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第23話:黒牙の洞窟と鉄拳の救済


 エイミー(大介体)は、Cランクパーティー『鋼鉄の牙』と共に、湿った空気の漂う『黒牙の洞窟』の奥深くへと進んでいた。  


道中、遭遇したゴブリンの群れを大介の屈強な肉体でなぎ倒すたび、仲間の冒険者たちは感嘆の声を漏らす。


「おいおい、本当に素手で引きちぎりやがったぞ……」


「大介、お前さんは本当に人間か?」

「あ、いえ……鍛え方が、その、凄すぎるだけで……」


 エイミーが控えめに答えるたびに、リーダーのガルガンは豪快に笑い、「その謙虚さが強者の証だな!」と背中を叩く。


それが今の彼女には少しだけ痛かった。


 しかし、洞窟の最奥部で事態は急変した。  


天井から突如として姿を現したのは、Cランクでも手に余る巨大な魔蜘蛛「アビス・スパイダー」の群れだった。


「しまっ……! 囲まれたぞ!」  

ガルガンが大盾を構えるが、死角から伸びた鋭い脚が仲間の魔導師の喉元に迫る。


「危ない!」  


その瞬間、エイミーの脳裏に大介の言葉が響いた。  『相手が動く前に動く! 先手必勝だ!』


「……はあぁっ!」


 エイミーは大介の肉体の重心を低く沈め、足の裏全体で地面を蹴った。  


直線。最短距離。  


魔導師を襲おうとしていた巨大な蜘蛛の胴体へ、体重の全てを乗せた「正拳突き」を叩き込む。


 ――ドシュゥゥゥン!!


 凄まじい肉打音が洞窟内に反響した。  


アビス・スパイダーの硬い外骨格は紙細工のように砕け散り、巨体は後方の岩壁まで吹き飛んで、そのまま動かなくなった。


「な……一撃だと!?」  


ガルガンたちが呆然とする中、エイミーは止まらなかった。  


残りの蜘蛛たちが飛びかかるよりも早く、次々と懐へ潜り込み、その拳を叩き込んでいく。


「先手……必勝! これも、先手、必勝です!」


 数分後。洞窟には魔獣の死骸と、肩で息をする大介(中身はエイミー)だけが立っていた。  


静寂を破ったのは、ガルガンの震える声だった。


「……助かった。お前がいなけりゃ、全滅していたところだ」  


仲間たちが次々と駆け寄り、大介の太い腕を掴む。


「大介、あんた最高だ! その拳、まさに『無敵の格闘戦士』じゃねえか!」


「お役に立てて……良かったです」  

エイミー(大介体)は、ボロボロになった自分の拳をそっと見つめた。  


大介から教わった「直線」と「先手必勝」。それが、大切な誰かを守るための力になるのだと、彼女は今、確かな手応えを感じていた。

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