第44話:闇市場の「ドリル魔女」
新宿の裏通り。表向きは寂れたアンティークショップだが、その地下には冒険者ギルドの管理が及ばない「闇市場」が存在する。
大介(エイミー体)は、銀髪を隠すようにフードを深く被り、ギルドのCランク証を提示して中へ入った。
本来のいかつい体ならまだしも、この可憐なエルフの体で裏社会を歩くのは、奇妙な視線を浴びて居心地が悪い。
「……ほう。噂をすれば、か」
カウンターの奥で葉巻を燻らす初老の男
――通称『ネズミ屋』が、レンズ越しに大介(エイミー体)を凝視し、ニヤリと汚い歯を見せて笑った。
「その銀髪に、場違いなほど無骨な杖。……お前さんが近頃新宿ダンジョンで暴れ回っている、噂の**『ドリル魔女』**だな? 魔術師のくせに、獲物を物理的に粉砕して回る野蛮な娘がいると聞いたが」
「……ドリル魔女だと? 誰がそんなセンスねえ名前を付けのかしら」
大介は毒突いた。エイミーの澄んだ声で凄んでも迫力に欠けるが、ネズミ屋はその背後に漂う隠しきれない「戦士の覇気」を感じ取り、肩を竦めた。
「まあいい、座りな。その『魔女』様が、こんな薄汚い場所に何の用だ?」
「単刀直入に言う。『ダンジョンポータル』の在庫はあるか? それも二個だ」
ネズミ屋は呆れたように煙を吐き出した。
「ポータルか。今やどこのギルドも深層開拓に必死でな、正規価格の500万じゃ手に入らねえ。俺のところで扱えるのは、盗掘品か中古の再生品だ。それでも一個『700万』は下らねえな。二個なら1400万だ。……嬢ちゃん、そんな大金持ってるのか?」
「1400万……!」
前回の高報酬ですら120万だ。闇値の高さに大介は奥歯を噛み締めた。
このままでは、一週間後にエイミーと入れ替わった際、良い報告ができない。
「……もっと安く、現物で手に入れる方法はねえのか」
大介(エイミー体)の切迫した問いに、ネズミ屋はニヤリと笑った。
「一つだけある。ポータルを『現物』で持っている奴がいる。そいつはポータルを使ってある特殊なダンジョンに引きこもり、違法な魔薬を精製していやがる。ギルドは手出しできねえが、野良の冒険者が『強盗』を返り討ちにする分にはお咎めなしだ。場所を教えてやってもいいが……どうする、『ドリル魔女』様?」
「上等だ。そのポータル、力ずくで毟り取ってやる」
大介はフードの奥で不敵に笑った。
エイミーが自分の体に帰ってきた時、最高のお土産を揃えておくために。




