第35話:親友への告白
騒然とする会場を後にし、大介(エイミー体)は夜風に当たるためバルコニーへ出た。
後を追うように、セレナが静かな足取りで近づいてくる。
「……見事だったわ。でも、今の戦い方、そして今のあなたの瞳。私の知っているエイミーじゃないわね」
セレナの鋭い視線に、大介は隠し通すのは不可能だと悟った。下手に誤魔化して、エイミーの大切な親友との関係をこじらせるわけにはいかない。
大介は「暴君の杖」を壁に立てかけ、観念したように息を吐いた。
「……察しがいいな。ああ、中身は別もんだ。俺は戸田大介。わけあって、今はこいつの体を借りてる」
セレナは絶句し、数秒の間をおいてから「……憑依、あるいは魂の置換魔法? まさか、本当にそんなことが……」と呟いた。
入れ替わり魔法は特殊系統のマイナー魔法。攻撃魔法が美徳とされるこの世界では知名度は極端に低い。
「信じられないだろうが、事実だ。本物のエイミーなら、あそこの茂みで『俺の体』に入ってハラハラしながら見てるぜ」
大介が庭の茂みを指差すと、そこから巨大な男(中身はエイミー)が慌てて頭を引っ込めるのが見えた。
「……本当なのね。あんな不審な動き、エイミー以外にはできないわ」
セレナは呆れたように、しかしどこか安心したように微笑んだ。
「セレナ、エイミーは恥ずかしがって言えずにいたみたいだが、代わりに伝えておきたい」
大介は、エイミーから預かっていた想いを代弁するように、真剣なトーンで話し始めた。
「あいつ、お前にめちゃくちゃ感謝してる。学園でみんなに馬鹿にされてた時、お前だけが味方でいてくれたことが、あいつの唯一の救いだったんだってさ。……お前がいなきゃ、あいつはとっくに魔法を諦めてたはずだ」
セレナの瞳が微かに揺れる。
「俺はいつまでもこの体に居られるわけじゃない。今はこうして強引に現状をひっくり返してるが、最後はあいつ自身が自分の足で立たなきゃならない。……だからセレナ。これからもエイミーの隣にいてやってくれないか。あいつには、お前みたいな親友が必要なんだ」
しばらくの沈黙の後、セレナはゆっくりと頷いた。
「……言われなくてもそうするわ。でも、戸田大介さん。彼女をそこまで変えてしまうほどの影響を与えたあなたにも、感謝しなくてはいけないわね」
セレナは目の前の「大介が動かすエイミー」に向かって、正式な魔導士の礼を取った。
一方、茂みの中ではエイミー(大介体)が涙を流し、自分の大きな拳で顔を覆っていた。




