第47話:リディアの商人エイミー(中身は大介の体)
リディアの王都、エイミーの自宅。
鏡の中に映るのは、見慣れた自分の姿ではなく、無骨で逞しい「大介」の体だ。
エイミーは大介の大きな手で、大切に抱えてきた地球のスキンケア用品を机に並べた。
「……大介さんはいつも、私の体で無茶をして稼いでくれます。今度は、私が大介さんのこの体を使って、私たちの未来のために働かなきゃ」
エイミーは大介の荷物の中にあった
「高級オールインワンジェル」と「フェイスマスク」を手に取った。
これらは大介がエイミーのために地球で買い揃えていたものだが、リディアの魔導師たちにとっては、未知の術式が組み込まれた「聖遺物」にも等しい価値がある。
「よし。大介さんのこの『強そうな外見』なら、足元を見られることもないはずです」
エイミーは大介の体を揺らしながら、王都最大の**「ルナリス商会」**へと向かった。
普段の「落ちこぼれ魔女」の姿であれば門前払いされるところだが、身長180センチを超える屈強な男(中身はエイミー)が、堂々とした足取りで現れると、商会のガードマンたちも思わず道を空けた。
「……何用だ、戦士殿。ここは冒険者の酒場ではないぞ」
応接室に現れた老練な商人ガザルは、大介(エイミー体)の威圧感に気圧されながらも問いかけた。
エイミーは大介の低い声を意識しながら、努めて冷静に切り出した。
「……商談に来ました。この『秘薬』の独占販売権を、貴殿に提案したい」
エイミーは大介の大きな指で、器用にジェルの蓋を開けた。
そして、ガザルの手の甲にそれを塗り広げる。
「これは……!? 魔法による一時的な幻惑ではない。肌の組織そのものが潤いに満たされていく……。それに、この香りはなんだ? 嗅いだだけで魔力の循環が整うようだ」
「独自の精製技術によるものです。このジェル、そしてこの『顔を覆う布』。これらを王都の貴婦人や高位魔導師に紹介すれば、どれほどの利益が出るか、貴殿なら理解できるはずだ」
ガザルは商売人の顔になり、身を乗り出した。
大介の体から放たれる圧倒的な存在感と、提示された「未知の秘宝」のギャップに、彼は完全に呑まれていた。
「……素晴らしい。これ一本で金貨十枚、いや、まとまった数をおろし、独占権を認めていただけるなら、前金として**金貨百枚(一千万円相当)**を提示しましょう」
「(金貨百枚……!)」
エイミーは心の中で震えたが、大介ならここでどう振る舞うかを必死に考え、不敵な笑みを浮かべてみせた。
「……妥当な数字ですね。契約しましょう。ただし、一週間後にまた『私』がここへ来ます。その時に、第一陣の売上報告を聞かせてください」
商談を終え、商会を出たエイミーは、路地裏で膝をついて大きく息を吐いた。
「やりました……! 大介さん、私、大介さんの体でちゃんと『戦え』ましたよ……!」
これで地球とリディア、両方の世界で「拠点買い取り」のための資金が揃い始めた。
一週間後、本来の体に戻った大介が、金貨の山を見て驚く顔を想像し、エイミーは大介の顔で優しく微笑んだ。




