ep9.星間を繋ぐ門編 6人だからできること
巨大なヨグ=ソトースは、そのクリスタルから放たれる『秩序』の光を嘲笑うかのように、周囲のいくつものゲートから、人形サイズのヨグ=ソトースを次々と出現させた。その数は瞬く間に数十、数百に膨れ上がる。
ミリィが戦慄する。「ちょっと、数が多すぎるって!」
創夜は、その圧倒的な数の暴力に対し、構えを解き、冷たく言い放った。
「はっ。雑魚が何匹増えようと、雑魚でしかないんだよ」
ヨグ=ソトースの宣言と共に、周囲の無数の門から銀河の光が収束され、巨大なエネルギー球へと姿を変えつつあった。そして、人形ヨグの群れも、一斉に創夜たちへ向けて殺到した。
創夜達は、その絶望的な状況を見た瞬間セリア以外構えを解いた。
「……いくわよ!」
セリアの魔法を待つ間に、創夜は空に向けて力を解放する。創夜の7属性の魔法剣が空に星の数ほど生成され、周囲の雑魚への牽制と、巨大ヨグへの威嚇として、空間を埋め尽くした。
「星の数って数えたことがあるか? これは俺の固有技だ! 身をもって数えてみろよ!」
巨大なヨグ=ソトースは、そのクリスタル状の魔法を、創夜の魔法剣の数に匹敵するほどの量、猛烈な速さで放ってきた。
セリアが腕を振り下ろし、土魔法の広範囲魔法とマグマの炎魔法が人形ヨグを巻き込む。しかし、轟音と共に魔法がヨグ=ソトースに触れた瞬間、完全に無効化されて消えた。
続いて創夜の無数の魔法剣が人形のヨグ=ソートスを攻撃する。しかし、これも全く効果がない。魔法剣がヨグに触れると、ガラスのように崩壊して消えていく。
その傲慢とも取れる態度に、巨大なヨグ=ソトースは咆哮した。
「我は門、外への門! 封印されたとて、この地に集まり、貴様らを葬り、世界を無にしてくれる。 我は我なり!」
「魔法耐性という訳ではなさそうだな。無敵ってやつなのか? あれ全部があの巨大なヨグ=ソートスだというのか!?」
絶望的な状況。そのとき、セリアの手に握られた賢者の杖が、突如として英語で話し始めた。
「I am the memory echo dwelling within the Sage’s Staff.
Long ago, a woman who looked much like you—dressed in the ceremonial garments of old Japan—sealed Yogg using an ancient ritual.
(私は賢者の杖に宿る記憶の残響。
かつて、お前によく似た女が――古き日本の儀式装束を纏い――古の術でヨグを封印した)
She said then: ‘With five stars, sealing is the limit.’
(そのときは言った――『五つ星では封印が限界だ』と)
You should know this.
Think.
Remember.
(お前なら分かるはずだ。
考えろ。
思い出せ)」
セリアがばれた!と言う顔で口に手を当てている。
「英語か、なんか懐かしいな……。日本人でいにしえの儀式5人でしかできない…うーん。陰陽師か?星の形で封印術、確かに点は5つだ。俺たちは6人てのがキーだとすると…六人だと点が6個だから、魔法陣の六芒星になるのか、だとしても…」
創夜は頭に手を当てて記憶を絞り出す。
「五芒星が確か本来の意味は『守り』だから『封印』なら、六芒星は三角が二つで『男と女』を意味する、あと、『宇宙』『創造と破壊を内包する完全な力』。…そうだ、これで奴を倒せる。奴を世界から『結合』させ、『秩序』をもって排除することができる。封印じゃなく、完全に終わらせることができるんだ。そうか、わかったぞ!」
「And hear this well:
Against that creature, nothing works—except a weapon forged by the gods.
(そしてよく聞け。
あの存在に通じるのは――『神々が鍛えた武器』のみだ)」
「そういうことか、さっきのはスキルとか魔法だったからダメと言うことか」
創夜は全員に指示を出した。
「皆それぞれ、俺の魔法剣の位置に走ってくれ、一番遠くはミリィ頼むお前が一番速い、そのつぎはリン、と俺か……手前のポイントにはミーナとフィーリアが向かってくれ、セリアはここから援護を頼む」
そういうと、創夜は魔法剣をヨグ=ソトースを囲む六芒星の魔法陣の位置にポイントする。
「わかったアル!」
「わかった」
「わかったわ」
「承知しましたご主人様」
創夜の仲間へのチートスキルが発動する。
――ミッドナイト・ステラ・クライシス・オーバードライブ!
