第29話:鏡の中の英雄たち
二日酔いの頭痛に耐える大介と、強烈な胸やけに耐えるエイミー。
互いが残した「不摂生の代償」に悶絶する時間を経て、二人はようやく「交差ダンジョン」を介してまともな情報交換を始めた。
「……おいエイミー、お前。俺の体で何次会まで行ったんだ? 記憶がねえのに頭が割れそうだったんだが」
「それを言うなら大介さんこそ……何を食べたか知りませんが、エルフの体には脂が強すぎます……胃が重くて、魔法を練るどころではありません……」
ひとしきりお互いの生活習慣をなじり合った後、二人は三日間の「異常な戦果」と、手に入れた莫大な報酬の使い道について相談を始めた。
「まず、俺の方はCランクに昇格した。新宿ダンジョンの十層ボスを完封したからな。前金と報酬を合わせて、手元には500万円ある」
「ご、ごひゃくまん……!? 大介さん、そんなに稼いだんですか!?」
エイミーが目を丸くする。リディアの金貨に換算しても、一介の学生が一生かけて稼ぐような大金だ。
「これだけあれば、ボロアパートから引っ越して贅沢もできるけど……。この交差ダンジョンの入口がある以上、俺はここを動けない」
二人の魂を繋ぐ「交差ダンジョン」は、大介の自室とエイミーの自室に固定されている。
場所を変えることは、この奇妙な協力関係の終わりを意味していた。
「……そうですね。私も、この部屋を離れるわけにはいきません」
「だろ? だからこの金、**『装備』**に投資しようと思う。これだけ有名になると、これからは今まで以上に危ない依頼や、変な奴らに絡まれるはずだ」
大介の提案に、エイミーも力強く頷いた。
「賛成です! 実は私、大介さんの体に魔力を通して、拳から炎を出す技……**『爆炎正拳突き』**を編み出したんです。でも、そのせいで大介さんの手が少し焦げてしまって……」
「あぁ、だからかよ! ……なら、俺には炎の負荷に耐えられる特注のグローブ。お前には、そのドリル……じゃなくて精密な魔法をサポートする杖や、身を守る防具が必要だな」
地球の最新技術で作られたタクティカルギアや素材を、エイミーの魔法で強化する。
あるいは、リディアの魔導金属を地球に持ち込み、現代の加工技術で装備に仕立てる。
「二つの世界の技術を合わせれば、俺たちにしか作れない最強の装備ができるはずだ」
「ふふ、いいですね。私たち二人だけの、秘密の武装ですね」
大介は「ドリル魔女」としてのエイミーの評判を、エイミーは大介の体で轟かせた
「無敵の格闘戦士」としての評判を、それぞれ背負っていく覚悟を決めた。
二人の協力関係は、ただの「入れ替わり」から、両世界の理を掛け合わせる「共同戦線」へと進化しようとしていた。




