第54話:麻衣の経理・戦略会議
白石商事との交渉を終え、大介がアパートへ戻ると、リビングでは麻衣が数台のモニターと電卓を前に、厳しい表情で数字を弾いていた。
「お兄ちゃん、おかえり! 交渉はどうだった?」
「ああ。卸値15%引きを勝ち取った。ただし、累計取引額が五千万に達するまでは『完全前払い』が条件だ」
「……やっぱりそうきたか。お兄ちゃんの貯金と、この三日間の新宿ダンジョンでの魔石売却益を合わせても、仕入れに回せるのはまだ数百万円単位だよね……」
麻衣はホワイトボードの「換金」という文字に大きくバツ印をつけた。
「前回のオークションは連発はできない。地球側の仕入れ資金はあくまで**『こっちの稼ぎ』**で回さないとダメだよ」
「……ああ。これからはエイミーの金貨には頼らねえ。あいつが命懸けで稼いだもんだしな」
大介の言葉に、麻衣はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「そこで、この『完全前払い』を逆手に取るの。問屋側には『うちはキャッシュで即決する、支払いのいい太客』だと思わせる。その実績を積んで、早急に信用のランクを上げる。一方で、お兄ちゃんはもっと『高回転』で稼いでもらうよ」
麻衣が提示したのは、新宿ダンジョンでの**「受注生産型の素材狩り」**だった。
「リディアトレードの仕入れ資金を確保するために、特定の企業や研究機関が必要としてる魔石や素材をピンポイントで狩って、即日現金化する。その稼ぎをそのまま仕入れにぶち込むの。地球で稼いで、リディアで売る。リディアで稼いだ金貨は、リディアでの拠点拡大や、次の入れ替わりの時の『あっち側での仕入れ』に使う。二つの世界でそれぞれ独立した財布を持つ、**『二眼レフ経営』**だよ!」
「なるほど……。俺が新宿で暴れれば暴れるほど、リディアへの供給量が増えるってわけか。シンプルでいいな」
エイミーは麻衣の熱弁を隣で聞きながら、「地球の商売魔法は、頭をフル回転させなきゃいけないんですね……」と感心しつつも、自分の世界で預かっている金貨の重要性を再認識していた。
新宿で魔石を狩り、問屋へ現金を叩き込む大介。リディアで市場を支配し、金貨の山を築くエイミー。
二つの世界の資金を混ぜず、それぞれの世界で最強の「組織」を目指す戦略が定まった。




