第18話:深まる疑惑とボスの間
第十層の廃都を、銀色の閃光が駆け抜ける。
大介(エイミー体)は、エイミーから教わった「髪を操る魔法」を、まるで自分の手足……いや、それ以上に鋭敏な武器として使いこなしていた。
背後から迫るリビングアーマーを振り返ることもなく、たなびく銀髪の束を鋭い「槍」へと変質させ、その胸の中央にある魔核を正確に貫く。
「……ふう」
一息つく間もなく、大介は次の通路へと視線を向けた。
その無駄のない、殺気すら感じさせる合理的な動きに、後ろを追う剣士のハルトがついに耐えかねたように声を上げた。
「……エイミーさん、一つ聞いてもいいですか?」
「何よ、急に。足を止める余裕はないわよ」
「あなたの戦い方についてです。あなたは一体どこで、その**『実戦的すぎる』**動きを学んだのですか?」
ハルトの問いに、大介は内心で「しまった」と舌打ちした。
学生時代に空手で汗を流した日々、効率と勝負の勘を優先させてきた大介の動きは、浮世離れした「魔法使い」のそれとはかけ離れていたのだ。
「……実戦的? ふふ、変なことを言うのね。今日初めて試してみたのだけれど、サマになってたかしら?」
大介(エイミー体)は、鏡の前で練習していた「少し小馬鹿にしたような、余裕のある天才魔女」の微笑みを浮かべて振り返った。
「……今日初めて、ですか?」
ハルトは驚愕を通り越し、呆然とした表情で立ち止まる。
「即興でその身のこなし、そして魔法の制御……。全属性適正という才能は、努力という概念すら過去にするというのですか」
「さあね。才能なんて、持ってる側からすれば『当たり前』のことなのよ」
大介はさらに追い打ちをかけるように高慢な態度を貫いた。
(よし……なんとか『天才ゆえの異常性』ってことで押し通せそうだ。今日初めてなのは動きじゃなくて魔法のコントロールの話だが、ボロが出る前にさっさと終わらせるぞ)
二人はついに、最深部へと続く巨大な大理石の扉の前に辿り着いた。
扉の隙間からは、凍てつくような死霊の気が漏れ出している。
「ここが最深部。ボスのスカルナイトです。……エイミーさん、これまでの道中の敵とは格が違います。髪の魔法だけで押し通すのは、さすがに無謀では――」
「いいから、大人しく記録してなさい」
大介(エイミー体)は扉を蹴り開けた。
広大な祭壇の中央。漆黒の重鎧に身を包み、身の丈を超える巨大な大剣を携えた死霊の王――スカルナイトが、青白い眼光を放ちながら立ち上がった。
「(スカルナイト……。ハルトの言う通り、こいつの鎧はさっきのザコとは硬さが違うな。なら、教わった通りに『一点集中』だ)」
大介は、自分の長い髪の毛を右腕に巻き付け、一本の太い「ドリル」のように収束させた。
エイミーのアドバイス通り、指先ではなく全身から絞り出す魔力を、そのドリルの先端に集中させていく。
「さあ、最速クリアといくわよ!」
銀の髪が猛烈な回転を始め、廃都の静寂を切り裂くような高周波音が聖堂内に響き渡った。




