後編
「よし! トイレに行こう。ちょうど、お父さんもオシッコがしたかったところだ」
どうやら男同士の話し合いは、トイレでするようです。
ワクワクしながら、お父さんに着いて行くと、お父さんはマー君を一緒にトイレにいれてドアを閉めました。
そしてマー君をお父さんの前に立たせました。そこは、便器よりも奥で便器のタンクがあるのでとても狭いです。
でも、小さなマー君は困ることもなくその場所に立つことができました。
お父さんは真剣な顔のマー君を見ると、マー君よりも真剣な顔になっていいました。
「よし、男の秘密を教えてやるからな。これが出来たら、お前も一人前の男だ!」
そう言うと、ズボンのファスナーをおろして、ズボンの中からお父さんのチンチンを出しました。
なんとズボンを下ろさないどころか、お父さんはズボンをはいたままチンチンを出していたのです。
マー君は自分のズボンを見ました。
お父さんのズボンにはファスナーがありますが、自分のズボンにはありません。
どんなに男になりたくても、お父さんのようなズボンをはかないとできないことなのです。
せっかくお父さんが自分を男と認めてくれたのに、どんどん悲しくなってしまいました。
目からは涙が溢れ出してきました。
「どうした? 何で泣いてるんだ?」
「だって、だって・・・・・・。ボクの、ズボンは、お父さんみたいに、チンチンを、だせないんだ」
「? どうして?」
オシッコをしおわって、ズボンにチンチンをしまったお父さんは、不思議そうに言いました。言いながら、トイレの水を流します。
その水は、大きな渦を巻きながら全てを流してしまいます。
マー君は、お父さんのようできない悲しい気持ちも流れてくれたらいいのにと思いました。
お父さんはドアを開けると廊下にマー君を呼びました。
そして、座り込んでマー君と目を合わせてくれました。
「マー君、ファスナーがなくてもできる方法があるんだ。お父さんがその方法を教えてあげよう」
お父さんの言葉にマー君はうれしくなりました。
ファスナーがなくても、ズボンを下ろさないでオシッコができる方法があるなんて、一体どんな方法なのでしょう。
お父さんは、マー君のズボンを少しだけ下げました。
ほんの少しだけ。
そして、マー君のチンチンをズボンの上から出して見せました。
「ほら、これならお父さんのように、ズボンを脱がなくてもできるだろ」
なんてすごいことでしょう。
マー君は、びっくりすると同時に、お父さんが物知り博士だったことも知りました。
それからは、オシッコのたびにズボンを少しだけ下げてみました。
最初は、なかなか上手にできませんでしたが、毎日毎回一生懸命考えて、頑張ったらできるようになりました。
ウンチも、全部脱がなくてもできるようになりました。
できるようになって、またひとつお兄さんになれた気がしました。
「ママ! ボクね、パンツを脱がなくてもオシッコもウンチもできるんだよ! 今もね、ウンチをしてきたよ!」
大きく胸を張って、ママに報告しました。
するとママが、ニッコリ笑って言いました。
「ウンチさんはマー君と同じようにお洋服を着ていたかしら?」
それを聞いて、またしてもびっくりです。
「ウンチさんがお洋服を着ている」という言葉が頭から離れなくなってしまいました。
さっきは、パンツを下ろすことで忙しくて、ウンチが洋服を着ていたかどうかまで見ていなかったのです。
マー君は、次のウンチのときはしっかりと見てみようと思いました。
そして、次のウンチのときです。
お尻から元気に出てきたウンチが水の中に流れるまえに、マー君は便器をのぞきこみました。
でも、ウンチはママが言っていたのとは違って、洋服など着ていませんでした。
「ママ、ウンチでたよ」
本当なら、お腹から出てきたウンチは洋服を着ているはずだと思っていたマー君は、元気がありません。
「そう、それでウンチはお洋服を着てたかしら?」
ママは今度も同じことを聞いてきました。
マー君は大きくクビを左右に振りました。
「ううん。ウンチさんはお洋服を着て無かったよ」
なんだか哀しくなってしまいました。
「そう、お出かけするのに、お洋服を着てなかったのか。きっと、あわてんぼうのウンチさんだったのね。マー君は、ちゃんとお洋服を着てからおでかけしましょうね」
ママの笑顔は最高に優しくて、マー君の哀しかった心を全部やわらかくしてくれました。
マー君は、「うん!」と元気に答えました。
その後も、マー君のウンチは洋服をきてバイバイすることはありません。
それでも、マー君はウンチをするとかならず、便器に向かってこういいます。
「お出かけするときは、ちゃんとお洋服を着てないとだめなんだよ。風邪引くからね」
そして、お水を流しながら
「バイバイ」
と言うのでした。
エンド
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