第19話:決戦、スカルナイト
聖堂の冷たい空気が、青白い眼光に照らされる。
スカルナイトは、身の丈を超える巨大な黒剣を軽々と振り上げ、大介(エイミー体)に向けて咆哮なき圧力を放った。
「エイミーさん、下がって! 初手は私が受け持ちます!」
ハルトが二振りの直剣を抜き、前に出ようとする。だが、大介はその肩を銀髪の一房で制した。
「言ったはずよ。そこで見てなさいって」
大介(エイミー体)の右腕には、数万本の銀髪が螺旋状に巻き付き、巨大な円錐形の槍――**「ドリル」**を形成していた。
エイミーから教わった「絞り出す」魔力が、その先端で超高速の回転を生んでいる。
「……何ですか、その魔法。属性も付与せずに、髪の剛性だけで戦うつもりか!?」
ハルトの驚愕を背に、スカルナイトが動いた。
漆黒の大剣が空気を切り裂き、大介の脳辺りへと振り下ろされる。
「(遅えんだよ。――先手必勝、だろ?)」
大介は、空手の足運びでスレスレの回避を行いながら、スカルナイトの懐へと一気に踏み込んだ。
狙うは、ボスの絶対防御を誇る巨大な盾の中心だ。
「喰らいなさい。――『シルバースパイラル』!」
大介が勝手に名付けたその技が、スカルナイトの盾に接触した。
ギギギィィィィィィン!!
鼓膜を劈くような金属摩擦音。超高速回転する銀髪のドリルが、どんな物理攻撃も通さないはずの魔力コーティングされた盾を、強引に削り取っていく。
「なっ……盾を削り負かしているのか!? どんな出力だ……!」
スカルナイトが剣を戻そうとするが、もう遅い。
ドリルは盾の中央にひびを入れ、次の瞬間、粉々に粉砕してその深奥へと突き刺さった。
――ドォォォォォン!!
貫通した魔力の余波が、ボスの背後の壁までをも円形に抉り取る。
スカルナイトの巨大な体が仰け反り、胸の魔核が剥き出しになった。
「(……仕上げだ。エイミー、お前の魔力はマジで最高だぜ)」
大介はドリルの回転を止め、今度はそれを鋭い一本の「針」へと瞬時に再構成した。
髪の先が閃光のごとく走り、ボスの心臓部を完璧に貫通する。
スカルナイトの青白い炎が消え、巨大な鎧が音を立てて崩れ落ちた。
「……ふう。……終わりね」
大介(エイミー体)は、乱れた銀髪を指で整え、何事もなかったかのように手鏡を取り出した。
耳が隠れていることを確認し、冷たい目でハルトを振り返る。
「……記録、できたかしら?」
「…………」
ハルトはボードを抱えたまま、粉々になった盾と、崩れ落ちたボスの残骸を交互に見ていた。
魔法使いが、魔法を「魔弾」としてではなく、「物理的な質量と回転」で運用し、ボスを真っ向から粉砕した。
ギルドの常識が、今、目の前の「天才魔女」によって跡形もなく書き換えられていた。
「……完璧です。エイミーさん。あなたのランクアップは……疑いようもありません」
ハルトの震える声を聞きながら、大介は内心でガッツポーズを決めた。
(よし! これで高報酬クエストが受けられる! 悠々自適な生活も見えてきたぜ……!)




