第34話:魔女のカラテ
エイミー(中身は大介)がセレナの疑念を感じながらも、同窓会に馴染み始めた(ように見える)その時だった。
「おいおい、セレナ。そんな落ちこぼれを構うのはよせよ。エイミー、お前もその変な棒切れを杖だと言い張るつもりか? 恥をかくだけだぞ」
かつてエイミーを執拗に馬鹿にしていた主犯格の男――ジークフリートが、取り巻きの魔導士たちを引き連れて割り込んできた。
彼は嘲るように、大介(エイミー体)が持つ「暴君の杖」を指差す。
「どうだ? 今日はせっかくだから、お前も魔法を披露してみないか? ……ああ、どうせロクなものも使えないだろうがな、ガハハ!」
会場のあちこちでクスクスと笑いが漏れる。
外の茂みでは、エイミー(大介体)が「ひどい……!」と唇を噛み締めていた。
大介はフンッと鼻を鳴らし、暴君の杖を肩に担いだ。
「ああ? やるのか? いいぜ、望み通り見せてやるよ。『エイミー』の魔法ってやつをな」
「なんだと!? 望むところだ! よし、では魔法対決だ! お前が何を使えるか、皆に見せてやれ!」
ジークフリートは高らかに宣言し、会場の中央にある、余興用の魔法陣へと向かう。
周囲の魔導士たちが興味津々で見守る中、大介(エイミー体)もその魔法陣の中へと足を踏み入れた。
「くらえ、エイミー! 私が編み出した、炎の蛇魔法だ!」
ジークフリートが杖を一閃すると、魔法陣から数匹の炎の蛇がうねりながら飛び出し、大介へと襲いかかる。
それに対し、大介は「暴君の杖」を片手に、ジークフリートの放つ魔法をまともに受け止めようとはしなかった。
地球ではエイミーの魔法は最強だが、リディアでは魔法だけで戦ったら確実に負ける。
「……こんなもん、魔法で受ける必要ねえだろ」
大介は、かつて自分が格闘家として培った**
「身体強化」の技術を、エイミーの肉体で最大に発動させた。
華奢なエルフの体が、瞬間的に鋼鉄のように硬質化し、俊敏性が跳ね上がる。
炎の蛇の攻撃を、「シュッ!」**という短い呼吸と共に紙一重で回避。
そして、流れるような体術でジークフリートとの距離を一気に詰めた。
「なっ……速すぎる!?」
ジークフリートが驚愕する間もなく、大介は「暴君の杖」を槍のように突き出し、その先端でジークフリートの杖を弾き飛ばした。
キンッ! と甲高い音が響き、ジークフリートの杖が床に転がる。
「魔法で勝負だって言っただろうが! 何をするんだ貴様!」
「ああ? これは魔法だろ? 身体強化魔法からの、杖術。ちゃんと魔法陣の上でやってるんだから文句ねえだろ?お前は魔物にもそう言うのか?」
大介はニヤリと笑い、そのまま杖の柄の部分で、ジークフリートの鳩尾に**ドンッ!**と一撃。
魔法の光も爆発もない、純粋な物理攻撃だ。
呻き声を上げて崩れ落ちるジークフリート。
「ぐっ……お、お前……こんな魔法、見たことないぞ……!」
「俺の世界じゃ、これ**『カラテ』**って言うんだよ。覚えとけ」
魔法陣の上で、魔法による身体強化と、杖を武器にした格闘術で勝利する「魔女」。
「あ、杖持ってたからカラテではないか。まあ何でもいいや」
会場は静まり返り、魔法だけを信じてきた魔導士たちは、目の前の光景を理解できずに立ち尽くしていた。
外の茂みでは、エイミー(大介体)が
「か、カラテ……!?」と呟きながら、感動で震えていた。
セレナだけが、眼鏡の奥で微笑みを浮かべていた。