創夜達のクリスタルの形と化した武器が青い光を放ちながらはっきりと浮かび上がった。
「俺の最強チートスキルだ!攻撃する度に威力と速度が上がり、敵のライフに依存して体力が回復する。こういうときにもってこいのわざだ!」
まずはミリィが瞬速で走り出す。その走ったあとに白い龍がうごめいているかのような軌道がうがびあがった。直進する先のヨグ=ソートスに会心の一撃を瞬速の剣で一撃づつすごいスピードで攻撃し直線的に大きなヨグ=ソートスのクリスタルの魔法攻撃を無我の境地で回避し瞬殺していく。
次に、リンと創夜が走り出した。
リンのガントレッドのクリスタルの模様が足にも見える。
ヨグ=ソートスを倒した時の攻撃の跡だろうか、リンが走った軌道を青きクリスタルの龍が浮かび上がる。
反対側に創夜が走る。創夜の剣が巨大化し二刀流で目の前の敵を一振一振で相殺していく。
その時だった、一斉にリンを人形の大量のヨグが囲み攻撃を仕掛ける。逃げ場はない。
リンが回転し、回りを囲むヨグに対して攻撃を仕掛ける。
――ドラゴニック・スパイラル!
リンを囲んでいたヨグが一掃される。何発もの打撃が回転としてヨグを巻き込んだ。
次に、フィーリアとミーナが続く。
フィーリアは目の前の敵を走りながら大きなヨグ=ソートスのクリスタル魔法を避けながらクリスタル化した魔人の腕で連撃で一掃しつつジャンプしレールガンでさらにヨグの集団を一掃しながら手前のポイントへ急ぐ。
ミーナが、クリスタル化した悪魔の書をつかい、クリスタルの悪魔達と武器を惜しみ無く生成する。
召喚された72体のクリスタル状の悪魔達がミーナに迫る敵を一掃していく。ミーナは走りながらクリスタル魔法攻撃をするすると避けながら短パン姿で走り抜ける。
「出し惜しみはなしよ!」
セリアは賢者の杖から魔法を生成し、大地の魔法とマグマの炎の魔法をつかい、現れた大群のヨグ=ソートスを一掃する。走り出した仲間たちを巨大なヨグ=ソトースのクリスタルのような魔法が襲いかかるが、仲間達はすれすれで避けながら、ポイントまで一直線に特攻する。
全員がポイントへ到達していき、全員が到達するまで、ポイントのキープへと移行する。
創夜の周りに漆黒の龍、
リンの周りには青き龍、
ミリィの周りには白き龍、
セリアの周りには紫の龍、
ミーナの周りには銀色の龍
フィーリアの周りには機械的な龍が浮かび上がっていた。
巨大なヨグ=ソートスを創夜の魔法剣のポイントの位置へ全員の移動が完了したとき、大地に魔方陣が浮かび上がった。六芒星を二重の円が外側を囲む。
創夜は、その光景を静かに見つめ、確信を持って言い放った。
「今だ! 天に武器を掲げろ!」
六芒星の頂点に立った6人は、それぞれが手に持つクリスタルと化した神々の武器を天に掲げる。
創夜の剣、ミリィの瞬速剣、リンのガントレット、フィーリアの魔人の腕、ミーナの悪魔の書、そして後方で魔方陣の中心を担うセリアの賢者の杖が、強烈な青白い光を放ち始める。その光は、六芒星のラインを通って繋がり、巨大なヨグ=ソトースを取り囲んだ。
「ぐ、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
ヨグ=ソトースの咆哮が、次元を超えて響き渡る。体中のゲートが軋み、周囲の人形ヨグたちが光に触れた瞬間、悲鳴も上げずに砂となって崩れ去っていく。
創夜は、この六芒星の術式こそが、『創造と破壊を内包する完全な力』、つまり『秩序』と『結合』を操るヨグ=ソトースを、この世界から『結合』させ、その存在自体を『排除』する唯一の手段だと理解していた。
「我に...我にこの『秩序』の光が効くというのか! そんなバカな、我こそが門……! 宇宙を繋ぐ秩序そのものだというのに!」
巨大なヨグ=ソトースのクリスタルから、再び銀河の光が収束され、巨大なエネルギー球が生成される。創夜たちの魔法陣ごと破壊しようという、最後の悪あがきだった。
「させるか!」
創夜は、己の身を顧みず、光の収束点に向かって飛び出した。
「皆、力を貸してくれ!俺たちの絆の力だ!」
「承知したアル!」
「了解!」
「やってやるわ!」
「ご主人様のためなら!」
六人は、魔方陣の結界と、創夜達の巨大な絆の剣がヨグに突き刺さりヨグの動きを封じる。
そして、創夜は巨大なヨグ=ソトースの目の前で、光を浴びながら、全ての力をその一撃に集中させた。
「この力は、仲間との絆だ! 俺達の六人だからこそ成し得た完全なる力だ!」
創夜の剣が、六芒星の光を纏い、六つの星の輝きを宿したクリスタルソードと化して、ヨグ=ソトースのクリスタル目掛けて振り下ろされる。
「これで、お前はもう二度と、この世界に帰って来れない」
創夜の決め台詞と共に、神々の武器の力が六芒星の術式と融合し、ヨグ=ソトースを包み込む。
「究極六芒星術式! 異界結合完全排除!!」
巨大なヨグ=ソトースは、最期の断末魔と共に、光の中にクリスタルが割れるように砕け散った。
周囲の無数のゲートは崩壊し、次元の裂け目が閉じていく。世界から、門の存在が完全に消滅した。




