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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: 真柴 零
精霊の国編

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ep3.精霊の国編 大剣の勇者

ガガガガッ!ドォン!



中庭の片隅に積み上がっていた巨大な瓦礫の山が、内側から激しく揺れ、崩れ落ちた。


そして、その瓦礫の中から、一人の男が**「よいしょ!」**という気の抜けた掛け声と共に、両手で岩を押しのけながら現れた。


その男は、全身に青色の鎧を(まと)い、輝く剣を携えていた。その姿は、まさしくこの世界で(あが)められる**「勇者」**そのものだった。


しかし、勇者の表情は、創夜を見るやいなや、激しい怒りに染まった。


「お前ッ、さっきのやつか!どうしてここに、 さっきはよくもやってくれたな!」


勇者はそう叫ぶと、疲労の色を微塵も感じさせず、手にした剣を創夜目掛けてまっすぐに突き出した。


「今度は負けないぞォォォ!」


勇者の剣技は苛烈だった。まず、体内の力を一点に集中させ、剣に雷の輝きを宿らせる。


「ギガブレード!」


広範囲を薙ぎ払うように放たれた光の斬撃が、創夜に迫る。


創夜は反射的に腰の夜の剣を抜き放った。相変わらず刀身は鈍色のままだが、彼は一切動じることなく、その光の斬撃の中心を、横一閃で叩き割る。

キンッ!


火花が散り、ギガブレードの衝撃波は、まるで無かったかのように消滅した。


「なっ……!?」勇者の目が驚愕に見開かれる。

間髪入れず、勇者は渾身の連撃を放つ。


「これならどうだ!、俺の剣は二度破壊の風を起こす!はやぶさ切り!」


二度の高速な斬撃が、創夜の顔面と胴を狙うが、創夜は最小限の動きだけで、二撃とも、音もなく剣で受け流す。


「お前が勇者か?」

創夜が問いかける。彼の動きには、一切の無駄がなく、その落ち着きは、猛攻を仕掛ける勇者とは対照的だった。


「だまれ! 今度こそ、ここで貴様を討つ!」

勇者がさらに剣を振り上げようとした、その時、創夜の肩にとまっていたリリィが、両手を広げて間に飛び出した。


「待って! ストップよ、アレル!」

アレルと呼ばれた勇者は、剣を止めた。リリィの姿を認めると、彼は驚きで目を見開く。


「リリィ!? 、待て、なぜお前がその男の肩にいる!」

リリィはアレルに向かって大声で訴える。


「この人が、私を助けてくれたのよ!彼はあなたを殺した人じゃないわ!」


アレルは剣を構えたまま、創夜をじっと観察した。

「……しかし、よく見たら、お前は黒いな」


アレルは、創夜の剣と、創夜の纏う雰囲気を指し示す。


「俺を襲ったやつは、全身が白く輝いていた。だが、そいつの顔立ち、身長、剣を扱うその様……お前に本当によく似ていたんだ」


アレルの言葉に、創夜は何かを理解したように静かに剣を鞘に収めた。彼は、自分にそっくりの「白い存在」が勇者を襲ったという事実に、新たな謎を感じた。


「アレル。私は彼に命を救われた。話を聞くべきよ」リリィが説得する。


アレルはしぶしぶ剣を下ろした。

「……わかった。リリィが言うなら聞こう」


創夜はアレルに、自身が異世界から転移してきたこと、仲間がバラバラになったこと、そして魔法が使えない理由をリリィから聞いたことを説明した。


アレルは腕を組み、納得したように頷いた。

「精霊が闇に堕ちた話は、俺も気づいていた。だから、俺の魔法もまともに使えない。だが、俺は精霊の特別な加護のおかげで、一つだけ特殊な力を持っている」


アレルは胸を張った。

「俺は、敵に討たれて死んでも、蘇ることができる。そして、蘇る場所は、この自分の城と決まっているんだ」


創夜は驚きを隠せない。死んでも蘇る、精霊の加護かなるほど。


「さっきも、お前のそっくりさんに殺されて、ここで目を覚ましたところだった」アレルは瓦礫を指さした。


創夜は、仲間を探すためにはアレルについていった方がいいことを理解した。


「アレル、リリィ。俺はバラバラになった仲間を探したい。お前たちの力が必要だ」


リリィは創夜の肩で笑顔を見せた。

「もちろんよ! 私もこの城にいるのはもう嫌!」

アレルは少し考えた後、力強く頷いた。


「俺も仲間がいないと寂しいのは嫌いじゃない。それに、白いお前によく似たやつの正体も知りたい。わかった、力を貸そう」


「ありがとう」

創夜は二人に深く感謝した。


こうして、かつて世界を救った勇者パーティの妖精リリィ、蘇りの能力を持つ勇者アレル、そして元・異世界最強の無職である創夜の、三人の仲間を探す旅が、ボロボロの城から始まるのだった。


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