第43話:孤独な戦略と「ポータル」の衝撃
エイミーがリディアへと戻り、次に彼女と話せるのはまた1週間後だ。
大介は静まり返った自室で、床に開いた「ダンジョンの入口」をじっと見つめていた。
「120万じゃ、ポータル一個分にも足りねえ……。家を買い取る一億なんて、夢のまた夢だな」
大介はスマホで現在のアパートの登記情報を調べた。
この古びた木造アパートは、新宿の一等地に建っているがゆえに、建物自体の価値はなくとも土地代が異常に高い。
「お兄ちゃん、何難しい顔して画面睨んでるの?」
リビングから麻衣が声をかけてきた。大介は今の調査結果を正直に話した。
「この場所を買い取るのに一億、さらに入口を隠蔽するためのマジックアイテム『ダンジョンポータル』に二個で一千万必要だ。エイミーには伝えたが、あいつと次に話せるのは来週。それまでに、俺の方で具体的な算段を立てておきてえんだ」
麻衣は兄の隣に座り、ギルドの端末を一緒に覗き込んだ。
「ダンジョンポータル……。これ、設置すればダンジョンの外殻を無視して『点と点』で繋げるやつだよね? 確かにこれがあれば、アパートの部屋からダンジョンの中層へ直通できる。外の入り口を使わなくて済むから、お兄ちゃんがエイミーさんの世界のものを持って帰ってきても、誰にも見つからない」
「ああ。だが、一個五百万は正規ルートの価格だ。今は品薄で、オークションじゃ八百万まで跳ね上がることもあるらしい」
大介は拳を握りしめた。今のままCランクの依頼をこなすだけでは、一千万貯めるのに何ヶ月かかるか分からない。
もっと効率よく、爆発的に稼ぐ必要がある。
「……やるしかないな。麻衣、悪いが明日からメシはおごってやれねえ。俺は明日から、第十四層よりさらに下……第十五、十六層へ単独で潜る」
「えっ、一人で!? あそこはBランクパーティーが前提のエリアだよ!?」
「俺にはリディアの魔導具と、エイミーの体で学んだ魔力運用のコツがある。……一週間後、エイミーが戻ってきた時に『もう一個分の金は溜まったぞ』って笑って言いたいんだよ」
大介は新調した「爆炎グローブ」の手入れを始めた。
エイミーと会えない一週間は、彼にとってただの待ち時間ではない。
彼女を守るための「城」を築くための、孤独な戦闘期間だ。
「……分かったよ。その代わり、死なないでよね。一億稼ぐ前に死んだら、私が大家さんに怒られるんだから」
麻衣の冗談混じりの激励を受け、大介は静かに闘志を燃やす。
目標は一千万、そして一億。 新宿の地下深くに眠る富を、力ずくで毟り取るための準備が整った。




