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第17話:ランクアップ試験と厄介な監視役

「簡単だけど報酬が低すぎる。もう二度とあんな面倒なクエストは受けないわよ」


 ギルドに戻るなり、大介(エイミー体)はカウンターを叩いて北川に言い放った。


「あんな数ばっかり多い虫ケラの相手、割に合わなさすぎる。俺……じゃない、私の時間を無駄にさせないで」


 傲慢な魔女の演技を続ける大介に、北川は全く怯むことなく、むしろ計算高い笑みを深めた。


「お言葉ですがエイミー様。今回は貢献度のための依頼です。あの放置クエストを完璧にこなしたことで、あなたのギルドへの『貢献度』は一気に規定値を満たしました」


「貢献度……?」


「ええ。そこでご提案なのですが……**『ランクアップ試験』**を受けませんか?」


 北川は一枚の特別な書類を差し出した。


「ランクが上がれば、指名依頼の単価も跳ね上がります。

今のあなたの実力なら、低ランクの小銭稼ぎに時間を費やすより、一回で数百万、数千万が動く高難度クエストに絞った方が効率的だと思いませんか?」

(その方が私の仲介料も高くなりますし..)


 **「数千万」**というワードに、大介の喉が鳴った。北川の思惑に乗るのはしゃくだが、受けない手はないだろう。


先の悠々自適な生活。エイミーの魔力と、自分の身につけた精密制御があれば、それは決して夢ではない。


「……いいわ。その試験、受けてあげる」


「賢明なご判断です。内容は、特殊な中層ダンジョンの最速踏破。……ですが、この試験には『ある条件』がございまして」


 北川が不敵に微笑む。二度目の入れ替わり生活は、いよいよ本格的な「成り上がり」のステージへと突入しようとしていた。


「ある条件……? 何だよ、出し惜しみしないで言いなさいよ」  


大介(エイミー体)は、不敵に笑う北川を睨みつけた。


「ランクアップ試験は本来、複数人でのパーティー参加が推奨されます。

ですが、ソロでの受験を希望されるなら、ギルド側から『試験官兼・監視役』を一名、同行させていただきます」


「監視役? 私の腕を疑ってるってわけ?」


「いいえ、逆です。あなたの**『全属性適正』**が本物である以上、ギルドとしてはあなたの安全と、その能力が社会に与える影響を正しく記録する義務があるのですよ」



 北川が指を鳴らすと、ギルドの奥から一人の青年が現れた。  


使い込まれた革鎧に、腰には二振りの鋭い直剣。魔法を一切使わない、純粋な剣士としての佇まいだ。


この世界で剣士で立場あるというのは、相当な腕なのだろう。


「ギルド本部調査員のハルトさんです。エイミーさん、足手まといにはならないのでご安心を」


「彼は実戦経験豊富な剣士です。彼があなたの戦闘効率と、その稀少な才能の使い道を評価します」


 大介(エイミー体)は内心で舌打ちした。

(マズいな……。全属性がバレてるからこそ、プロの監視役がつきっきりで『どう使うか』まで見定めるってわけか。手の内を全部見せるのは危険だ。今後の交渉材料として、隠し玉は持っておきてえ)


 大介は、この試験をエイミーに教わったばかりの**『髪を操る魔法』**を主軸に突破することを決めた。属性魔法の乱用を避け、底知れない底力を見せつけてやるつもりだ。


「……いいわ。勝手についてくれば?」


 試験会場、新宿ダンジョン第十層――『静寂の廃都』。  


朽ち果てた石造りの街並みに、無数のスケルトンがうごめいている。


「エイミーさん、接敵します。私の援護は必要で――」


「いらないわ。そこで見てなさい」


 大介(エイミー体)は、ふわりと広がる銀色の長い髪に魔力を流し込んだ。  


指先から放出するのではなく、髪の毛一本一本に魔力を「絞り出す」イメージ。


 ――シュルルッ!


 数本の銀髪が触手のように伸び、背後から襲いかかってきたスケルトンの頭蓋を瞬時に粉砕した。


さらに、大介は立ち止まらない。身体強化を重ねた脚力で廃都を疾走する。


「なっ……速い!?」  

後ろを追う剣士のハルトが驚愕の声を上げる。


 大介は、前方から現れた敵の群れに対し、扇状に広げた銀髪を鋭い針へと変質させた。


「喰らえ、『シルバースパイク』!」


 銀の閃光が奔り、通路を塞いでいた魔物たちが一瞬で沈黙する。  


属性魔法の派手なエフェクトは一切なし。


ただ髪を振るうだけで、最短ルートの敵を文字通り「掃除」していくその姿は、ハルトが想定していた「魔法使い」の戦い方とは根本から異なっていた。


本来、魔法使いとは前衛に守られながら後衛から敵を狙撃する遠距離職として認識されているからだ。


「……信じられない。全属性適正を持ちながら、属性を一切使わずにここまで……。それにあの身のこなし、魔導師のそれじゃない」  


当然だ。本来の大介は格闘家なのだから。


そんなことは知らないハルトは必死に食い下がりながら、ボードに筆走らせる。


 大介(エイミー体)は口角を上げた。

(よし、このまま髪魔法だけでボスまで突っ切る! 属性魔法はここぞという時のブラフだ。効率よく最速クリアしてやるぜ)


 一行は、廃都の中央に鎮座する巨大な聖堂――ボス・スカルナイトの待つ間へと、記録的な速さで辿り着こうとしていた。

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