第2話 状況確認
澄み渡る青い空。流れるように浮かぶ白い雲。風は虫の歌を耳元に届ける。……あ、この鳴き声はリオック……では無いな。てかリオックって鳴いたか? 春の土の匂いが鼻を擽る。目を横に向けると茶色いぼやけた物体が見える。これはつくしかな? 背中には芝生の気持ちよい感触が眠気を誘う。そこまで来て違和感を感じ、ガバッと上半身を起こす。見える景色は当たり一面の野原。ビルや電信柱等が無い、真っさらなそこはこの世のに存在するのかと言うほど広い。その更に奥には薄っすらとだが壁のようなものが見える。そしてふと、上を見るとそこには昼間なのに大きな月がはっきりと見えた。
そこで俺は大きく息を吸い込む。そして──。
「此処は何処なんだぁぁぁ!!!!」
*
一通り叫んだ後、自分がおかれた状況を確認する事にした。
・屋上から落下
・目が覚めたら変な場所
・ついでに空には大きな月?みたいなモノがある
――あれ?此処地球じゃなくね?てか俺死んでね?
困ったなぁ、と何時もの癖で眼鏡の縁をクイッと人差し指で上げようとしたら本来ある筈の眼鏡が無い事に気が付いた。
「あれ? 眼鏡が無いのに見えてる?」
辺りを探すと通学バックと眼鏡を見つけた。
落ちていた眼鏡に土が付いてないか確認し、掛けるが目の前がぼやけて見えた。外すとクッキリ見える。掛ける。外す。掛ける。外すと見せかけて掛ける。
何回か繰り返したところで一つの答えに行き着いた。
「うぉぉぉ! 目が良くなってる!」
一通り喜び興奮の余り不思議な踊りをした後、今度は自分の身の回りの物を確認する事にした。
眼鏡
財布×2
携帯
手帳×2
時計(太陽光で動くやつ。とても高かった)
家の鍵
タブレットPC
イヤホン
ハンカチ×2
ティッシュ×3
シャーペン付きボールペン×2
通学バック
筆箱(中に諸々入っていたりする)
ルーズリーフ×300枚
バインダー×2
大容量充電器
折畳み傘
水筒
お守り
万能ナイフ×2
ライター×2
折り畳み式スコップ
のど飴
そして今着ている冬用の制服
万能ナイフやらライターやらは夏休みになると何処かの山でサバイバル生活をすることが趣味の友達から譲り受けた物だ。その時、「何時かは一緒にサバイバルやろうな!」と言われたが俺にはそんなそんな度胸は無いと断っておいた。
財布が二つ有る理由はゲーセン用だ。ゲーセンは100円単位の為、50円とか邪魔になる。その為、余分なお金が入っていないこの財布は結構重宝している。……その所為で気が付いたら一万円吹っ飛んだりした時が有ったりしてるけど。
そんな事より、携帯を確認するが圏外だったが充電の所が何もつけてないはずなのに充電中のマークが付いていた。
「うーん……歩けば誰か居るかな?」
そう思ったら即行動。携帯の電源を切り、取り敢えず勘に頼り適当に歩いてみる事にした。
*
暫らく歩いていると遠巻きに森が見えてきた。あそこに行けば何かあるかなと思い森に向けて進路を変える。
それにしてもあの大きな月は何なんだろうか。そもそも此処は地球なのだろうか。
一度ネガティブな考えをしちゃうと途端に全ての考えがネガティブな思考になってしまう。気を取り直すように首をブンブン振る。例え地球じゃ無いとすれば帰る方法を探せば良い。何としてでも戻って――戻って何をするんだ? 友達とワイワイ話すのか? 居心地の悪い家に戻るのか? 何時もと変わらない日常を過ごすのか?
そんな考えがふと、頭を過ぎる。
(駄目だ……疲れているからこんな考えばかり浮かぶんだ。寝床を確保してから今日は早く寝よう。そして明日から考えれば良いや)
森の中に入り暫く進むと大きな木の根元に窪みがある場所を見つけた。
「今日はあそこで寝るか。」
そうと決まれば即行動。荷物にあるスコップで窪みの近くに穴を掘る。次にそこ等辺に落ちている燃え易そうな枝などを沢山捜し組み立てる。余った枝は穴から少し離れた所に纏めて置いておく。そして穴の周りに少し大きめな石を探し囲っていく。そして組み立てた枝にライターで火を付けた葉などを入れて点火する。これで俺式の簡易ベースキャンプは完成。本来なら窪みの上に屋根を作りたがったが贅沢は言えまい。
窪みの中で鞄を枕代わりにし寝る体制に入る。中に入っているものの関係で少し寝ずらいが……。まぁ、許容範囲内だろう。
明日はどうなるかそんな事を考えながら俺は意識を飛ばした。