第1話 落ちた先は異世界
乾燥した空気が喉を焼く。呼吸をする度に喉が焼け付くように痛む。髪は汗に濡れ額にへばり付く。手にしているショートソードは刃毀れが激しくもう碌に物を切れる状態ではない。足は疲労の所為で産まれ立ての小鹿のように震えている。魔力の残量も後僅か。
だがそれは相手も同じだ。少年より15メートル程離れた場所には、黒髪の少女がボロボロになりながらも手にしているレイピアの様な物で体を支えている。元はゴスロリ衣装だったであろう服はもう服としての役割を果たしておらず、最低限の部分しか纏っていない。そんな状態の中、少女はクックックとこの状況を楽しんでいるように笑う。――いや、実際に楽しんでいた。
「私と……此処まで戦える……ハァハァ……者が居るとは……ハァハァ……思わなかったよ……。出会った状況が違えば……さぞ良い関係に……ハァハァ……なっただろうに。」
「ハッ、俺としては……どんな……状況でも……ハァハァ……会いたくは……無いが……な。」
お互い息が切れながらも片や嬉しそうに、片や嫌そうに話す。彼等の周りは荒れ果てた大地、一部は灼熱の炎が今でも来る者を拒み、一部では吹雪が吹き荒れる大地と化しそこに居る生命の芽を費やそうとする。だが彼らはそんな物に目を向けない。気にすらしない。彼等が目を向け集中力の全てを向けているのは目の前にいる相手のみ。
「連れない事を……言うもんじゃ……ないよ…………唯もうそろそろ限界かな……。」
少女はレイピアの様な物を引き抜き少年に向ける。少年もショートソードを少女に向ける。
「楽しかったぞ■■■。来世と言うモノがあればまた会いたいものだな。」
「うっせー。こっちはもう会いたくねぇって言ってんだろう。諦めろ■■■■■。」
語り終わった後、言葉は不要だとばかりに彼等は残りの魔力を全て使い一つの巨大な魔方陣を作る。魔方陣からはガラスを引っ掻くような音が発せられる。双方の合図とともに魔方陣を介して現象を呼びを超す。そして世界は真っ白な光に包まれた――――。
*
「って言う夢を見たんだ。」
「はぁ? お前が勇者的なやつ似合うわけねーだろ。やるなら魔王になれよ。」
「よーし、お前がどう思ってるのか大体分かった。今すぐ三途の川に飛び込ませてやるからそこを動くんじゃないぞ?」
「やられてたまるか!?」
「屋上で暴れたら危ないよ?」
学校の屋上で3人の男子が話し合っていた。一人は髪を七三に分けた見るからに頭が良さそうに見える眼鏡。一人はプリンの様な色の悪ぶって見えるツンツン頭。そして肩まで髪が伸びている事を除くと其処ら辺にいる人と見分けが付かなくなりそうな男。まったく関連性が無い様に見える彼等は実は幼稚園の頃からの付き合いだったりする。要は腐れ縁ってものだ。
彼等は学校が終わる度に屋上でこうして駄弁るのが日課とないっていた。そんな中、突如無個性な男――高橋倞は今朝見た夢の話について語りだし、それにツンツン頭――赤城直人がおちょくり眼鏡――加賀洋介が諌める。そんな楽しい日常を過ごしていた。
「あーくそっ、何も本気で腹パンしなくても良いじゃねぇかよ……。」
「あん? 俺は魔王なんだろ? 逆にこんなモノで済んで有難いと思えや。」
「……その性格が魔王だって言うんd「何か言ったか?」滅相もございません!」
「二人とも程々にしなよ? 落ちたらシャレにならないからね?」
そりゃそうだ、と直人と倞は笑いながら肯定する。そして倞は鞄を背負い手摺に寄り掛かる。
その時手摺から変な音が聞こえた。これは不味いと思い離れようとした瞬間、手摺は折れ体は宙に舞った。
(――あぁ、ここで死ぬのかな)
ふとそんな考えが脳裏によぎった瞬間、目の前が真っ暗になった。
因みに主人公はメガネかけてます。
高橋倞 性別:男 年齢:17歳 利き手:右利き 種族:人間 髪:黒色で肩のところまで伸びており、手入れをしていない為ボサボサ 目:黒色