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第63話:不沈の「ダイスケ」、本戦を蹂躙す


 武術大会の本戦会場は、予選の野試合とは打って変わり、王都の貴族や有力者たちも観戦に訪れる華やかな舞台へと移った。  


石造りの巨大な円形闘技場コロシアム。その中心に立つ**エイミー(大介体)**は、己に向けられる数千人の視線を、大介の鋭い眼光で真っ向から受け止めていた。


「本戦第一試合――! 王都守備隊の精鋭、鉄壁のハンス対、謎の巨漢ダイスケ!」


 対戦相手のハンスは、全身を重厚なプレートアーマーで固めた、まさに動く要塞だ。


彼は巨大な盾を構え、大介の体躯を冷静に観察している。


「おい、巨漢。お前の予選での暴れっぷりは聞いた。だが、このハンスの盾を貫けた者は一人もいない。大人しく――」


「……お喋りは終わり? わたくし……俺の拳が、貴方のその『安物』を通すかどうか、試してみればいいわ」


 エイミーは、大介の低い声を響かせながら、静かに構えを取った。


 開始の鐘が鳴ると同時に、ハンスは盾を前面に出して突進してきた。


重装歩兵による「盾の衝撃シールドバッシュ」。並の戦士なら骨ごと砕かれる一撃だ。


 だが、エイミーの意識の中では、大介から教わった「打撃の極意」と、自身の「精密な魔力の導き」が火花を散らして融合していた。


(大介さんは言っていたわ。力で打つのではない、体重と魔力を『一点』に凝縮して、相手の構造を打ち砕くのだと……!)


 エイミーは大介の逞しい脚を踏み込み、床の石畳を粉砕。突進してくる盾の、わずかに魔力の流れが滞る中心点を見極めた。


「――貫きなさい!」


 ドォォォォン!!


 闘技場全体が震えるような衝撃音。  


大介の拳がハンスの盾に触れた瞬間、頑強な鋼鉄の盾が、まるでガラスのように四散した。


それだけではない。衝撃は盾を突き抜け、ハンスの重装鎧の胸当てを大きく凹ませ、彼を数十メートル後方へ、壁まで一直線に吹き飛ばした。


「……なっ!? 盾ごと、一撃だと!?」

「魔法か? いや、魔力の放出は最小限だったぞ。純粋な『打法』だというのか!」


 観客席がどよめきに包まれる。騎士団の関係者たちが、驚愕のあまり立ち上がった。


 続く第二、第三試合。エイミー(大介体)は、一切の武器を使わず、素手だけで並み居る強豪を退けていった。


 魔法騎士が放つ火炎を、大介の大きな掌による「風圧」だけでかき消し。  


高速の剣士の刺突を、指先二本で挟んで受け止め、そのまま剣をへし折る。


 その姿は、もはや「武術」という枠を超えていた。  


観客たちは、目の前の大男が放つ圧倒的な「格の違い」に、次第に歓声すら忘れ、ただただ息を呑んで見守るしかなかった。


 エイミーは、大介の体の底から湧き上がる強大なエネルギーを、完全に御し始めていた。


大介の肉体が持つ野生の力と、エイミーが持つ魔導の才。この二つが噛み合った時、リディアの戦士たちに勝ち目はなかった。


「……次。決勝の相手は、誰かしら」


 エイミーは、返り血一つ付いていない大介の拳を眺めながら、不敵に言い放った。  


その視線の先には、特別席からこちらを射抜くような目で見つめる、ある「若き騎士」の姿があった。

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