第52話:合同会社リディアトレード始動
交差ダンジョンでの報告会を終え、大介は確信した。
リディアでの商売を本格化させるには、エイミー本人の感覚で商品を選んでもらうのが一番だと。
「エイミー、遊園地はまだ先になるけど、一度こっち(地球)に来いよ。ドラッグストアで実際に商品を見て、リディアの女たちにどれが刺さるか選んでほしいんだ」
「えっ、私が地球に!? ……はい、行ってみたいです!」
大介はエイミーの手を引き、交差ダンジョンの境界を越えて新宿のアパートへと招き入れた。
アパートの部屋では、大介の妹・麻衣が資料を広げて待っていた。
「あ、エイミーちゃん!久しぶり!相変わらずお姫様みたいだね」
「あ、麻衣さん、よろしくお願いします……」
麻衣の屈託のない歓迎に、緊張していたエイミーの表情も和らぐ。
三人はさっそく、作戦会議の場となる近所の大型ドラッグストアへと向かった。
店内に入ったエイミーは、棚を埋め尽くす色とりどりのパッケージに目を輝かせた。
「これ、全部『魔法の薬』なんですか……?」
「ああ。魔法じゃなくて化学製品だけどな。特にリディアで売るなら、個包装のシートマスクや、香りのいい高機能シャンプーが狙い目だと思うんだが、どうだ?」
エイミーは真剣な表情でテスターの香りを嗅ぎ、成分表をチェックしていく。
「この『ビタミンC誘導体』や『コラーゲン』……リディアの回復魔法に近いアプローチを感じます。このシートマスクと、導入液をセットにして『集中美容パック』として売り出しましょう!」
アパートに戻った三人は、選定した商品をリビングに並べた。
「お兄ちゃん、これだけの量なら小売店で買うんじゃなくて、問屋と交渉して『卸値』で仕入れないと利益が減っちゃうよ」
「ああ。そのために、まずは形から入る」
大介は麻衣のサポートを受けながら、オンラインで**「合同会社リディアトレード」**の設立申請を進めた。
「リディアでの『組織』の正体は、この会社ってわけだ。登記完了まで1〜2週間かかるが、その間に問屋に『新規参入の輸出業者』として卸値の交渉を叩きつける」
「『リディアトレード』……私たちの世界と、大介さんの世界を繋ぐ架け橋みたいな名前ですね」
金貨二百枚を軍資金に、地球の商慣習とリディアの魔法知識が融合し始める。
二人の物語は、ダンジョン攻略から、二つの世界を繋ぐ「異世界貿易」へとその規模を広げていった。




