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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: 真柴 零
無職転生

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ep5.ミリィが狙われた理由

 昼下がりのギルドは、珍しくざわついていた。


 依頼掲示板の前に立つのは、年の頃十七、八の少女。

 日焼けした脚をのぞかせる短パンに、古びた旅装束。

 背には、傷だらけのバックパック。


 少女――ティナは、震える手で依頼票を差し出した。


「……お願いです。村の人が次々と消えていくんです。あの森の奥に、兵士たちが――」


「悪いがな、嬢ちゃん。」


 ギルドの受付が言葉を遮った。


「その件は“王国直属”の案件だ。民間の冒険者が首を突っ込めるものじゃねえ。」


 肩を落とすティナ。

 彼女の目の端には、悔しさと恐怖が滲んでいた。


 そのとき、奥の席から立ち上がる青年がいた。

 ――創夜ソウヤだ。


「その依頼、俺達が受ける。」


 受付が創夜に声をかける。


「おい創夜、やめとけ。お前も巻き込まれるぞ。王の直属兵が絡んでいるんだ。」


「上が誰だろうと関係ない。ミリィが狙われた理由が分かるかもしれないという側面もあるが――困ってるやつがいるなら、それだけで十分だ。」


 隣にいたリンとミリィが顔を見合わせた。


「……また無茶する。」

「でも、放っておけないネ。」


 三人は森を進む。その奥に、何か“人の声”が混ざっていた。


 三人はティナを連れて、村の外れの森へ向かった。


 霧が立ちこめ、足元の土はぬかるんでいる。

 やがて、古い廃礼拝堂が見えた。


 そこから、人の声が聞こえる。


 創夜が手で制し、音を殺して壁の影から覗いた。


 中には、王国兵の紋章をつけた男たち。

 そして、その中央に立つのは――黒い外套の将校だった。


「……例の娘を探せ、見た者は全て消せ。王の命令だ。あの娘は未来が見える未来視を持っている。ミリィも含め抹殺しろ!」


 その言葉に、ミリィの顔が青ざめる。

「私の特殊能力をどうやって知ったの!?……」

「あの夜のこと――やっぱり、そうだったのか。ミリィの特殊な能力を恐れて殺そうとしていたのか。」


 だが、聞き耳を立てていた創夜の靴先が石を蹴った。

 音が響く。兵士たちの視線が一斉に向いた。


「……誰だ!」


 次の瞬間、礼拝堂の扉が吹き飛んだ。


 創夜が踏み込み、抜刀術で兵士を瞬殺していく。


「お前らの話、全部聞かせてもらった。」


 隊長格の用心棒――ガルドが前に出る。

 全身を鎧で固め、巨大な戦斧を肩に担いでいた。


「ふん、命知らずが。王に刃向かう者は皆、地に()うんだよ!」


 斧がうなりを上げ、石床が砕ける。

 創夜は一歩踏み込み、刃で受け流した。火花が弾ける。


 ガルドの腕力は怪物じみていた。


「……こんな奴がいるのか。」


 だが創夜は一歩も引かない。


 創夜はリンとミリィにティナを抱えて外へ出すように指示をした。

 ミリィは震える声で言った。


「……私も殺されるの!?」


「大丈夫だ、もう誰もお前を狙わせねぇ。俺が全部終わらせる。」

礼拝堂の入り口の外から巨大なアルティメットブレードで、礼拝堂の外にいた兵士ごと、ガルドを含め礼拝堂を真っ二つに切り裂いく。礼拝堂は燃え上がり、倒れた兵士の中に、王家の紋章が刻まれた印章が落ちていた。


 それは、陰謀が“王の意思”そのものだった証拠だった。


 ティナが涙をこぼす。


「どうして王様が……そんなことを……」


 創夜は剣を(さや)に収め、静かに答えた。


「あの王様どう見ても悪い奴だと思ってはいたが、まさか本当に悪い奴だったなんて。同級生達(あいつら)どうしているだろうな……」


 夜風が吹き、燃え残る火が揺れた。


 ミリィはその背中を見つめながら、小さく呟いた。


「創夜……ありがとう。」


  創夜はミリィとリンに転生者であり、この国に姿かたちは以前の世界のままではあるが転生時に王に合ったことを伝えた。


「ミリィ、未来視って何が見えるんだ!?」


 ミリィはしばらく言葉を探すように黙り込み、やがて視線を落とした。

 燃え残る礼拝堂の火が、彼女の横顔を赤く照らす。


「……“未来視”なんて、そんな立派なものじゃないの」

「え?」と創夜そうやが眉をひそめる。


「たまにね、胸の奥がざわってするの。

 空気が変わるっていうか……“危ない”って感じるだけ。

 映像が見えるわけでも、言葉が降ってくるわけでもないの。

 ただ……そう感じるの。」


 ミリィは両手を胸の前で(にぎ)りしめた。

 その指先はかすかに震えていた。


「それなのに、どうして……王様が私を狙うのか、まったくわからない。

 そんな力、脅威きょういになるようなものでもないのに……」


 夜風が、はいを巻き上げて流れていく。

 創夜はその肩に手を置き、ゆっくりと息を吐いた。


「……王が恐れる何かがあるんだろうな。ミリィがまだ気づいていない何かが……」

「え?」


 ミリィはうつむき、小さくうなずいた。


 リンが空を見上げ、ポツリと呟く。

 「悪いやつは私が倒すアル。」


 創夜は無言で剣のつかに手を添えた。

 夜空の下、ひとつの星が流れていく。


「――どんな理由で狙われようと、俺はもう逃げない。この手で、真実を《切》り開く。」


 燃え尽きた礼拝堂の跡に、静かな誓いだけが残った。

 そして彼らの旅は、王国の闇のさらに奥――

 真の敵へと続いていく。

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