第3話 探索
小鳥の囀りが聞こえる。薄っすらと木々の間から光が零れる。固まってしまった関節を伸ばすとバキバキと心地よい音が聞こえる。まだ完全に覚醒していない頭を頬を叩くことで覚醒させる。
「……やっぱり夢じゃなかったんだ。」
目の前に見える光景を前に少し落ち込む。だけどその前にやらなければならない事がある。
よし、と力んだ瞬間なんとも気の抜けた音が鳴った。
「……早めに飯探さんと。」
荷物を全てカバンに詰め込み寝ていた場所を後にする。その際地面に印をつけておく。これで道に迷った時は何とかなる筈だ。
そうしている事早10分。遂にリンゴを見つけた。唯このリンゴ、若干輝いて見えるんだが……まぁ気のせいだろう。試しに一口齧ってみる。うん、美味い。もう一個、もう一個と次々食べていく。
粗方食べ終わった後、改めて周りを見渡すとリンゴの他にもミカンやブドウがあった。しかもどれも輝いて見える。それらを一つずつ口に放り込む。どれも美味い。
制服を脱ぎそこに丈夫そうなリンゴとミカンを詰め込みさっきまで寝ていた場所に持ち帰る。お腹一杯に食べられたお蔭か少し体が軽くなった気がする。うん、最高に絶好調だ。
拠点に戻りまず最初にやったことは食べ物を保管する場所を作ることだ。これが無きゃ一々10分も歩いて取りに行かなくちゃならなくなる。
まず周りに落ちているある程度長い木の枝を数本拾ってきてそれを基盤とする。次にそこそこ長い枝を何本か基盤にした枝の上に並べる。最後に上に申し訳ない程度に葉っぱを載せる。後は丸っこい石を床に並べれば完成だ。サバイバルやっている人が見たらキレそうだが、全く知識の無い奴がやったんだ。多少は見逃してほしい。
次にルーズリーフを使ってマッピングを開始する。まずはここを拠点として取敢えずルーズリーフが埋まるまでやる事にした。
先ずは拠点周りだ。此処には特に書く事は無い。
次に少し大きく回ってみる。やはり何も無し。そんな感じに続けていく事早1時間。ルーズリーフ1枚目が丸々埋まったので整理の為戻る事にした。
拠点の出口から見て真っ直ぐにはまだ何も見つかっていない。
右側には先程食事をした果物が生えている場所が広範囲に渡りあった。
左側には綺麗な川があり、魚が泳いでいるのを確認した。
後ろ側は大きな原っぱがあるだけだ。
粗方整理が終わり時計を見ると既に昼の2時を回っていた。よっぽど集中していたからかお腹はそんなに空いていない。だけど食べないと損しそうだからリンゴを2個ほどカバンに詰め散策を再開する。
そんな感じで散策が終了したのが午後5時だった。帰り道で魚を取っておけばよかったと少し後悔するも、時は戻らないので諦める事にした。夕飯はリンゴとミカンと新たに発見した梨だった。
それから数日、午前中に夕飯分の魚を石で囲った池に誘導し、午後に周囲の散策をして過ごした。
*
「ハァ、ハァ、ハァ……。」
黒い影が今にも倒れそうな歩みで森を歩いていく。
「もう……ダ、メ。」
そう言い残すと黒い影はその場に崩れ落ちた。
展開が速い?それはきっと気のせい。