彼女の心の傷を埋めてあげたいと思ったんです」
シュルツ「エゴだよ、それは」
ヒナさん「とっても可愛い子が! とっても傷ついていて! なのに明るく振舞っていて! そんなのを見て、捨て置けますか!? わたしにはできません、わたしにはできませんよ!」
シュルツ「つまりタイプだったと」
ヒナさん「超ドストライクでしたね」
シュルツ「ヒナさんの扱い方のレベルがアップした気がする」
ヒナさん「当時はもちろん自分は現実世界で恋をしちゃだめだって言い聞かせていたんですけど、まあでも、傷ついた女の子を見過ごすなんて、罪なことですからね」
シュルツ「愛欲に負けたんだね」
ヒナさん「それはちょっと不本意な言われ方な気がします」
シュルツ「ヒナさんの扱い方がレベルダウンしたかな」
ヒナさん「シュルツさんはいつでもレベルマックスですよ?」
シュルツ「それはそれで御免こうむるな……」
ヒナさん「告白しようかどうしようか、一ヶ月ぐらいは悩んで、ずっと悶々としていたんですよ。あの子が幸せなら幸せで、わたしは別にいいかなーって思っていたので、様子を窺っていたんです」
シュルツ「はあ」
ヒナさん「でもあの子は! なんだか辛そうな顔をしていて!」
シュルツ「はあ」
ヒナさん「だからもう告白してしまったんです。計画性もなにもなく、ただ勢いとパッションだけに任せた告白です。自分でもどうだろうって思ったんですが、もう想いが抑え切れなかったんです」
シュルツ「はあ」
ヒナさん「そうしたら、まさかまさかの、オッケーしてもらいまして……。わたしは頭が真っ白になっちゃいました。あんなに可愛い子とお付き合いができるだなんて……」
シュルツ「小学校低学年で相手の家庭を崩壊させたアマの言うこたぁ、思えねえな」
ヒナさん「それからの日々は、とても幸せでした」
シュルツ「ヒナさん不幸だった時期とかあるの?」
ヒナさん「ありますよ、わたしにだって! ……あります、よ? ……ある、と思います……」
シュルツ「いやまあ、それはいいけどさ」
ヒナさん「というわけで、お手紙が届いています」
シュルツ「だからいつの間に!?」
ヒナさん「お便りは【人脈は財産だ】さんからです。ありがとうございます」
シュルツ「どこでこのラジオ放送しているんだろ……。妨害電波とか発せないかな……」
ヒナさん「【次はいつ帰って来るの?】」
シュルツ「はい」
ヒナさん「はい」
シュルツ「え、これだけ?」
ヒナさん「はい」
シュルツ「すごい、こう、コメントしづらいんだけど」
ヒナさん「わたし、ショウコちゃんと約束したんです」
シュルツ「【人脈は財産だ】さん、ね」
ヒナさん「このままだとわたしがダメになるからって、わたしの友達が百人になるまで、ショウコちゃんともうふたりっきりで会うのはやめよう、って。ショウコちゃんに言われて……、だから約束したんです。わたしはひとりでもやっていけるよ、って……」
シュルツ「【人脈は財産だ】さん、からのおはがきだからね」
ヒナさん「わたし頑張って、友達を作ろうって決めて、高校でもすっごく努力をしたんです……。でも、だめなんです! 友達のままでいようって思っているのに、すぐに好きになっちゃうんです! 友達のままじゃいられないんです! でも、わたし頑張ったんですよ!?」
シュルツ「いや、うん。それで、何人の友達がいるの」
ヒナさん「高校に入ってからひとりできたので! 今、友達が四人もいます! 四人も! すごいでしょう! こないだショウコちゃんに友達がひとりできたよーって報告したら、すごく優しい声で『そうだねー、あとちょっとだねー』って言ってくれたんですよ! だから大丈夫だよショウコちゃん、あとたったの九十六人だよ! わたしがんばるからね!」
シュルツ「【人脈は財産】さん、ヒナさんは死ぬまで帰れません」
ヒナさん「二年でひとり増えたので、その計算だとあとたったの192年です!」
シュルツ「死ぬよ」
ヒナさん「シュルツさんが友だちになってくださったら、五人になりますよ!? シュルツさん、わたしとお友達から始めませんか?」
シュルツ「No Thank you」