第14話:最強の「トリセツ」交換会
白い光に包まれて入れ替わりが完了する。
今回は前回の入れ替わりで露呈した「スペックに振り回される」という課題を克服するため、互いの肉体の「取扱説明書」を共有することにした。
まずはエイミーにどんな風に戦っていたか見せてもらう。
「いいか、エイミー。俺の体の使い方だ」
「はい、お願いします、大介さん」
エイミーは大介の逞しい腕を組み、真剣な眼差しで聞き入る。
リディアでは最強の美徳とされる「高筋肉・高身長・高体重」の肉体。
それを使いこなすための知恵を、主である大介が語り始めた。
「お前はひらひら動きすぎだ。エルフの体みたいに無理な回避を繰り返すと、この重さじゃすぐに膝をやるぞ。俺の体は、もっとどっしり構えるようにできてるんだ」
「あ……確かに、少し違和感がありました。避けるたびに、自分の重さに振り回されるような……」
大介(エイミー体)は、自分の(今はエイミーが宿っている)太い脚を指差して教える。
「基本は**『直線』**だ。足の裏全体で地面を掴め。軸をぶらさず、最短距離で力を伝えるんだ。複雑なステップより、まずは一歩の力強さを意識しろ」
「直線、ですね……。大地を踏みしめる感覚……」
エイミー(大介体)は立ち上がり、教えられた通りに母指球を意識して地面を掴んだ。
それだけで、周囲の空気がピリリと震えるような威圧感が放たれる。大介は満足げに頷き、さらに「空手の極意」を付け加えた。
「あと空手はな、ある意味で**『先手必勝』**の技術なんだよ」 「先手、必勝……?」
「ああ。相手より速く技を出せば圧倒的に有利だ。特にこの体なら、掠っただけでも致命傷になる。防御を考えるより先に、『相手が動く前に動く!』。これを徹底しろ」
「相手が動く前に……。後手に回らず、私の意志でこの体を爆発させるんですね」
エイミーは低く構え、鋭い踏み込みを見せた。 ドォンッ! 大地を叩く音が境界線に響く。
不器用ながらも、そこにはリディアの剣士たちが持たない「質量の弾丸」のような鋭さが宿っていた。
「……いい。その調子だ、エイミー」
大介の言葉に、エイミーは自身の大きな拳を見つめ、不敵に微笑んだ。




