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第24話:炎を纏う鉄拳


 洞窟での激戦を終え、ギルドに戻る道中。エイミー(大介体)は、ボロボロになった自分の……正確には大介の拳を見つめていた。


「(大介さんの体は頑丈ですけど、やっぱり生き物ですもの……。硬い魔獣を叩けば、それなりに傷ついてしまいますよね)」


 ふと、彼女は地球での入れ替わり中に大介が使っていた魔法を思い出した。  


――「クリーン」。  自分の体では当たり前に使っていた生活魔法だが、魔力を持たないはずの「地球人」の体でも、不思議と発動できていたのだ。


「待ってください……。この体、微弱ですけど私の魔力が通じている……?」


 エイミーは立ち止まり、大介の大きな拳に意識を集中させた。  


本来、大介の肉体に魔力回路はない。しかし、魂が入れ替わっている今、エイミーの魂から漏れ出す魔力が、大介の血の巡りに沿って僅かに浸透していることに気づいたのだ。


「……火よ。ほんの少しだけでいいから、灯って」


 エイミーが祈るように拳を握りしめると、大介の拳の周りの空気が陽炎のように揺らぎ、ポッと小さな赤い炎が宿った。


「できた……! 威力は私の体で使う時の百分の一もない。でも、これなら!」


 彼女は、大介から教わった「直線」の動きに、この微弱な炎を組み込むイメージを膨らませた。  


防御を焼き、打撃の瞬間に爆発的な推進力を加える――。


「名付けて、『爆炎正拳突き』……でしょうか。うふふ、大介さんに怒られちゃうかな」


 その直後だった。  


帰路を急ぐ一行の前に、巨大な森の主「フォレスト・ベア」が立ち塞がった。


「またか! みんな、構えろ!」  


ガルガンが叫ぶが、仲間たちは連戦で疲弊している。


「皆さん、下がっていてください。……今の私なら、もっと上手くやれます!」


 エイミー(大介体)が前に出る。  


重心を低く、最短距離の「直線」を見据える。拳には、大介の筋肉を焦がさないギリギリの温度で炎が纏わされた。


 『先手必勝!』


 踏み込みと同時に、炎を推進力に変えて拳を突き出す。  ドッ、ォォォン!!


 ただの正拳突きではない。接触の瞬間に炎が炸裂し、フォレスト・ベアの分厚い毛皮を焼き裂きながら、その巨体を一撃でひっくり返した。


「な、なんだ今の……!? 魔法か? いや、拳が燃えていたぞ!」  

驚愕する『鋼鉄の牙』の面々。


 エイミー(大介体)は、少しだけ煙の上がる拳を振り、照れくさそうに笑った。


「えへへ、大介さんの教えに、ちょっとだけ自分流を混ぜてみました」


 魔力なき肉体に宿る、小さな炎。  


それは「無敵の格闘戦士」に、新たな伝説の一ページを加える瞬間だった。

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