ep10.和の国編 カエデと10体の神獣の加護
カエデは箸を持ったまま、呆れたように、けれどどこか吹っ切れたように笑った。
その言葉を聞いて、創夜はふと思いついた。
「……待てよ。俺のスキルを使えば直接行かなくてもいいぞ、カエデ。直接、神獣たちと話をさせてやる。戦って力を示せなくとも、君の『火の意思』を認めてもらえれば、力を貸してくれるかもしれない」
「えっ!? そ、そんなことできんのかい!?」
「まあ、見ててくれ。……【広域念話・神域接続】!」
創夜が魔力を放つと、カエデの家の茶の間の空間が歪み、空中にいくつもの巨大なホログラムのようなウィンドウが出現した。
そこに映し出されたのは、解放されたばかりの10体の神獣たちだ。
『……む? 誰ぞ。我の昼寝を妨げる者は』
巨大な蛇――大蛇が不機嫌そうに鎌首をもたげる。
『あら、さっきの可愛いお嬢ちゃんの主さん?』
優雅に羽を休める朱雀が微笑む。
『おお! さっきの速き武人の連れか!』
白虎と青龍が同時に声を上げた。
突然の神々の大集合に、カエデは腰を抜かしそうになった。
「ひぇっ……! ほ、本物の神様たちが……目の前に……!?」
創夜はカエデの背中をポンと叩く。
「ほら、カエデ挨拶」
カエデはゴクリと唾を飲み込み、震える膝を叩いて立ち上がった。
「あ、あたしはカエデ! この国の……『火の意思を継ぐもの』だ! お前らが封印されてる間、この国を守れなくてすまなかった! だが、これからは違う! あたしが強くなって、必ずこの国を取り戻す!」
その言葉に、神獣たちが一斉にカエデを見つめる。
沈黙が流れた。
カエデの額に冷や汗が伝う。
最初に口を開いたのは、最も気位の高そうな九尾狐だった。
『ほう……。あの生意気な狐娘の知り合いかと思えば、随分と真っ直ぐな瞳をした小娘じゃな』
続いて、黒夜神鹿が穏やかに頷く。
『うむ。我を封印したものを瞬殺したあのミリィのような理不尽な強さはない。だが、その魂の燃え方は悪くない』
そして、八咫烏がカァと鳴いた。
『創夜が選んだ娘か。ならば間違いあるまい。我らが直接力を貸すことはできぬが、加護を与えることくらいは造作もない』
その言葉を皮切りに、画面の中の神々が次々と光を放ち始めた。
『よかろう! 我が風の加護をくれてやる! 速く動けよ!』(白虎)
『水の癒やしと、森の恵みを授けましょう』(青龍)
『私の炎は貴女の炎と相性が良さそうね。使いなさい』(朱雀)
『毒への耐性くらいは持っておけ。死なれたら寝覚めが悪い』(大蛇)
10体の神獣から放たれた光の粒子が、モニターを超えてカエデの体に吸い込まれていく。
カエデの体がカッと熱くなり、全身に力がみなぎるのを感じた。
「こ、これは……!? 体が軽い……それに、魔力が溢れてくる……!」
創夜がステータスを確認すると、カエデの能力が爆発的に跳ね上がっていた。
もはや。一角の英雄だ。
『礼には及ばぬ。我らを解放した礼じゃ』
『それに、我らを封印できる妖魔の王は手強いだろう、心してかかれ』
神獣たちはそう言い残すと、プツリと通信を切った。
静寂が戻った部屋で、カエデは自分の手を見つめて震えていた。
「す、すげぇ……。あたし、今なら山でも砕けそうだ……」
「良かったわね、カエデさん。これで戦う準備は万端よ」
セリアが優しく微笑む。
「ん。カエデ、強くなった。でも、慢心はダメよ」
ミリィが釘を刺す。
創夜は満足げに頷いた。
「よし。これだけの加護があれば、玄武の試練も乗り越えられるはずだ。俺たちは手出ししない。次はカエデ、君が主役だ」
「おうよ! 任せときな! この力で、玄武の国の爺さんもビックリさせてやるぜ!」
カエデは自信満々に拳を突き上げた。
一行は朝食を片付けると、次なる目的地、「水の意思を継ぐもの」が待つ玄武の国へと創夜の瞬間移動で出発した。




