第32話:意外な再会
会場のあちこちで「落ちこぼれのエイミーが来た」という冷ややかな視線と失笑が飛び交う中、大介(エイミー体)は全く動じていなかった。
むしろ、高級そうなオードブルを片っ端から口に放り込み、「リディアの飯も、悪くないな」と不敵に笑っている。
その時、会場の喧騒を割って一人の女性が近づいてきた。
青いローブを纏った、気品のある眼鏡の魔導士。彼女は大介の前に立つと、じっとその目を見据えた。
「……エイミー。本当に来たのね」
「あん? ……ああ、お前は……」
大介は記憶を掘り起こそうとするが、エイミーから聞いていた「敵」のリストに彼女の顔はない。
むしろ、外の茂みで聞き耳を立てていたエイミー(大介体)が、念話(小声の無線)で慌てて指示を飛ばしてきた。
『だ、大介さん! 彼女はセレナです! 親友です! お願いですから、今すぐそのドレスの裾を捲り上げて、椅子に片足を乗せて股の間を扇ぐのをやめてください! 涼しいのは分かりますけど、中身がおっさんなのが丸出しですぅ!まさかいつもそんな風に暮らしてたんですか!?』
「ああ、セレナか。久しぶりだな」
大介は慌てて足を下ろしたが、手遅れだった。セレナは怪訝そうに眉を寄せ、大介の全身をなめ回すように見る。
「……。あなた、本当にエイミー? 雰囲気が違いすぎるわ。あんなに内気だった子が、椅子を逆向きに座って、その『凶器』のような杖をテーブルに叩きつけるなんて。それに……今のその、**『現場仕事終わりの一杯』**みたいな満足げな顔は何?」
「何って……まあ、ちょっと修行してな。色々吹っ切れたんだよ」
大介は無意識に、エイミーの華奢な指先で耳の穴をほじりながら答えた。
その仕草一つとっても、可憐な少女のそれではなく、完全に休日のおっさんの動きだった。
セレナは確信に近い疑念を抱いたようで、大介に顔を近づけて囁いた。
「……今のあなたからは、学園時代にあれほど苦労していた『繊細な魔力』が微塵も感じられない。代わりに、さっきからドレスの胸元をバサバサさせて風を送る、底知れないおじさん臭い圧力を感じるわ。誰かに化かされているのか、それとも……」
『大介さん! セレナの眼鏡が曇るくらい引いてます! あと、無意識に**「お、今日の酒は五臓六腑に染みるな」**って口に出さないで! 淑女は五臓六腑とか言いません!』
その時、かつてエイミーを執拗に馬鹿にしていた主犯格の男が、取り巻きを連れて割り込んできた。
「おいおい、セレナ。そんな落ちこぼれを構うのはよせよ。エイミー、お前もその変な棒切れを杖だと言い張るつもりか? 恥をかくだけだぞ」
会場の外では、エイミー(大介体)が茂みの中で「あわわ……」と震えながら、巨大な拳を握りしめていた。
「(セレナにバレそうだし、男の人の目は気にしてないし、意地悪な同級生は来るし……もうめちゃくちゃですぅ……!)」




