ep7.玉座なき魔王編 アザートス討伐準備(4)
和の国で「七草粥」を食べてから数時間後。アストラル・ブレイカーが次元の壁を突き抜けると、そこは一面の銀世界だった。
「……うわっ、寒い! 和の国は正月だったのに、こっちはクリスマスかよ!」
創夜は外光の眩しさに目を細めた。次元を超えたことで季節が逆転したらしい。
「ふふ、いいじゃない。今度はこれで行きましょう」
ミリィがいたずらっぽく笑い、防具を変形する。
一瞬にして、一行の装備は赤と白を基調とした『クリスマス限定装備』へと変形した。創夜はサンタ風のコート、女性陣は可愛らしいサンタドレス姿だ。
「なんだか……締まらない格好だが、次元の空気に合わせるのも大事か」
創夜は苦笑しながら、再びアレルの白亜の城へと着陸した。
城内へ入ると、そこには以前より一回り逞しくなったアレルと、傍らで羽を休める妖精のリリィがいた。
「よお、創夜! 来るって聞いて待ってたぜ!」
アレルが快活に笑い、創夜の肩を叩く。その手から伝わる波動に、創夜は驚いた。
「修行したってのは本当みたいだな。いい面構えだ」
「ああ、おまえに負けてられないからな! それで、用件は何だ?」
創夜はアレルとリリィに、次元通信機能とアイテムボックスを備えたリングを渡した。
「アザートス討伐に、お前たちの力を貸してほしい。そしてこれだ」
フィーリアの通信装置を城の要所に設置する。これで精霊の国との連携も完璧だ。
次に一行は、シオンの国へと向かったが、シオンは修行の成果を試す旅に出たばかりだという。
「あいつのことだ、どうせフゥの村の食堂で飯でも食ってるだろ」
しかし、食堂に行っても「来ていない」と言われ、創夜は天を仰いだ。
「……あいつは本当にかくさんか! 全然つかまらねえ!」
「カク? 誰のことアルか?」
リンたちが首を傾げる。
一行は続いてスーの魔法大国へ向かった。そこではスーが魔法を駆使して華麗に除雪作業を行っており、雪景色を魔法の光が彩る幻想的な光景が広がっていた。
「スー、久しぶり!」
「創夜! 皆も、その……素敵な衣装ね!」
スーとの再会に、セリアの目が輝いた。
「スー、私に最新の魔法を教えてくれないかしら? ここに数日残りたいわ」
「私も興味あるわ」「私もアル!」「私は料理が気になるわ」
セリア、ミーナ、リン、フィーリアの4人がスーのもとに残ることになった。
創夜とミリィは、再びシオンを探してアレルの城へ行き、シオンがいそうな場所を聞くと付いてきてくれることになり、洗礼の滝へ向かった。
「さっきまでここにいたそうですよ」
滝の管理人の言葉に、創夜は膝をついた。
「やっぱりかくさんだな……。あ、そうだ!」
創夜はハッとして、まだ渡していないはずのシオンへの『リング』の設定をいじり、強制的にメッセージを飛ばした。
『シオン、創夜だ、今どこにいる?』
『お、創夜か久しぶりだな、暫く来ないと思ってたぜ、今、フゥの村で休憩中だ』
数分後、ようやくフゥの村でシオンを捕まえることができた。
「……いきなり頭の中に声が響いて驚いたがあれは、なんだ?」
「連絡用のリングだ。受け取れ、この神出鬼没男!」
リングを受け取ったシオンは真っ先にミリィを見た。
「お!師匠が鍛えた最速の剣士じゃねぇか!ミリィ俺とちょっと速さ比べしないか?あっちに巨大な木が見えるだろあそこをゴールにしよう」
「いいわよ!創夜、合図して!」ミリィはいつものビキニアーマーへと防具を変身した。
創夜が合図をすると、二人は一瞬で消えてしまったが、次の瞬間、ミリィがふうっと息を吐き急に現れた、創夜のフルオーラなしの速度でシオンに数秒勝ったのだった。
「修行したがまだまだ追い付けねぇか」
ミリィが自慢げに胸を張っている。
その夜、スーの村に全員が集まり、盛大なクリスマス・パーティが開催された。
七面鳥の丸焼きや豪華なケーキが並び、次元を超えた仲間たちが笑い合う。
「みんな、聞いてくれ」
宴の最中、創夜が真剣な表情で立ち上がった。
「アザートスを倒すには、ただの力だけじゃ足りない。みんなの『プラスの楽しいイメージ』が必要なんだ。このリングを通じて、戦いの最中にその想いを送ってほしい」
アレル、シオン、スー、そしてリリィ。
「当たり前だろ! 俺たちの絆、見せてやるぜ!」
「楽しい思い出なら、今日だけで一生分作ったわ」
勇者たちの力強い言葉を受け、創夜は満足げに頷いた。
翌朝。雪の残る道を歩きながら、創夜たちは飛空艇へと乗り込む。
「最高のクリスマスだったな」
「連携のポイントを掴んだわ!」
アストラル・ブレイカーは、和の国の『正月』と精霊の国の『クリスマス』という、二つの大きなプラスのエネルギーを積み込み、魔王アザートスの待つ最終決戦の地へと舵を切った。




