ep14.和の国編 エピローグ
黄泉の国は、地獄の王ヘルロードが消滅したことで、一瞬にして澄んだ空気に満たされた。創夜たちは、剣聖・無刀が打ち鍛えた防具を受け取ると、すぐに元の世界へ帰る準備を始めた。
「じゃあ、奏雅とはここでお別れか」創夜は少し寂しそうに言った。
「はい。私は、この『和の国』で、水と炎の修行を続けるつもりです。ですが、またきっと、強くなって創夜さんに会いに来ます」奏雅はまっすぐ創夜を見つめ、別れを告げた。
「ああ、待ってるぞ。その時はまた一緒に戦おう」
奏雅と固い握手を交わし、創夜一行はカエデの家へと帰還した。
カエデの家に帰りついた一行は、疲れを癒すため、すぐに広々とした露天風呂へ直行した。
全員水着を着用し最後の温泉を楽しんでいた。
「はぁ〜、極楽、ごくらく!やっぱり、黄泉の国の瘴気じゃなくて、この清らかなお湯に浸かるのが最高だね!」ミリィが湯船で手足を伸ばす。
「ご主人様も、お疲れのようですね。私がお背中を流しましょうか?」ミーナが優雅に湯をかき寄せながら尋ねる。
「おいおい、そんなことしたら湯冷めしちまうぞ」創夜は苦笑いしながら、湯船に身を委ねた。
セリアとカエデもフィーリアも、旅の疲れと、強敵との戦いを乗り越えた達成感に満たされ、穏やかな時を過ごしていた。入浴中、旅の途中でフィーリアと創夜が温泉に一緒に入っていたことと、セリアの真似をして胸を揺らした話で盛り上がっていた。
温泉から上がり、さっぱりとした一行は、カエデ邸の美しい庭園に集まった。創夜たちが剣聖からもらった防具は、掌に収まるサイズの謎の金属の塊のままだった。
「よし、じゃあ、みんなで試してみるか。剣聖様は『心と魂を乗せて創造しろ』って言ってたよな」創夜が金属の塊を握りしめる。
創夜は目を閉じ、自分の望む「最強の防具」のイメージを心に描いた。それは、いかにも『防具』然とした鎧ではなく、敵の攻撃を流し、自身を闇に溶け込ませるような、漆黒のコートだった。
「……変化しろ!」
金属の塊から漆黒の光が溢れ出し、一瞬で創夜の身体を包み込んだ。
「おお……」
創夜が目を開けると、そこには一切の隙のない、スタイリッシュな漆黒のコート姿の創夜が立ってい
た。コートの縁には魔力を流すための極微の紋様が刻まれ、その内側は、あらゆる霊気を吸収する特殊素材で編み上げられている。
「どうだ、これなら防具には見えないだろ?」創夜は満足げに腕を広げた。
「あら、かっこいいじゃない、ご主人様!さすがのセンスね」ミーナが拍手する。
「なら、次は私のの番アル!」リンが飛び出した。
リンは動きやすさを極限まで高めた、白と金のカンフー着に身を包んでいた。いつもはズボンがあるのだが、ズボンをはいていない普通のチャイナ服だ。
「わたしのは、最強に戦いやすい服アル!」
(いや、かわってないような……)
「じゃあ、次は私のばん!」ミリィが元気よく宣言し、金属の塊を掲げる。
ミリィの全身を包んだのは、白を基調とした、体のラインがくっきりと浮かび上がる精霊のレオタードだった。
「見て!私の『精霊のレオタード』よ!」
合わせるように全員で精霊のレオタードを創夜に見せる
「ちょ、ミリィ!?ってみんな!」創夜が慌てる。
「これ、見た目は薄いけど、剣聖様の気のおかげで、並の鎧よりずっと硬いんだからね!」ミリィは楽しそうにポーズを取った。
そしてセリアが、優雅に金属の塊を掲げる。
「わたしは、セクシーなローブがいいわ!」
セリアはセクシーな黒いローブ姿に変身した。
光が収まると、ミーナはフリルやエプロンの付いた、完璧な仕立ての黒の魔法使い風メイド服に変身していた。しかし、そのスカートの下には、タイツがない。
「どうです?ご主人様。この姿で、お食事の準備も、お風呂の準備も、そして戦闘も完璧ですわ」ミーナは恭しくお辞儀をする。
「お、お前まで……。まあ、みんな個性じゅうしってことか」創夜は頭をかいた。
最後に、皆が金属の塊を握りしめ、何かを思いついたように悪戯な笑みを浮かべた。
「創夜これはどう!?」
女性陣の金属塊が光を放ち、彼女の身体を包み込む。皆が変形させた防具は、彼女が旅の途中でこっそり訪れた『スーの家』に置いてあった、ある種の戦闘服だった。
皆はくるりと創夜の前で一回転する。
「どう?創夜!これ、スーの家にあった、うさぎの耳としっぽがついた、えっちなバニーガール服よ!」
皆の全身は、黒いエナメル質のバニーガールコスチュームに包まれていた。胸元は大きく開き、レオタード状のボディスーツは脚の付け根まで食い込み、背中には可愛らしいうさぎの尻尾が揺れている。
「ほら、創夜、よーく見て!精霊の加護はついてるかしら?」ミリィが腰に手を回し、創夜にアピールする。リンもセリアとミーナも楽しそうに笑っている。
「う、うさぎの……バニーガール!?」
創夜の頭の中で、修行の日々、激戦の日々、そして仲間たちの笑顔の記憶が一瞬で弾け飛んだ。あまりにも刺激的な光景に、創夜の理性の糸がぷつりと切れる。
「み、みんな……!」
創夜は、その場で全身から力を抜き、鼻血を噴き出しながら、庭園の芝生に派手に大の字に倒れ込んだ。
「あ、創夜が倒れたアル!」「ご主人様!」「創夜!」
仲間たちの焦る声が響く中、皆は倒れた創夜を覗き込み、満足げに笑った。
「精霊の加護もついているのかな?、ふふん。どう?創夜。これが、私たちの極めた、一番の『絆の力』だよ!」
◇◇◇◇
――その頃、フィーリアは自分の服について試行錯誤していた。
「うーん、私の服ってどんなのがいいかしら……向こうに帰ったら町で良さそうなのを後で考えないといけないわね。考えたこともなかったわ」




