第21話 戦闘開始
それは突如起こった。倞達が陣地を構えていると前方から土煙が押し寄せてくる。
「総員戦闘準備!」
騎士団長はすぐさま号令を掛ける。突如の奇襲を物ともしないその姿は流石騎士団長と言った所か。
倞達冒険者も各々の得物を持ち臨戦態勢に入る。
暫くの静寂。そして誰かが叫ぶ。
「――来たぞ!」
土煙の先端に黒い狼の様な魔獣が先陣を切ってやって来る。その威圧感に冒険者達は一瞬足が竦む。そんな冒険者達を見て騎士団長は、腰に下げた剣を掲げ、
「突撃ィーッ!」
号令を掛ける。冒険者達は雄叫びを上げ迫ってくる魔獣に向かって、ある者は自慢の弓で攻撃し、ある者は魔法で先頭の魔獣を焼き払い、ある者は身一つで魔獣に向かいその首と胴を永遠に別れさせる。
倞達は後方で待機し、次の魔方陣を構築していく。
「――なぁ、此れが本隊だと思うか?」
「――いいや、これは斥候だろうな。本隊が魔獣だけと言うのは考えにくい。奥にまだ何かが居る筈だ。」
そう言うリリスは目を細め後方を見透かすように見る。
「――ッ!敵後方より本隊と思わしき部隊が展開中!総員一旦後退し体勢を立て直せ!」
リリスはそう言うと倞の方を向き、
「一発デカいのをかましてくれないか?」
*
「こんな強いとか聞いてねぇーぞ!」
ランボは迫り来る魔獣を一刀の元切り捨てる。そんな彼から少し離れた所で、マヤとニイルが同じく魔獣を確実に仕留めていく。
「こんな魔獣いたっけ!?」
「……無駄口叩いていないでサッサと手を動かす。」
「うい。」
マヤの叱責にニイルは反省する素振りを見せない。そんな風に二人は緊張感の欠片も感じさせない戦いをしているが、そんな彼等から少し離れた場所で戦っている冒険者は既に少なくない数が傷つき戦闘不能へと陥っていた。
「ランボ!此奴ら何か強くね!?」
「俺に聞かれても知らねぇーよ!少なくとも『未開の森』にいるベオウルフよりかは強いって事ぐらいしか……な!おいアオバ!そっちはどうだ!?」
「無論問題無いで御座る。」
チンッ、チンッと音がする毎にアオバの周りの魔獣が真っ二つになっていく。
「拙者の事より負傷した者の心配を。」
アオバはそう言うと魔獣に向かって駆け出す。ランボは軽く舌打ちをして、
「マヤとニイルはアオバと一緒に戦線を上げてくれ!俺は負傷者の方へ行く!」
そう言い残すとランボは手にしている剣を地面に突き刺す。すると地面が隆起し始め負傷者を高い所に上げる。
「――俺にこれを使わせた事を後悔させてやるぞ。」
*
「あれが『鉄壁』のランボの戦闘スタイルかぁ。負傷者を上に上げてなるべく魔獣からの攻撃に晒す事の無い様に守り抜くって言う。しかもその間は拳一つで殴り合いだろ?……俺には絶対無理だね。」
「良いから黙ってアオバについて行くよ。」
「あいあい。」
マヤとニイルはアオバについて行き向かって来る魔獣を片っ端から魔法を交えて殺していく。
その際に出来る僅かな隙をもう一人がカバーすると言う戦法を取り、より安全に魔法を使う事が出来る。
「それにしてもキリがねぇーぞ、これ。」
ニイルは溜息を吐きながら『ファイヤーボール』を放ち魔獣を燃やす。
「一応終わりは見えてきた。それまでの辛抱。」
マヤは『バーニングボール』を放ち射線上にいた魔獣を木端微塵にする。
「ったく。……それにしてもアオバの周り全く魔獣が寄りついてねぇーぞ。」
ニイルはそう言いアオバの方を向く。チンッ、チンッ、と言う音が戦場に鳴り響く。その度に魔獣から血飛沫が飛び、胴が宙を舞う。
「『絶刀』の名は伊達じゃない……か。」
ニイルの呟く様なその言葉は魔獣の咆哮により誰の耳にも届く事は無かった。
*
「広域殲滅行くぞ!」
倞は瞬時に魔方陣を構築、展開する。その魔方陣に書かれている文字は「火」「槍」「爆発」「空中」「千発」――
「『サウザントバーニングランスver.2』!!」
発動。直後、空中に多数の魔方陣が展開される。その一つ一つから炎の槍が飛び出す。
「発射!」
その声と共に轟音が轟き土煙が辺りを覆う。暫くした後、魔方陣は役目を終え消滅していく。土煙が晴れた先には無数の魔獣だったモノの残骸が有るのみだった。
皆が唖然とする中、倞は前方を睨む。
「敵本隊が来るぞ!怪我をした奴は後方で待機!まだ魔力が残っている奴は出来るだけ大きい奴を用意しろ!かますぞ!」
倞は隊を立て直し、次の攻撃に備える。
――戦いは始まったばかりだ。
『サウザントバーニングランスver.2』:「火」「槍」「爆発」「空中」「千発」
『サウザントバーニングランス』の改良型。空中から射出する事により、より殲滅力が上がった。




