第27話:エルフの体で高級焼肉
一方、地球。Cランク昇格と、前金の500万円を手に入れた大介(エイミー体)は、意気揚々と妹の麻衣を呼び出していた。
「今日は遠慮しなくていいわ。私が……いえ、この『エイミー』が稼いだお金で、一番いい肉を食べに行くわよ!」
「ちょ、お兄ちゃん……じゃなくてエイミーさん、鼻息荒すぎ! その美少女の顔で『肉食わせろ』って、本当にギャップが凄すぎるんだけど……」
二人がやってきたのは、新宿でも指折りの高級焼肉店。
普段の大介なら、メニューの値段を見ただけで回れ右して店を出るような、敷居の高い名店だ。
「……凄いわね。この『シャトーブリアン』というやつ、宝石みたいに輝いているわ」
大介(エイミー体)は、トングを使って丁寧に肉を焼いていく。
エイミーの繊細な指先は、肉の焼き加減を管理するのにも最適だった。
「はい、麻衣。食べなさい。……ふふ、これが『Cランク』の味よ」
「いただきまーす! ……んんん! 美味しすぎる! お兄ちゃんが美少女になってから、我が家のQOL(生活の質)が爆上がりだね!」
大介も自分の一皿を口に運ぶ。
とろけるような脂の甘みが、エルフの鋭敏な味覚を通じて脳に突き抜けた。
「(……美味い。美味すぎるぞ。エイミー、お前の体は味覚まで研ぎ澄まされてるんだな……!)」
しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。
三皿目を食べ終えたあたりで、大介(エイミー体)の胃が、きゅっ、と悲鳴を上げた。
「……あれ? 何だか、急にお腹が重いわ」
「えっ、まだ始まったばかりだよ? 私、カルビお代わりしようかな」
「……ダメ、これ以上は……。この体、脂っこいものを受け付けない……!?」
大介は失念していた。
エルフという種族が、本来は非常に清廉な食生活を送っていることを。
27歳の男の感覚で「高い肉=脂」とばかりに注文し続けた結果、エイミーの華奢で清潔な胃腸が、過剰な牛脂に耐えられなくなってしまったのだ。
「……う、うっぷ。……麻衣、悪いけど、残り全部食べて……」
「ええーっ!? もったいない! エイミーさん、あんなに『最速クリア!』とか言ってたのに、胃袋のキャパは最弱じゃん!」
大介(エイミー体)は青い顔をして、ウーロン茶をすすりながら麻衣の食べっぷりを眺めるしかなかった。
「(……明日には元の体に戻るんだ。向こうのエイミーは、俺の体でちゃんとやってるかな……。あいつ、気弱だから変な奴に絡まれてなきゃいいけど)」
大介は、異世界で自分の体がどうなっているかなど知る由もなかった。
まさか、自分の肉体が酒場で豪遊し、路地裏で爆炎を放ちながらならず者を返り討ちにしているとは夢にも思わず、ただ「お腹が痛い……」と美少女の顔を歪ませていた。




