第10話:筋力指数「800」の衝撃
リディアのギルド内は、先ほどの一撃で完全に静まり返っていた。
吹っ飛ばされた魔導師を尻目に、エイミー(大介体)は受付へと促される。
「……暴力沙汰は困りますが、あなたの実力は認めざるを得ない。まずは適性鑑定を」
戸惑うエイミーの前に、特殊な紋章が刻まれた石板が出された。
「そこに手を置いて、力を込めてください」
エイミーが言われるがまま、大介の太い腕を石板に乗せる。
すると、石板が鈍い金色の光を放ち、リディアの共通言語で数値が浮かび上がった。
それを見た鑑定士が、椅子から転げ落ちそうになる。
「これは……純粋な肉体戦闘適性。しかも……筋力指数『800』だと!?」
その声に、ギルド中が蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
「800だって!? バカな、リディア人の平均は300、ドワーフが混じった者でも500が限界だぞ!」
「ドラゴンの幼体並みの数値じゃねえか。あの体、中身はどうなってやがる……」
鑑定士は興奮を抑えきれない様子で、身を乗り出して大介の顔を覗き込んだ。
「あなた、一体どこの部族の方ですか!? 西の蛮族か、それとも禁忌の森の守護者か……」
「え、えっと……遠い、東の地から来ました……(小声で)」
エイミーは大介の逞しい体躯を縮こまらせ、申し訳なさそうに視線を逸らす。
大介の野太い声でそんな風に囁かれると、周囲には異様な威圧感として伝わってしまう。
「声が小さいですね! もっと堂々としてください! その数値ならこの国の騎士団ですら平伏しますよ!」
「あ、すみません……以後、気をつけます……」
鑑定士に一喝され、さらに縮こまる大介。
しかし、その謙虚すぎる態度は、周囲の冒険者たちには「余裕の表れ」あるいは「底知れない強者の静寂」と誤認された。
「おい、そこの兄貴! 俺たちのパーティに来てくれ! 報酬は山分けだ!」
「いや、うちの専属になれ! 装備は最高級のものを揃えてやる!」
「あのお方……なんてストイックで奥ゆかしいのかしら……」
さっきまでの嘲笑はどこへやら、今やエイミーは無数のスカウトの嵐に晒されていた。
大介の肉体に宿る圧倒的な暴力性と、エイミー自身の気弱で優しい性格。
そのギャップが、リディアの常識を根底から破壊し始めていた。
「(すごい……大介さんの体って、本当にすごいんだ……。でも、私にこんなに期待されて、ちゃんとできるかな……)」
エイミーは内心でビクビクしながらも、差し出された依頼書の一枚を、震える指で受け取った。
次回、戸田の肉体がリディアでどう活躍できるのか?




