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第57話:高飛車な魔女の強行軍

地球側、新宿ダンジョン管理ギルド。  


**大介(エイミー体)**は、耳を隠すように整えた銀髪を指先で弄りながら、周囲を圧するような足取りで受付カウンターへ歩み寄った。


 対面するのは、指先でペンを回しながら電卓を叩く、銭ゲバ受付嬢の北川さやかだ。


大介は、鏡の前で練習した通りの不遜な笑みを浮かべ、カウンターに肘をついた。


「北川。……わたくしを待たせるとは、いい度胸ね。今すぐ現金化できる、最高難度の『特注オーダー』を寄こしなさい。……そうね、第十四層よりさらに下。十五、十六層へ単独で潜るわ」


 北川はピタリとペンを止め、眼鏡の奥の瞳をわずかに見開いた。


周囲にいた冒険者たちからも、ざわめきが上がる。


「……本気? エイミーちゃん、あそこはBランクの連携済みパーティーが前提のエリアよ。いくら私でも、ソロの魔法使いをあんな死地に送ったなんてバレたら、始末書じゃ済まないわ」


「ふん……。外野の心配など不要よ。わたくしを誰だと思っているのかしら? 仲介料はいつもの通り、3割。それだけあれば、貴女の汚い口を塞ぐには十分でしょう?」


 北川の表情が、一瞬で「銭ゲバの笑み」に変わった。


「……話が早くて助かるわ! 確かに、3割も貰えるならリスクを負う価値はあるわね。上には『有望な特待生による特別適性試験』って名目で、無理やり許可をねじ込んでおくわ」


 北川は慣れた手つきで、本来なら即座に却下されるはずの無謀な申請をシステムに通した。


大介は内心で(よし、この銭ゲバ女、金さえ積めば本当に話が早いぜ)と毒づきつつ、提示された依頼票を奪い取った。


「製薬会社からの特急依頼、**第十五層『剛鉄蜘蛛の糸』**と、**十六層『白銀トカゲの尾』**よ。……死んでも私のせいじゃないわよ、エイミー様?」


「当然よ。わたくしが戻るまでに、報酬の振込準備を済ませておくことね」


 大介は翻したローブの裾をなびかせ、ゲートへと向かった。


背後では「あの子、自殺志願者か?」

「いや、昨日全系統の適性を見せた例の天才児だぞ」と噂する声が聞こえるが、今の彼にはどうでもいいことだった。


 新宿ダンジョンの深部へと続く階段を降り、第十一層、十二層と、大介は目にも止まらぬ速さで駆け抜けていく。  


道中の魔物は、エイミーの膨大な魔力を乗せた「髪の毛を伸ばす魔法」で沈めていく。


魔力を足に薄く、硬く張り巡らせる身体強化術。大介がリディアで培った格闘技術と、エイミーの無尽蔵の魔力が、本来の持ち主ですら成し得なかった


「近距離で戦える魔法使い」という歪な戦士を作り上げていた。


 しかし、第十四層の境界を越えた瞬間、大介の肌を刺す空気が一変した。

「……ここから先か」


 湿り気を帯びた冷気。そして、壁の奥から響く、巨大な何かが蠢く不快な音。  


Bランクエリア。そこは、これまでの「作業」が通用しない、本当の死地だった。


 大介はニヤリと不敵に口角を上げた。中身が27歳の男である彼の闘争本能が、美少女の体の中で熱く脈打ち始める。


「さあ、見せてやるわ。わたくしが、この世界のルールを書き換える瞬間を」


 銀髪を翻し、大介は第十五層の暗闇へと、迷わず足を踏み入れた。

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