ep3.玉座なき魔王編 白い創夜
アザートスについての解説を聞いた後
意識の闇の中に、まばゆい光が差し込んだ。創夜が目を開けると、そこは星空が輝く精神の世界だった。
その空間の中央に、一人の人影が立っていた。創夜と同じ黒の長髪を持ちながら、その身に纏っているのは、鏡に映った時と同じ、眩しいほどの純白の服。顔には、創夜にはない圧倒的な怒りと威圧感を帯びていた。そして、手には創夜の神鳴剣と瓜二つの、黒い二本のクリスタルの剣が握られている。
「おいでなすったな。創夜」
その声は、創夜自身の声。低いが、どこか傲慢な響きを持っていた。
自分に相反する姿と色の敵だ。
「おまえは……俺の鏡像か?」創夜は柄に手をかけながら、冷静さを保とうとする。
白い創夜はニヤリと笑った。
「鏡像ではない。俺は、おまえの中の、おまえが認めたくない可能性だ。どうだ?イラついて戦いやすいだろ」
白い創夜の周囲から、漆黒のドス黒いオーラが立ち上る。
「十分に修行しろ。アザートスには攻撃は効かない。絆の力だけが効果を発揮する」
その言葉と共に、白い創夜の姿がゆらめき始めた。
「誰と戦う?おまえ以外の姿にもなれるぞ。リンか? セリアか? ミリィか? それともミーナか? フィーリアがいいか?」
次々とソイツは仲間の相反する姿へと変身する、眩しい紅の武道着を纏ったリンの姿に。その次に、セクシーな赤いビキニアーマーのミリィに。そして、控えめな白いローブのセリア、小悪魔的な笑みのミーナ、変わらぬ姿で創夜を見つめるフィーリアへと、姿をころころと変えた。
創夜は剣の柄から手を離し、ゆっくりと深く息を吐いた。
「中々おもしろい場所だな、修行にはもってこいかもな、一つ聞いてもいいか?」
白い創夜は、元の純白の姿に戻り、答えた。
「なんだ」
「ここへはいつでもこれるのか? 今回だけってことはないだろうなぁ」と創夜が問いかけた。
白い創夜は優雅に微笑んだ。
「ああ。ここはおまえの精神世界。傷つくこともなければ、時が経つこともない。おまえが己と向き合う意思を持てば、いつでも門は開かれる」
それを聞き、創夜は口元にわずかな笑みを浮かべた。
「そうかわかった。とりあえず俺でいい」といい、創夜は神鳴剣の柄を強く握りしめた。
白い創夜も、黒い剣を正眼に構える。
「来い」
二人の間で空気が爆ぜた。創夜は、極限まで研ぎ澄まされた抜刀術の神速の一閃を放つ。対する白い創夜も、全く同じ軌道、同じ速度で黒い光を纏った抜刀術を放った。
キンッ!
二本のクリスタルの剣が激しくぶつかり合い、青い光と黒い光が混ざり合い、爆発的な輝きを放った。
勿論、威力は同じ相討ちとなった。
二人は距離を取り、互いの剣の切っ先を下げた。
「なるほど。コピーじゃないのはわかった。猿真似の口だけ野郎じゃないってことは本当みたいだな」創夜は納得したように呟く。
白い創夜は、初めて創夜と同じ、ひょうひょうとした笑みを浮かべた。
「中々おもしろいな。俺の中で答えは出た。今回はもう十分だ」といい、創夜は突然夜の剣を鞘に納める。
「なんだ、おもしろくないやつだな、やろうぜ」
「それは、おまえがよく知ってるだろ」白い創夜にそう問いかけると、白い創夜の姿は、光の粒子となって崩壊し始めた。そして、創夜の意識は現実へと引き戻され、精神世界から鏡の洞窟の間へ戻った。
目の前には相変わらず相反する仲間の姿が鏡に映し出されていた。




